“ゴルフの科学者”ことブライソン・デシャンボーが採用している、前腕をパターのグリップに密着させる「アームロック式パッティング」。これのメリットは? アマチュアも簡単にマネできるものなの? パターに詳しいプロゴルファー・早川佳智に解説してもらった。

左腕とパターを一体化させることでパットに安定感が生まれる

肉体改造とそれに伴うスウィングやギアの変化によって圧倒的な飛距離を手にし、海外メジャー「全米オープン」を制覇したブライソン・デシャンボー。

シルエットの変貌具合からも飛距離にフォーカスが当てられることが多いが、他の選手より飛ばせてもしっかり寄せてカップインしなければ意味がないのがゴルフ。その点デシャンボーはグリーン上でも強かった。

長めのグリップを左前腕に沿わせるようにして固定するアームロック式のパッティングスタイルで、デシャンボーは同大会のパットの貢献度を示すスタッツ「ストロークゲインド:パッティング」においても1.123で全選手中18位と優秀な成績を収めていた。

画像: ブライソン・デシャンボーはアームロック式でパッティングする(写真は2019年のシュライナーズホスピタルオープン 撮影/姉崎正)

ブライソン・デシャンボーはアームロック式でパッティングする(写真は2019年のシュライナーズホスピタルオープン 撮影/姉崎正)

アームロック式でパットを打つ選手はPGAツアーにも一定数いるものの、母数から見れば当然少数派なわけだが、“ゴルフの科学者”が選んだこのスタイルにはどんなメリットがあるのだろうか。パターに詳しいプロゴルファー・早川佳智はこう言う。

「パターでもドライバーやアイアンなどと同様に、ストローク中フェースは開閉しているわけですが、アームロック式で構えるとクラブと左腕の一体感を出すことでストロークのブレが減り、それによってフェースの開閉度合いも抑えられます。結果的にインパクト時のフェースの安定感がバツグンに増しますね。これが最大のメリットと言えるでしょう」(早川、以下同)

また、左手とパターを一直線に固定することで、インパクトで右手が返ってフェースが被ってインパクトするなど右手首による悪い動きも抑えられるという。

「左手でストロークがブレない形を作り、右手のタッチで距離感を出していく。これができるのは大きなメリットですよ」

メリットは大きいが、流行らないのにも理由がある

ただ、メリットだらけのアームロック式がパッティングスタイルの主流にならないのにも理由はある。まず第一に、アームロック用のパターを調達しなければならない点だ。

「まず、単純にシャフトを長くして左腕と一体化できるようにすれば良い、というわけじゃないんです。実際に自分でアームロック用ではないパターにシャフトを付け足して、長尺にしてみたことがあるんですよ。するとたしかに雰囲気は出ますが、ロフトがものすごく立ってしまい、スライスラインが打てなくなってしまったんです」

左腕に沿うように構えるぶん、必然的に「こんなにハンドファーストに構えていいの!?」と多くの人が感じるくらいのアドレスになるそうで、通常のパターのヘッドを流用すると「インパクトロフトはマイナス4~5度くらいになってしまいます」という。通常のパターのロフトは4度前後だから、これだと転がりが悪くなってしまうのは想像に難くない。

そのためアームロック用のパターは通常のモデルよりもロフトが寝た仕様になっているのだが、「そもそもアームロック用のパター自体が少ない」と早川。

「加えて、どのくらい左腕とパターを一体化すると最適なストロークが得られるのかは、個々人によって変わってきます。つまりシャフトの長さは自分で試して見つけるしかないんです」

パター・シャフト選びの難しさもさることながら、ストロークも現在主流となっているスタイルとは感覚がかなり異なってくる。

「アームロックパターを初めて使ったときは、こんなに体幹を使わないといけないんだと感じましたね。手首の遊びが一切なくなるので、パターを動かすためには首の付け根を支点にして、両肩が天秤の皿のように動く振り子運動をするんです。そこを動かすための体幹の強さが要る。なので普通にパターを打つみたいにサッとテークバックできる感じではないんです」

手首のスナップが利かないから、パットの距離が長くなるほどより体を動かしていかないとボールが飛ばない。「なので最初は距離感も狂いましたね」と早川。

パターに悩んでいるゴルファーがアームロックに挑戦しようとしても、慣れたスタイルを変えること自体が難しい。結果、アームロック式のスタイルは普及していないわけだ。

結局アマチュアには使えるの?

と、ここまでアームロック式のメリットとデメリットをお伝えしてきたが、果たしてアームロック式はアマチュアがチャレンジしても良いスタイルなのだろうか。

「手首がグラグラ動いてしまう方はぜひトライしていただきたいと思いますね。手首を上手く使えずリズムの良いストロークができないのなら、アームロック式はフェース面の大きな開閉や無駄な動きを防ぐ手としてアリだと思います」

自分にアームロック式が合うかどうかの目安として、一度ゴルフショップなどでアームロック用のパターを構えてみてほしいと早川は言う。

「先ほどもお伝えしましたが、通常のパターよりもハンドファースト気味なアドレスになります。構えたときに強烈な違和感を感じたなら、アームロック式はやめたほうが良いでしょう。実際、プロ仲間のなかでも、違和感がありすぎてまず構えることができないという方も数人いました。もともと、ややハンドファーストに構えている方やテークバックするときにフォワードプレスを入れる方は比較的違和感は少ないのではないでしょうか」

ただ「もうパターが全然入らなくて、打ち方を頻繁に変えたり悩んだりしているくらいなら、アームロック式にトライする価値は十分ありますよ」と早川。

相性と道具選びの手間はあるものの、強烈なメリットも併せ持つアームロック式のスタイル。アマチュアが実践するためのハードルは高めだが、試す価値はアリ!?

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