PGAツアーと欧州ツアーが戦略的提携関係を結ぶことが決まった。放送権やツアーの日程、賞金、
選手の出場機会確保などさまざまな面で協力していくというが、これはワールドツアー実現に向けた第一歩なのか?

20年ほど前、セベ・バレステロスがダンロップフェニックスに出場するため来日したときのこと。試合が終わりあたりが夕闇に包まれるなか、セベがクラブハウスのレストランでインタビューに応じてくれた。

当時はすでに全盛期は過ぎ勝てなくなって久しい時期。自身の不調について本人は「スウィングを人に教わろうとしたことが間違いだった」と自嘲気味に率直な思いを吐露してくれた。

そんな彼が明るい表情になったのはゴルフ界の未来について言及したとき。「もうすぐワールドツアーがはじまるよ。ヨーロッパもアメリカも日本も、ツアーの垣根を取っ払って選手たちが世界を舞台に戦う時代がやってくる。その兆しはあるし、数年後にはワールドツアーが実現しているはず」と嬉々とした表情を見せた。

画像: 欧州ツアー50勝を始めとし、全世界で活躍していたセベ・バレステロス

欧州ツアー50勝を始めとし、全世界で活躍していたセベ・バレステロス

しかしその時代は彼が9年前、54歳という早さで他界しても一向に訪れなかった。世界ゴルフ選手権(WGC)という形で世界のトッププロが一同に会す大会は年に4回行われるようになったが、ツアーが統一、あるいは提携する気配はなかった。

突破口となったのが皮肉にもコロナという緊急事態。欧米両ツアーとも中断を余儀なくされさまざまな打撃を被った。特に欧州ツアーは財政基盤を揺るがされる事態に陥った。それでも相互の利益のため提携することが発表された。これで欧米がスケジュール面で競合することなく選手たちが世界を
舞台に戦うチャンスが広がりそうだ。

「ゴルフ界にとって(提携は)歴史的瞬間。男子プロゴルフ界の利益のため一丸となって取り組む絶好の機会になる」と欧州ツアーの最高責任者キース・ペリー氏は自信をのぞかせる。

一方こんな見方も。22年以降の発足を目指しているプレミアリーグを牽制するべく欧米が結束したという説。トッププロがオイルマネーを原資とした超高額賞金を懸けて戦うプレミアリーグは他ツアーへ出場しないことが条件になるため、すでにローリー・マキロイやジョン・ラームらは「参加しない」と明言している。欧米ツアーがパートナーシップを結べばプレミアリーグ構想は一層の打撃を被ることになりそうだ。

20年前にセベが提言していたワールドツアーは彼が思い描いたような形で実現されるのか? 願わくば選手ファーストの提携であって欲しい。

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