「マスターズ」創始者のボビー・ジョーンズと、「全米オープン」創始者のチャールズ・マクドナルドは両者とも"負けず嫌い"という共通点がある。果たしてどんな人物たちなのだろうか、歴史を振り返ろう。

"球聖"も"設計の父"も短気で傲慢?

先頃、開催されたマスターズ、創設者は球聖と謳われたボビー・ジョーンズ。一 方、全米オープンの創始に深く関わり、全米ゴルフ協会の設立者で、米国ゴルフ黎明期を支えたチャールズ・マクドナルド。2大メジャーに関わる、この偉大なる2人のレジェンドに共通するのは、若い頃、「自分が一番じゃなきゃイヤ!」という、短気で傲慢、負けず嫌いの強烈な自我の持ち主だったことだ。

ボビー・ジョーンズは1930年に年間グランドスラムを達成すると、あっさりと競技ゴルフから引退。故郷に「私が少年だった頃に、少年だった男たちと飲みたい」との思いで、オーガスタナショナルGCを建設した。

1934年からマスターズが開催されるのだが、その名称は、最初はただの「招待競技」。ジョーンズ曰く、「マスターズという名前は自己顕示が過ぎる」という理由からだった。ジョーンズは後半生、謙虚な言動、含蓄ある箴言を著書として遺し、その生き方は高潔であり、球聖として崇められている。しかし、若い頃は短気で傲慢、負けず嫌いだったというエピソードが残されている。

画像: マスターズ、創設者は球聖と謳われたボビー・ジョーンズ

マスターズ、創設者は球聖と謳われたボビー・ジョーンズ

1916年、メリオンGCで行われた全米アマ。1回戦で上手くいかないことにキレて、クラブを投げまくり、前の組から「ゴルフでなく、やり投げだ」との苦情が出ている。14歳とはいえ、いや、だからこそ“かんしゃく持ち”の気質が、自ずから露呈したと見るべきだろう。

次の失態は1921年、19歳で初出場した全英オープンでのこと。舞台はセントアンドリュース、オールドコース。強風の第3ラウンド、最初の9ホールだけで10オーバーの大叩き。11番、6打目のパットを打たずに棄権し、スコアカードもビリビリに破り捨て、リンクスの強風がちりぢりに飛ばしてしまったというのだ。この一件では、さすがに主催者側から、「態度を改めない限り出場は認めませんよ」と忠告を受けたという。

このことはジョーンズ自身が、終生、痛恨の記憶としている。以後、相手ではなく、コースと闘うという「オールドマンパー(パーおじさん)」という仮想の競争相手を発見、想定することで、自己の心を抑制できるようになったというエピソードはよく知られている。

1925年、全米オープンでは、「ラフの中でアドレスしたとき、ボールが動いた」と自己申告し、その1打でプレーオフになって敗退している。このとき、ジョーンズは「スコアをごまかさなかった私をほめてくれるのは、銀行強盗をしなかった私をほめてくれるようなものだ」と。

それからジョーンズは「球聖」への道を歩きだすのだ……。

一方、全米オープン創始者はどうか。

チャールズ・マクドナルドは1894年、USGA設立に尽力。シカゴGCなどコース設計にも打ち込み、「米国ゴルフコース設計の父」とも称される。スコットランドからの移民である父親の勧めで、セントアンドリュース大学に留学。そこでゴルフを覚えるのだが、ジェントルマンとしての“修行”も彼の地で積んでいる。

「私はかつて一度もスコットランド人が、風などでティーから落ちたボールを、規則では許されているのに再びティーアップしたのを見たことがない」。マクドナルドは、そんなゴルフのフェア精神を米国に定着させようとしたかに見えるが、彼の歩んだ軌跡はさてどうだったか……。

画像: 全米オープン創始者のチャールズ・マクドナルド

全米オープン創始者のチャールズ・マクドナルド

マクドナルドは全米アマの第1回大会の優勝者であるが、それについては以下のような裏話がある。

実は1894年、ニューポートCCとセントアンドリュースGC(米・ヨンカース)の2クラブで、「全米選手権」が行われている。マクドナルドはその2回とも参戦し、準優勝している。しかし、彼はこの2回の全米選手権に“いちゃもん”をつけてつぶしているようにも見えてしまうのだ。1回目は「ストロークプレーであり(本場全英アマはマッチプレー)、コースに不公平な石の塀が立っている」という理由で。2回目はマッチプレーであったが、「コースの招待競技」であり、正式な競技とは認められない……というのがマクドナルドの言い分だった。

1895年、前述2コースにザCC、シカゴGC、シネコックヒルズGCの5コースが集まり、USGA設立を決め、その年に正式に全米アマをニューポートCCで開催。マクドナルドが執念で得た優勝だった。

マクドナルドは、「自分が一番でなければ気がすまない」性格だったといわれている。彼もまた負けず嫌いの塊だったといえる。「球聖」「アメリカゴルフの父」という肩書のイメージからは、かけ離れたエピソードではあるが、負けず嫌いこそアスリートとしてのモチベーションであることは間違いないようだ。

伝説に包まれたレジェンドの人間臭い一面を見た気がする……。

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