12月16日にメディア向けに行われたスリクソン主催の「松山英樹×SRIXON LIVEセッション」。プロキャディ・杉澤伸章を聞き役に迎え、松山に2020年を振り返る様々な質問が投げかけられた。松山にとって2020年はどんな年だった?

自粛期間、松山はどう過ごしていた?

Q:今年一年を振り返って、長かった? 短かった?

松山英樹(以下松山):短かったような気がしますね。やっぱり3月から新型コロナウィルスの影響で試合がなくなったりして。試合が始まってからも、試合会場とホテル(の往復)、あとは家に帰るということしかできなかったので、あっという間に12月かなって感じがします。

Q:自粛期間はどんなことを?

松山:僕は幸いオリンピック強化指定選手に入っていたので、色んなところに練習する場所を確保できたので、そこで練習やトレーニングはできたかなと思います。

Q:こういうときだからこそ、新しい趣味や発見などはあった?

松山:それはなかったですね。やっぱり3か月試合がなくていつ始まるかもわからない状況で、再開後の一戦目から全力で行けるように練習していたので。なかなか(再開の)時期が決まらないことによって、逆算して「練習はこうしていこう」といった計画も立てられず、何から手を付けたら良いかが本当にわからないところがあったので、無駄な時間を過ごしてしまったのではないかと思っています。

Q:2019-20シーズンはZOZOチャンピオンシップで2位、ザ・CJカップで3位タイと、昨年秋から良い流れで来ていて、今年3月のザ・プレーヤーズ選手権では初日単独首位でスタート。だが試合は中止に。松山選手のなかではどう気持ちを切り替えた?

松山:初日は午前スタートで、アテストのときに「明日は無観客になる」と聞いていて。翌日は遅い時間のスタートであまり早く寝る必要がなかったのでゆっくりしていたら、23時過ぎ~0時前くらいに「明日やらない」と聞いて。止めるとこまでいくんだ、とは感じました。でもその時は何も思わなかったですね。こういう状況だから仕方ないことだし。その時点では4月のマスターズはやる、という話もあったので、そこへ向けて(気持ちを切り替える)というのはありましたね。

Q:その後PGAツアー自体は6月の「チャールズ・シュワブチャレンジ」から再開しましたが、松山選手が参戦したのは再開後2試合目の「RBCヘリテージ」から。再開後の試合選びの意図はある?

松山:まずもってチャールズ・シュワブチャレンジから再開することを知らなかったというのがあります。

Q:それくらいPGAツアー内でも情報が錯綜していた?

松山:そうですね。「え? これから本当にやるの?」という感じだったので。アメリカに飛んでから2週間の隔離期間があって、それがちょうどRBCヘリテージの前だったので、どっちにしろテキサスの試合(チャールズ・シュワブチャレンジ)は出られなかったですね。飛行機の移動の問題と、RBCヘリテージの会場が家からクルマで行ける距離だったので、感染リスクも少ないし出ようかなと。

Q:PCR検査など、コロナ以後は新しいルーティンも。大変だった?

松山:そうですね。毎週試合の前には受けなければいけないですし、そもそも受けなければ試合会場にも入れません。日曜日に移動して、月曜日の朝に(PCR検査を)受けるっていうの(ルーティン)はしんどかったですね。

Q:新しい環境というのもあってか、シーズン中盤は調子が落ち「なかなかうまくいかない」とコメントしていたが、ちょうど7月「ザ・メモリアルトーナメント」以降で調子が戻ったように見えた。そのきっかけは?

松山:ツアー再開後もゴルフはそんなに悪くないのになかなか上に行けない。なんでかなと思っていたらメモリアルでガクンと落ちちゃったので(編注:松山はザ・メモリアルトーナメントで予選落ち)。そのあとは一週間オフがあったので、そこで「どうせ悪いんだから」と切り替えて。そこからスウィングもちょっとずつ新しいものを入れながらやっていくなかで徐々に良くなってシーズンが終わった、という感じですね。

デシャンボーの飛距離アップに松山が思うこととは?

Q:PGAツアー最終戦「ツアー選手権」は今年で7年連続出場を果たし、2020-21年シーズンへ。初戦は9月。延期となった全米オープンに出場します。

松山:あんなにすごいグリーンなのかと行ってみて感じました。優勝予想スコアが8オーバーと言われるのも納得だよな、というのはありましたね。

Q:初日と二日目ではセッティングの難易度もガラッと変わっていたが、どう対応していた?

松山:慣れですかね。そういうこともあるだろうというのは、事前に考えて準備はしているので。

Q:全米を制したのはブライソン・デシャンボー。肉体改造による飛距離アップが話題となっているが、松山選手はどう見ている?

画像: 全米オープンを制したブライソン・デシャンボーの圧倒的な飛距離アップについて、松山はどう考えている?(写真は2020年の全米オープン USGA/Simon Bruty)

全米オープンを制したブライソン・デシャンボーの圧倒的な飛距離アップについて、松山はどう考えている?(写真は2020年の全米オープン USGA/Simon Bruty)

松山:再開後3試合目で一緒に回っているんですよ。見たときに、もうスゴいと(思いました)。地面が硬いコンディションで、ドライバーでトータル330ヤードちょっと飛ばしても、キャリーで置いていかれるので。2打目地点が大分先過ぎて、キャディさんも今まで誰も調べていなかったところを調べてんだろうな、というのは感じましたね。

Q:デシャンボーに関しては、「体をデカくしてクラブを長くすれば飛ぶし、それはゴルフの技術ではない」とマシュー・フィッツパトリックが言う一方で、ジャスティン・トーマスは「それも技術のひとつ。研究して結果を出すのはプロフェッショナル」と、様々な意見がある。松山選手はどう思う?

松山:どう答えれば良いのか難しいですね。個人的にはスゴいなと思いますけど、それこそ振れば振るだけ飛んでいるから、技術でカバーできるところはないのかな、と思います。昔だったらわざとボールのスピンを抑えて飛ばすだとか、風に合わせてローボールを打って転がすか、ハイボールを打って風に乗せるのか、とか。そういうことができるようなモノがあればすごく良いのになとは考えます。

Q:パワーだけでなく、色んな工夫で飛距離を伸ばす、ということ?

松山:そうですね。でも、ただ飛ぶだけでは勝てません。(デシャンボーの飛距離は)人と次元が違うところにいったので、そのアドバンテージを活かしている。グリーン上でのスタッツも良いですし。アドバンテージを取って、さらにアドバンテージを取っている感じなので、それは勝つよね、みたいな。それに対してどう僕が詰めていくのかだと思います。精度であったり、少しでも遠くに(飛ばす)というのを求めなければいけないと思います。自分の中でも日々そういった研究は小さいながらやっています。

「秋開催というよりは無観客の違和感が大きかった」。11月のマスターズと、優勝が見えた前哨戦

Q:その結果が表れたのが、マスターズ前週のヒューストンオープンでの2位。あの戦いをどう振り返る?

松山:あの試合は初日からなかなかティショットが上手くいかなかったんですけど、グリーン上(のプレー)は今シーズンでもかなり良いほうでした。ショットがもう少しまとまってくれればな、という感じで初日二日と終わったときに、きっかけがあって。三日目もある程度スコアを伸ばせたし、最終日は(ショットとパット)どっちも噛み合った感じだったので、いけるかなと思っていたんですけどね。

Q:ヒューストンオープンでの優勝争いの中で何か見えてきた?

松山:(ヒューストンオープン)最終日は本当に良いショットが打てていて、あとはパットが2~3個入っていれば。まあそれはタラレバなので、それを入れるために練習はしているんですけどなかなか試合の最後のところで決めきれないのかな~って。でも16、17番と良いパッティングして入ったので。

Q:ヒューストンオープンではガッツポーズも出ていた。松山選手はあまりガッツポーズしない印象だが?

松山:あれは自然と出ちゃいましたね。

Q:そもそも、今まではマスターズ直前の試合はスキップしていたが、今年出場した意図は?

松山:今年のスケジュールがそもそも変則的だったのもありますし、ZOZOチャンピオンシップから2週間空いてマスターズだったんですね。2週間丸々空けるのか空けないのか、という選択肢のなかで、ZOZOまでに出場した試合であまり自分が納得できるプレーができていなくて。もしできていたらそしたらもう出ないでおこうと思っていたんですけど。きっかけをつかめそうだけどつかめきれていなくて。そしたら、もう出ようかと。

Q:実際に試合に出て納得する自分の状態を作りたかったと。

松山:そうですね。(マスターズは)コースも11月開催で未知な部分もありましたけど、自分の調子を上げることが先決だと思ったので。で、実際にヒューストンオープンで2位になって、すごく自信を持ってマスターズに行けました。

Q:秋開催のマスターズはどうだった?

松山:めちゃくちゃ寒い予報だったのに、(実際は)めちゃくちゃ暑くて。30度近くあったので、そこの違和感はありましたけど、秋開催というよりは無観客の違和感が大きかったですね。スタンドもないですし。他の試合も無観客で慣れてきてたのはあるんですけど、オーガスタ(での無観客)はまた違いました。

画像: ヒューストンオープンでの2位を経て出場したマスターズでは、13位タイに(写真/2020 Masters Tournament)

ヒューストンオープンでの2位を経て出場したマスターズでは、13位タイに(写真/2020 Masters Tournament)

Q:無観客試合のやりやすさは?

松山:(良し悪し)どっちもありますよね。良いショットを打ったときに拍手がたくさんもらえれば自分も(気持ちが)乗っていきますし、悪いときは「恥ずかしい」と思いながらのプレーにはなると思うんですけど。無観客ではそれも全部なしなので。(気持ちが)上がることも少ないし、(調子が)悪くて気持ちがしょげてても、そこまで引きずらないです。

金谷ら国内男子での若手の活躍、松山はどう見る?

Q:今年国内男子では東北福祉大学の後輩、金谷拓実選手がダンロップフェニックストーナメントで優勝しましたね。

松山:(試合は)見てないですけど連絡はありました。さすがだなと思いましたね。プロになってすぐトップ10をキープして優勝争いしているなかで、チャンスをしっかりモノにしたのは、やっぱりすごいなと思いますよね。

画像: 東北福祉大の後輩、金谷拓実も2020年のダンロップフェニックスでプロ入り後初優勝。国内男子で活躍する若手たちを、松山はどう見る?(写真は2020年のフジサンケイクラシック 撮影/大澤進二)

東北福祉大の後輩、金谷拓実も2020年のダンロップフェニックスでプロ入り後初優勝。国内男子で活躍する若手たちを、松山はどう見る?(写真は2020年のフジサンケイクラシック 撮影/大澤進二)

Q:松山選手もプロ入り後すぐに世界ランク50位以内に入る活躍ぶりでした。

松山:4月にプロ入りして、6月には入っていたと思います。でもプロ転向する2年前(2011年)三井住友VISA太平洋マスターズで優勝して、その翌年(2012年)でも2位になった試合が2回あったので、そこでポイントを稼げていたというのはあります。プロになったときから、結構上位からスタートできていたので。

Q:世界ランク50位以内に入ってから、今まで落ち込んだときでも33位です。

松山:それ(33位)より下はいっていないですね。でも33位に落ちたときには、はやく上位に行きたい、これ以上落ちたくないという焦りしかなかったですね。

Q:金谷選手をはじめ、最近学生の選手が国内男子プロの試合で活躍している。松山から見て若手の活躍はどう見ている?

松山:それこそ金谷とはダンロップフェニックスのあとに一緒に練習したことがあって。勢いがあるなと。自分も当時そう見られていたのかなって、金谷を見て思いました。今プロの試合で争っている子たちって、そういった勢いを持っていて、あと金谷っていう存在がすごい大きいのかなと。同じ学生で、争っていた近い存在が優勝して、自分もトーナメントに出て上位に行けたりしたら、その自信が試合にどんどん出てつながっているんじゃないかなと思いますけどね。

Q:若手選手たちは今後、日本で力をつけていくのが良いのか、早い段階で海外進出するのか、どちらが良い?

松山:それは何とも言えないですね。日本は日本、海外は海外の良さがありますから。しんどいことも当然あるとは思うので。自分のプランを持って、しっかりやってもらえれば。

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