渋野日向子の6戦にわたる長い海外転戦が、メジャー「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」で終わった。18ホール、1打1打悔いのないようにプレーしたという最終日のプレーをプロゴルファー・中村修がレポート。

海外遠征6試合は2連続予選落ちから4連続予選通過も、優勝争いには絡めず

「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」の最終日、現地テレビ放送の都合により1番スコアのいい最終組の後ろからプレーするという変則的なスタート時間になった渋野選手。結果的に最終組でプレーしたキム・セヨンの優勝シーンをセカンド地点から見届けるという珍しい経験をすることになりました。

画像: 「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」の最終日トータル11オーバー58位タイで終えた渋野日向子(共同通信社/Getty Images)

「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」の最終日トータル11オーバー58位タイで終えた渋野日向子(共同通信社/Getty Images)

この日は前半は3バーディ1ボギーの2アンダーと良い流れでハーフターンしますが、後半はスコアを落とし、トータルイーブンパーのラウンド。4日間トータル11オーバー58位タイで今季3戦目のメジャーの4日間を終えました。

初日2日目3日目最終日トータル
フェアウェイキープ率13/149/1411/149/1442/56
ドライバー平均飛距離289ヤード246ヤード264ヤード275ヤード268ヤード
パット数3333352832
パーオン率15/1810/1814/1811/1850/72
サンドセーブ率0/10/00/21/21/5
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スタッツと各日のスコアを照らし合わせて見ると、初日はショットが好調で4パットもありましたがイーブンパー、2日目はショットが悪くカットラインを気にしながらのプレーで5オーバー。3日目は出だしの10番で8を叩きその後はこらえるも6オーバー。最終日は特に前半はショット、パットともに復調しイーブンパーで終えました。

しかし、パット数やグリーンを外したホールのスコアを見るとメジャーセッティングのアンジュレーションの強い、硬く、速く、大きいグリーンに切られたピンに対し、グリーン周りの寄せで苦労したことが見えてきます。

3戦連続で予選落ちを喫した国内初戦の「アース・モンダミンカップ」やスコットランドの2試合と比べると米国入りしてからは試合を重ねるごとにショット、パットともに確実に復調して来たことは明らかです。

しかし、まだまだ好不調の波が大きいこと、一日の流れを切らさないラウンド中の修正が上手く機能しなかったことなどもあり、とくに今週のようなメジャーのセッティングでは少しのほころびもごまかすことはできずにスコアに表れたという印象です。

「メジャーチャンピオンていう言葉は捨てていいんじゃないかな」

終了後のインタビューで渋野選手は、「悔しい思いはたくさんしましたが今日は18ホール1打1打悔いのないようにやったのでこのコースをアンダーで回ることはできませんでしたが、終わり方としてはよかった」と話しました。

厳しいピンポジション、ロブショットなどアプローチのバリエーションの必要性、ラフやグリーンの芝の違い……日本では経験できなことを経験できた6試合の海外遠征。この期間を通じて、「恥ずかしいくらいのレベルの低さなのでメジャーチャンピオンという言葉を捨てていいと思う」と、肩書が重荷にもなっていたという素直な気持ちを吐露していました。

「今まで以上にこっちで(米国)戦いたいと思わせてくれたというか、レベルの高さも痛感した。なかなかない優勝シーンを後ろから見るというのも経験できたので、やっぱりああいう景色をすごく見たいなというのも後ろから思いました。もっと強くなってこの場で戦いたいなと思いました」

メジャー王者としての海外挑戦はひとまず終了。また、一人の女子プロゴルファーとしての戦いが、これからも続いていくことになります。

最終日を6アンダーでプレーし3位タイに食い込んだ畑岡奈紗

さて、今大会は4日間でイーブンパーのセッティングを目指したようですが優勝したキム・セヨンは14アンダー、2位のパク・インビは9アンダー、3位タイの畑岡奈紗は7アンダーというスコアになりました。男子の全米オープンでもそうでしたが、想定した優勝スコアよりも大幅に上回るスコアを叩き出す選手たちのレベルの高さを改めて感じます。

そんな中、3位タイで終えた畑岡奈紗選手は、最終日のスタートホールで2打目がカップインするイーグルを奪い、1イーグル4バーディの6アンダーでプレーし順位を上げてフィニッシュしました。途中にあったピンチもアイアンショットやショートゲームでカバーしノーボギーでのプレーぶりはキム・セヨンやパク・インビといった猛者たちにまったく引けを取るものではありませんでした。

流れを切らさない集中力やラウンド中の修正力、10番ホールで見せてくれたグリーンサイドからUTを使って傾斜を利用してピンに寄せる多彩なアプローチ、そして体力。米ツアーで積んできた経験の差が同級生の渋野選手、通算9オーバーで48位タイだった河本結選手の数歩先を歩いているように映りました。

メジャー優勝にあと一歩のところまで到達していることは誰の目でも明らかだと思いますし、今まで結果の出せていなかった欧州での試合でも予選を通過し、「ANAインスピレーション」で7位タイ、「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」で3位タイと12月開催の「全米女子オープン」での活躍がますます楽しみになってきました。

渋野、河本両選手は帰国し10月末開催の「三菱電機レディス2020」に出場する予定です。海外遠征の体験からどんな成長を見せてくれるのか非常に楽しみです。

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