パットの距離感を合わせるにはヘッド重量が大切だと説くギアライター・高梨祥明。最近のトレンドの重く慣性モーメントの大きなヘッドと軽く慣性モーメントの小さいヘッドの違いを考察した。

年々重ヘッドになるパター。では、2ボールパターは何グラムだったか!?

スタート前の練習グリーンでゴルファーの使用パターを観察していると、ここ最近はネオマレット系の高慣性モーメントヘッドのパターを使用しているゴルファーがグンと増えたような気がする。グリップもスーパーストロークのような太めの寸胴タイプを愛用する人が珍しくなくなった。

これはあくまでも印象でしかないが、大型ヘッド+太グリップのパターを使っている人は、パッティング練習の際、一球目でショートする傾向があるように感じた。最初は弱めのタッチで転がしておいて、二球目で距離感を合わせてくる。そんな感じがあった。

一方、PING“アンサー(ブロンズ)”などのオールドパターを使用している人は、意外に一球目から強気。最初にオーバーさせておいて、二球目で合わせてくる。そんな印象をもった。両者の違いは、マレットかブレードか、古いか新しいかということではなく、軽いか重たいかにあると思う。

ドライバーは他のクラブに比べてヘッドが大きく、そしてずば抜けて軽く変化してきたこの20年だが、パターはその逆でどんどんヘッド重量が増し、グリップも太く、長めに変化してきたのだ。いずれにしてもセッティングの上と下のクラブが形を変えないアイアンに比べ、どんどん特別な一本になっているのが現在のゴルフクラブ事情。

メーカーの公式サイトでパターの重さを調べてみたが、あまり「重さ(ヘッド・総重量)」について記載のあるブランドが少ないのが実情のようだ。大手ではPINGがしっかりと「ヘッド重量」を記載していたから、今回はこれをベースに話を進めていきたい。

PINGの最新パターである『シグマ2』シリーズを例にすると、ヘッド形状により350g、360g、365g、370g、400gのヘッド重量があり、モデルによって実に50gもヘッド重量の差があることがわかった。ちなみに最軽量の350gのモデルは渋野日向子が愛用する『アンサー』や『ZB2』など細身のブレードタイプ。ネオマレット形状となると365g以上となり、『VALOR』というスクエアフレームの大型マレットで400gに到達する。やはり、大型の高慣性モーメントヘッドほど、かなり“ヘッド重”に作られているようだ。重さそのものが大きな慣性を生むからだ。

では、最軽量の350gが“軽い”のか? 古いゴルファーならばこれを“重たい”と表現するかもしれない。なぜなら、ほんの20年前まで350gは33インチ以下の短い仕様用ヘッドであり、通常レングス用(34、35インチ)のヘッドはだいたい320〜340gだったからだ。

画像: 一世を風靡した初代ホワイトホット『2ボール』は、現在の主要マレットよりも30gも軽い

一世を風靡した初代ホワイトホット『2ボール』は、現在の主要マレットよりも30gも軽い

ちなみに、パターのネオマレットブーム定着に大きく貢献したオデッセイ『ホワイトホット2ボール』は、ヘッド重量約330g/総重量は509gだった(長さ34インチ/筆者コレクションを計測)。今のネオマレットにしてみれば、30g以上軽いヘッドだったわけである。

そのオデッセイ『ホワイトホット2ボール』が売れに売れた時代があり、それは現在の最新パターよりも少し軽めの仕様だった。最初の要点はここにある。

ネオマレット苦手な筆者だが、ヘッド重量を軽くしたら使えるようになった!

ネオマレットブームの火付け役である『2ボール』が意外に軽量ヘッドだったのには驚いたが、330gを軽量と書くこと自体が、重さの感覚が麻痺している、と言えるのかもしれない。なぜなら『2ボール』以前(80〜90年代始めまで)の人気パター、PING『アンサー(ブロンズ)』のヘッド重量は305gしかなかった(85068/筆者コレクションを計測)。それからすれば、『2ボール』の330gは十分に“重ヘッド”となるからである。

画像: グリーンが重たかった時代は、パターヘッドは軽かった。インパクトの強弱でタッチが出せたのが軽量パターのメリット

グリーンが重たかった時代は、パターヘッドは軽かった。インパクトの強弱でタッチが出せたのが軽量パターのメリット

現状、パターを選ぼうとすると、『2ボール』や『アンサー(ブロンズ)』など一世を風靡したベストセラーパターよりも確実に重たい仕様のパターになってしまう。パターの“重ヘッド”化は、年々高速化するプロツアーのグリーンスピードへの対応策だと言われているが、それがそのままアマチュアのゴルフにとっていいものか? という疑問は常に持っておくべきだろう。なぜなら、我々アマチュアがプレーするグリーンは、プロツアーの状態とは違うからである。これが第二の要点だ。

ヘッドの安定性能(高慣性)と実際にプレーする一般コースのグリーンスピードに合わせるならば、現在よりも少しだけ軽いヘッド重量の小さめマレット、つまり『2ボール』や同じオデッセイの『ホワイトホット#5』の重さ感がいいのではないだろうか。ベストセラーになったということは、これらが多くの人にとって使いやすい仕様(重さ)だった可能性は高いのだ。

筆者はこの観点から、ヘッド軽めでカスタムオーダーしたトゥーロンガレージパターを使い始めているが、ほんのわずかにヘッドを軽く(シャフトも軽量なものにした)だけで、ショートしがちで苦手感のあったマレットヘッドでも距離感が合うようになった。

画像: ソールプレートの素材によってヘッド重量をカスタムできる『トゥーロンガレージ』。筆者は最も軽いアルミのプレート(7g)を選択

ソールプレートの素材によってヘッド重量をカスタムできる『トゥーロンガレージ』。筆者は最も軽いアルミのプレート(7g)を選択

最新パターを買ったけれどもどうも自分の感覚で打つとショートが多いという人なら、それよりもヘッドがやや軽いちょっと昔のマレットパター(オデッセイから初代シリーズを復刻したOGモデルが出るのでそれにも期待)。自分の感覚で打つとかなりオーバー目に打ってしまう!という人ならば、それよりも少し重ためのパター(最新系)にしてみてはいかがだろうか?

パター選びをヘッド形状でする人は多いと思うが、次に気にするべきはタッチが合う“重さ”である。ヘッド重量・総重量・シャフト重量・シャフト長さ・グリップ重量、そのすべてで扱いやすさが変わってくる。パター選びの肝は意外に“重さ”だ。自分でタッチを合わせやすい“重さ”を見極めていただきたい。

写真/高梨祥明

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