稲森佑貴が2勝目を挙げ、幕を閉じた「日本オープン」では、アマチュアゴルファーたちの活躍に注目が集まった。果たしてアマチュアが飛躍した理由とは一体……?

稲森佑貴が制した「日本オープン」。その最終結果を確認すると杉原大河(東北福祉大3年)と河本力(日体大3年)が5位タイ。清水大成(日大4年)13位タイ、中島啓太(日体大2年)18位タイ、桂川有人(日大4年)21位タイ、米澤蓮(東北福祉大3年)27位タイと、アマチュア6選手がトップ30でフィニッシュしている。

果たしてなぜアマチュア旋風が吹いたのか、同大会で40位タイフィニッシュした片岡大育のバッグを担いだプロキャディ・伊能恵子は会場で感じた率直な意見を述べてくれた。

「プロ転向したばかりの金谷(拓実)君もそうでしたが、いつプロ転向しても(プロとして)通用するレベルの選手が山ほどいますね。なかでも5位タイでフィニッシュした(杉原)大河君は何度も同組になったことがありますが、プロと大差ないくらいレベルの高いゴルフをしている印象でしたね」(伊能)

画像: 5位タイでフィニッシュした杉原大河(左)と河本力(右)がローアマを獲得(写真提供/JGA)

5位タイでフィニッシュした杉原大河(左)と河本力(右)がローアマを獲得(写真提供/JGA)

昨年、PGAツアーではアマチュアからプロ転向したコリン・モリカワ(1997年生まれ)、マシュー・ウルフ(1999年生まれ)がいきなり初優勝を挙げ、モリカワは今年全米プロを獲り、ウルフは全米オープンで優勝争いを繰り広げた。洋の東西を問わず、大学生世代の活躍は顕著だ。

ギアの進化、そして弾道計測器や解析機の登場により、プロツアーレベルにまで技術を高めるためのスピードが、以前に比べて格段に速くなっているというのはよく言われること。以前のようにコツコツと腕前を磨き上げ、30代になったあたりでようやく通用するようになる……という時代からは隔世の感がある。また、早い段階から正しくトレーニングを重ねることで、飛距離はむしろプロと混じっても上位につけるアマチュアも少なくない。

そして、今回の日本オープンに限っていえば、特殊な事情もある。無観客だったことだ。ギャラリーがいれば、隣のホールの歓声が耳に入ることもあるし、それによって選手のテンションも変わる。それがないことが、プロにとっては「普段とは違う」という違和感になり、一方、普段から無観客の試合をプレーするアマチュアはいつも通りの環境でプレーできたことでやりやすかったのでは? という指摘もされている。

ただ、同大会を13位タイでフィニッシュした谷口徹は、「(ギャラリーが)いるのといないのとでは違いますよ」としつつ、ギャラリーがいたらアマチュアは活躍できなかったか? という問いに対しては、「それはわからないです。もっといいゴルフできたかもわからないし、比較はできません」とキッパリ答えている。

画像: 今大会13位タイの谷口徹も無観客と有観客では「違う」と語る(写真は2020年の日本オープン 撮影/姉崎正)

今大会13位タイの谷口徹も無観客と有観客では「違う」と語る(写真は2020年の日本オープン 撮影/姉崎正)

実際、同じように無観客で開催された全米オープンでは、13人のアマチュアが出場して予選を通過したのは一人だけだったし、それをいうなら平常時のプロのトーナメントはプロ有利の環境だからアマが活躍するのが難しいという話にもなる。この件に関しては有利に働いたかもしれないし、そうではなかったかもしれない、というのが妥当なところだろうか。そして、話を聞いた誰もが「アマチュアたちには、たしかな力がある」と口を揃えてもいる。

大学4年生の桂川は、来週は来季のツアー出場権をかけた「クオリファイングトーナメント」に出場。プロテストの受験も表明している。大学3年生の河本、杉原、米澤らも、近い未来のプロ転向が視界に入っているはずだ。

今の大学4年生は、渋野日向子、畑岡奈紗ら“黄金世代”と同学年。3年生は稲見萌寧の世代、2年生は古江彩佳、安田祐香らプラチナ世代と、すでにプロで活躍している女子たちと同学年だ。

日本オープンを沸かせた強いアマチュアが、同年代の女子プロたちのようにプロツアーを盛り上げ、支える屋台骨となる。そんな未来はすぐそこまで迫っているのかもしれない。

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