米女子ツアーで2戦続けて予選を通過し復調の兆しを見せる渋野日向子。そのきっかけのひとつとして、パッティングのグリップを順手からクロスハンドにチェンジしたことが挙げられる。プロゴルファー・中村修がクロスハンドグリップのメリットを解説。

「右手の感覚」を活かすか、封じるか

昨年31試合に出場した渋野日向子選手は平均パット数(パーオン時)が1.7582で、鈴木愛選手に次いで2位。1ラウンド当たりのパット数でも29.1144で5位と、ショット力だけでなくパッティングでもいいパフォーマンスを発揮していました。

しかし、今季初戦の「アース・モンダミンカップ」とそれに続くスコットランドでの2連戦ではショットの不調に加えてパッティングも決めきれていませんでした。

そして全英女子オープン予選落ちのあとに渡米し、2週間後の「ANAインスピレーション」で見せたのは、ショットのときと同じ右手を下に握る順手ではなく、左手を下にして握る「クロスハンドグリップ」で握るスタイルでした。

それが功を奏し、そこからの2試合では予選を通過。クロスハンドへの変更が、復調のきっかけとなっています。今季パッティングが不調だった鈴木愛選手も、先週の「デサントレディース」ではクロスハンドグリップに変更していました。ではクロスハンドグリップのメリットはどんなところにあるのでしょうか?

その前に、まず順手のメリットはなにかと言えば、右手の感覚を使いやすい(右利きの場合)ことが挙げられます。感覚が合っているときはいいのですが、不調に陥ると感覚の鋭い右手が悪さをすることがあります。インパクトでパンチが入ったり、引っかけたり押し出したりすることは誰もが経験していると思います。

そこでクロスハンドグリップの出番となるわけです。そのメリットは順手とは逆で、右手の感覚が使いにくくなること。右手を使おうとすると左手が邪魔をして、上手くいかない。そのことによって手先ではなく腹筋や背中を使って打つようになり、ストロークや打点が安定することにつながります。

画像: パッティングのグリップをクロスハンドに変更した渋野日向子(写真:共同通信社/Getty Images)

パッティングのグリップをクロスハンドに変更した渋野日向子(写真:共同通信社/Getty Images)

なぜストロークが安定するのかといえば、右手の感性だけで打つと、左手首が甲側に折れやすく、フェースの向きやロフトが一定しません。しかしクロスハンドで握ると、右手で打つ感覚が弱まることで左肩や左の背中を動かしてクラブを引っ張るようにストロークすることになります。そのため、ヘッドの軌道が安定しやすくなるんです。

ヘッドをゴムで縛ってターゲットと反対方向から引っ張られている状態でダウンスウィングするとどこに負荷がかかっているか確認できます。順手だと右手首に感じると思いますが、クロスハンドグリップだと腹筋や背筋に負荷を感じるからです。それくらい、感覚も、力を入れる場所も変わるわけですね。距離感においても、パンチが入らないのがメリットです。

「右手の感覚を生かせない」はメリットにもなれば、デメリットにもなり得ます。しかし、長くゴルフをやっていて、どうも最近パットの調子が悪い、と感じるならば、一度クロスハンドを試すのは悪い方法ではありません。渋野選手のように、復調のきっかけがつかめるかもしれませんよ!

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