ギアライターの高梨祥明がゴルフクラブ選びの基礎知識を解説する短期集中企画。その5回目は苦手意識を持つゴルファーが多いフェアウェイウッド、ユーティリティの話。お助けクラブのはずなのになぜかうまく打てない、そんな疑問に迫る。

クラブセッティングを再構築。そのスタートは失敗「番手」の断捨離

ゴルフのルールでは、ラウンド中に14本のゴルフクラブを携行することが認められている。もちろん、それは本数の上限で14本持って出ないといけないわけではない。ところがたいていのゴルファーは14本きっちり揃えようとする。しかも、昔から14本の内訳はあまり変わっていないのが特徴だ。

(一般的なクラブセッティング例)
1.ドライバー
2.3W
3.5W
4.3番アイアン/ハイブリッド/アイアンユーティリティ/ウッド型ユーティリティ/7W
5.4番アイアン/ハイブリッド/アイアンユーティリティ/9W
6.5番アイアン/ハイブリッド/アイアンユーティリティ
7.6番アイアン
8.7番アイアン
9.8番アイアン
10.9番アイアン
11.ピッチングウエッジ
12.ギャップウェッジ
13.サンドウェッジ
14.パター

3Wについては昔から“キャディバッグの肥やし”と言われ、持ってはいるけど使ったことがないクラブの筆頭に挙げられる。しかし、使わないのにバッグから抜けずにいる人がいまだに多いのは実に不思議である。

画像: ドライバーと3・5Wに、アイアンはPWまで入れて、ロング番手はFW,UT、アイアンから選択。あとはウェッジ2本にパター。これが一般的な14本のセッティングとなっている

ドライバーと3・5Wに、アイアンはPWまで入れて、ロング番手はFW,UT、アイアンから選択。あとはウェッジ2本にパター。これが一般的な14本のセッティングとなっている

クラブセッティングを整理する初歩は、「番手」の断捨離だ。たとえば半年間で数回しか出番がなく、しかも結果がよくなかった「番手」はとりあえず抜いてみる。3W、5W、ユーティリティなど、先のセッティング例でいけば、番号2〜5にあたる「番手」は、多くの人にとってナイスショット率の低い、苦手意識の出てしまうアイテムなのではないだろうか? 持っていても失敗が多いクラブは抜いて、その穴埋めを考えるか、あるいはその「番手」自体を使うのはあきらめてしまう、というのも一つの選択だと思う。

画像: 3Wなどはロフトが立っているぶん苦手意識を持っているゴルファーは多いかもしれない。上手く打てず失敗が多いクラブは諦めるのも立派な選択肢だ

3Wなどはロフトが立っているぶん苦手意識を持っているゴルファーは多いかもしれない。上手く打てず失敗が多いクラブは諦めるのも立派な選択肢だ

似たようなロフトなのになぜFWが一番球が上がるのか

失敗が多い「番手」をあきらめる、という選択はなかなかできることではないが、ここでいう「番手」とは「ロフト」のことだと思っていただきたい。たとえば、最新モデルに変えてもいまいちボールが浮かない3W。ロフトはだいたい「14度〜16.5度」だ。この場合、3Wがうまく打てないのではなく、「14度〜16.5度」のロフトではティアップなしにボールを適正に上げることができないのかも、と考えていただきたい。最新モデルに変えても、このロフト領域でのシビアな状況が大きく変わることはない(かもしれない)のである。

なぜなら、フェアウェイ上では打ち出し角アップに貢献する、“深重心効果”をうまく使うことができないからだ。よくドライバーの機能説明でも「深重心設計により高弾道を実現」と書いてあるが、これはヘッドの後方に重さが集中しているためインパクトエリアでフェースが上を向きやすい、という意味だ。簡単にいえば同じロフト角でも深重心ヘッドほどインパクトロフトが大きくなりやすい。自然にアッパー軌道で打ちやすいといえばもっと簡潔だろうか。

ドライバーは、ティアップしてボールの下に空間を作ることによって、深重心効果でヘッドのお尻を下げて振っても問題なくインパクトできるようにセットアップしているわけである。ところが、ティアップできないセカンドショット以降ではお尻を傾けてインパクトロフトを大きくすることができない。ボール手前に下からヘッドを入れるスペースがないため、やりすぎるとボールの手前にヘッドが落ちてしまうからだ。地面からは打てない3Wも少しティアップすれば打てる場合があるが、これもティアップによって“深重心効果”が使えるようになったためである。

長くなったので、そろそろ話をまとめるが、ティアップなしで打つ「番手」の場合、上がりやすさは「ロフト」が決める、ということである。同じロフトでもロングアイアン→ハイブリッド→ショートウッドの順で高弾道になる気がするが、これはこの順で“深重心”になっているから。ティアップできるのならば同じロフトでもこの順でインパクトロフトが大きくなるから打ち出しが高くなるがティアップできない場合は話は別である。

画像: フェアウェイウッド(左)のほうがハイブリッド(右)よりもヘッドが大きく深重心になっているため、同じロフトでも前者のほうが高弾道になりやすい

フェアウェイウッド(左)のほうがハイブリッド(右)よりもヘッドが大きく深重心になっているため、同じロフトでも前者のほうが高弾道になりやすい

地面からは深重心効果は使いにくい、ではどうするか? ヘッドを傾けてインパクトロフトを大きくしなくても済む「ロフト」を選ぶことである。ロフト18度の5Wをインパクトロフトを大きくして上げようとするのではなく、21度や23度のクラブに替えて普通に打てばよいのだ。

深重心でやさしいはずの最新フェアウェイやハイブリッドがうまく打てないのは、“深重心効果”によってヘッドがボールの手前に落ち、ワンキック入ってしまっているからかもしれない。ティアップすればナイスショットできるようであれば、その可能性はかなり高まる。深重心すぎるクラブでは、地面にあるボールは当てにくいし、振りにくさを感じるものなのだ。

立ったロフトなのに上がりやすくするテクノロジーは、ドライバーでは有効。地面から打つクラブの場合は、基本的にはボールを上げるのは「ロフト」である。現在の自分が地面からきちんとボールを上げることのできる「ロフト」の上限を把握し、それよりも立ったロフトのクラブは“あきらめる”、あるいは“ティアップして打つ”。使うのをあきらめた「ロフト」の代わりに、たとえばアプローチで使うウェッジを増やすなどしたほうが、結果としては使える14本セットになっていくと思う。

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