「全米女子オープン」の3日目、2位と3打差の首位でスタートした渋野日向子は1バーディ4ボギーの74とスコアを落とすも2位と1打差の単独首位で最終日を迎える。日本人として前人未到の海外メジャー2勝目なるか? プロゴルファー・中村修がレポート。

技術もメンタルも別次元へと成長した

今シーズンの渋野選手をつぶさに見てきましたが、「全米女子オープン」の最終日を首位でスタートする姿を想像できた人はいるでしょうか。

今季苦しんだすべての出来事を糧にし、技術もメンタルも大きく成長。大スランプに苦しんだ半年後に全米女子オープン制覇に王手をかける離れ業をこなせる渋野選手には驚きしかありません。

画像: 全米女子オープンの3日目を首位で終えた渋野日向子(USGA/Simon Bruty)

全米女子オープンの3日目を首位で終えた渋野日向子(USGA/Simon Bruty)

不調時「ドライバーは良くてもアイアンが悪い」、「練習場でできていても試合ではできていない」、「怖さがあるのか思い切って振り切れない」「昨年の自分に戻りたい」ラウンド後の会見でそう語っていた渋野日向子はもういません。

ショット、パットが噛み合い、ピンを狙うばかりではなく頭を使って難コースをマネジメントしながら攻略し、ミスをしても感情をコントロールすることで、崩れないゴルフをこの3日間で世界に見せつけました。

画像: 最終18番ホールの3打目をグリーン横のバンカーから寄せる渋野日向子(USGA/Robert Beck)

最終18番ホールの3打目をグリーン横のバンカーから寄せる渋野日向子(USGA/Robert Beck)

スタッツから3日目の内容を振り返るとフェアウェイキープ率は85.71%と高かったもののパーオン率は61.11%。数字自体は2日目と変わりませんが、バンカーやラフなどに外しており、2日目のようにカラーなどに「ちょっと外れた」ものとは違っています。

その理由は、ショットの調子が思わしくなかったこともありますが、前夜に降った雨のせいでフェアフェイが柔らかくなりランが出ない、ボールに泥がついたまま打ったせいで思わぬ変化が生じたことがあります。ランが出ないことで、距離のあるホールでは2打目に5番アイアンやUTを持つことがほとんどでした。しかしその中でもしっかりとグリーンをキャッチし、惜しいバーディパットや外したときにはチップインしそうなアプローチもありました。結果、スコアは3つ落としましたが首位をキープできています。

グリーンも雨の影響で転がりが一定していませんでした。このコンディションは他の選手にも影響し、アンダーパーでプレーした選手はわずかに2名。笹生優花選手は6オーバーと崩れ6位から25位タイに、畑岡奈紗も39位へと順位を落としました。

全米女子オープンのセッティングは難コンディションでもピン位置は容赦なく前後左右に振られていました。ピン位置の画像を見ると広く安全なエリアを狙えばロングパットが残り、ピンを狙ってグリーンを外すと難しい寄せが残ることが見て取れます。そんな中、3日目を1オーバーでプレー25位に位置する岡山絵里、高橋彩華の2選手は評価されるべきプレーだったと思います。

画像: 全米女子オープン3日目のピン位置(USGA提供)

全米女子オープン3日目のピン位置(USGA提供)

さて、渋野選手に話を戻すと、調子が悪かった頃の渋野選手と比べて大きく変わったと感じる点は、昨日まで好調だったショットやパットだけでなく、ボギーを打ってもずるずると崩れるような連続ボギーがなかったこと。しっかりと気持ちを切り替え、次のティショットでは思い切りよく振り抜けていました。メジャーの舞台でも感情をコントロールし悪い流れから引き戻す術を身につけたことの現れです。

画像: バーディパットを外し悔しがる姿も「USGA/Simon Bruty)

バーディパットを外し悔しがる姿も「USGA/Simon Bruty)

最終日を残して、前人未到の海外メジャー2勝目に挑む渋野選手ですが、果たして優勝を成し遂げるのでしょうか? 現地にいるコーチやキャディの声を聞いてみました。

「ミニョンさんは渋野さんが勝つと言ってます」と話してくれたのは33位タイに位置するイ・ミニョンのキャディを務める中川桂輔プロキャディ。日本ツアーでも共に戦うイ・ミニョンの予想は侮れないですね。

「前半に伸ばせれば、勝てると思います」と話すのは河本結のキャディを務める目澤秀憲コーチ。雨の影響でグリーンのスピードもまちまちでかなり難しいコンディションが予想される中で前半に伸ばせるかがカギになりそうです。

「勝つと思いますが分からなくなりましたね。本当に最後まで我慢できた人が勝つのだと思います。ティの位置などこのままのセッティングであれば、バーディは少ないと思いますので、良いミスのマネジメントをしてパーを拾うことができれば優勝の可能性が高まります。エイミー・オルソン、キム・ジヨンも怖い存在です」と話すのは稲見萌寧選手のキャディを務める奥嶋誠昭コーチ。

明日は悪天候が予想されスタート時間は現地時間7時45分に変更とアナウンスされています。渋野選手は9時35分の最終組でモリヤ・ジュタヌガンとエイミー・オルソンとの組合せになります。

私の予想はもちろん渋野選手の優勝ですが、そう簡単ではないことも理解しています。技術やメンタル、渋野選手の持つ底力を様々な場面で試され、その都度持てる力を最大限に発揮し乗り越える。それが勝利の条件となるはずです。

しかし今季味わってきたドン底を乗り越え、覚醒した今の渋野選手であれば、メジャーの最終日最終組でも彼女らしいプレーを見せてくれると思います。それでも勝てなかったとしたら、上回った相手を素直に称えるべきなんだと思います。

昨年は首位と1打差の3位から最終日をスタートした比嘉真美子選手が熱くしてくれましたが、2020年の全米女子オープンの最終日はどんな結末が待っているのでしょうか。皆さんもライブで応援しましょう!

This article is a sponsored article by
''.