今年で48歳となるベテラン選手リー・ウエストウッドが、PGAツアーの直近2試合で連続2位フィニッシュと躍進している。若いトップ選手たちがしのぎを削るPGAツアーでプロ入り28年目を迎えるウエストウッドが今なお強い理由とは? 海外取材経験20年のゴルフエディター・大泉英子がレポート。

1993年に20歳でプロ入りし、今年でプロ生活28年目を迎えるイギリスのリー・ウエストウッドが絶好調だ。

世界で通算44勝(米ツアー2勝)を挙げている大ベテランは、今年の4月で48歳になるが、いまもなおブライソン・デシャンボーやジャスティン・トーマスら世界の若手トップランカーたちと互角に優勝争いを繰り広げ、PGAツアー「アーノルド・パーマーインビテーショナル」「プレーヤーズ選手権」とビッグトーナメントで2週連続2位に入賞。3週前のフロリダスイング1戦目「WGCワークデイ選手権」を迎える前はフェデックスカップランク153位、世界ランク37位だったのが、現在はフェデックスカップランク58位、世界ランク19位にまで浮上している。

画像: 「アーノルド・パーマー招待」、「ザ・プレーヤーズ選手権」の2週連続で2位フィニッシュと好調が続くリー・ウエストウッド(写真は2020年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

「アーノルド・パーマー招待」、「ザ・プレーヤーズ選手権」の2週連続で2位フィニッシュと好調が続くリー・ウエストウッド(写真は2020年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

「今日(プレーヤーズ選手権・最終日)は自分のベストなプレーができなかったが、なんとか戦い抜いた。そのことを誇りに思う。すごく楽しみながらプレーしているんだ。みんな僕の年齢の話をしてくるね。あと1ヶ月で48歳になるけど、今でもこうしてトーナメントで優勝争いをして、最終組でブライソン・デシャンボーやジャスティン・トーマスらのようなすばらしい選手たちと一緒にプレーしているのは楽しいよ」

記者たちの前ではあまり自分の年齢や、体調のことを口にしない彼だが、2週連続で優勝争いし、さすがに疲労も溜まっていたのだろう。「プレーヤーズ選手権」最終日は足が少し重く感じられ、力が入らなかったこともあったそうだ。その影響で時折ミスショットも出たという。

「2番、4番、11番のティショットなどは足の影響が出たね。でもこの(優勝争いをした)2週間で、多くのプライドを持つことができた。優勝争いのチャンスもあったし、自分と20、25歳も違うような若手たちのいる世界最高峰のフィールドでいまだに戦えているんだ。楽しいね」

ウエストウッドの好調ぶりは、今、突然始まったものではない。昨年のヨーロピアンツアーでも証明済みだ。ヨーロピアンツアーのビッグイベント「アブダビHSBC選手権」で優勝。最終戦の「DPワールド・ツアー選手権ドバイ」では2位に入り、史上最年長の「レース・トゥ・ドバイ」ランク王者に輝いた。2010年シーズン後半には世界ランク1位にのぼりつめ、22週間、世界王者の座に君臨していたが、今から3年前の2018年には世界ランク125位にまで落ち込んでいた。その後、少しずつ調子を取り戻し、メジャーやWGCイベントに出場できる世界ランク50位以内に復帰している。

なぜ48歳を迎える彼が、ここ数年、世代交代の激しい世界のゴルフ界で今もなお強さを誇っているのか? それにはどうやら3つの理由があるようだ。その中でも最大の秘密兵器が、1人の女性の存在である。

それは、フィットネス・インストラクターで、ウエストウッドとは2015年から交際を開始しているヘレン・ストーリーさんだ。彼女は2018年秋からキャディも務めるようになり、ツアー参戦時はたいてい一緒に行動を共にしているフィアンセ。昨年のアブダビでの優勝も、ストーリーさんと二人で掴み取ったビッグタイトルだ。

「彼女はあまりゴルフのことは知らないが、僕の精神状態のことはよくわかるんだ。彼女がいると精神的に落ち着くし、必要な時に必要なことに集中できる。クラブを運んで、風を読んでくれるキャディ以上の働きをしてくれている。長年に渡ってキャリアを積んでいる僕に、物申せるキャディはそう多くはないが、ヘレンはコースでもすばらしい気分にさせてくれるし、心理学的に彼女は僕を助けてくれている。僕が必要なことを言ってくれるんだ。彼女の助けは計り知れないよ」

とウエストウッドは彼女の必要性を語っている。そしてここ2週間、最終日を最終組で共にプレーしたブライソン・デシャンボーもまた、ウエストウッドにとっていかに彼女が大きな存在であるかを目の当たりにしている。

「ヘレンは彼のゴルフの大きな要素になっていると思う。彼女のおかげで彼は安定感のある、地に足ついたプレーができているしね。彼女は最高だよ。彼女がいるから、集中すべきことに集中できているんだ。秘密兵器の一つだと思うよ」

好調の理由の2つ目は、心理学者の存在だ。彼は数年前から心理学者に精神面での指導を受けており、そのおかげで年齢を重ねても前向きな姿勢でトーナメントに臨むことができている。

「僕は結果のことは気にしていない。自分のパフォーマンスが気になるだけだ。高いパフォーマンスを出せるように僕はいつも一生懸命、練習に励んでいる。心理学者とここ数年、取り組んでいるが、僕たちは過程を大事にしている。結果や、自分たちがコントロールできないことは気にしないんだ」

彼は、唯一自分がコントロールできることは、「過程」であり、自分が楽しんでプレーすることだと言う。そして、今から10年前、世界ランク1位だった自分と2021年のリー・ウエストウッドを比べることはしたくないのだと語る。

「10年前の自分とはもはや違う人間だからね」

過去にピークを迎えた選手や、まもなくシニア入りという年齢を迎えている選手ならなおさら、「昔は体力もあったし、飛距離も出たのに……」と過去の栄光を振り返ることもあるだろうが、心理学者のアドバイスを受け、健全な精神状態をキープしているウエストウッドは、決して過去を振り返ろうとしない。今を楽しみ、今できることに集中するという心構えでプレーに臨んでいるのだ。だから、過去の自分や他人と比較して、年齢による衰えやパフォーマンスの低下を嘆くこともない。ただ、目の前の試合に出場し、楽しんでプレーできればいいと考えている。

もちろん、技術面や体力面の向上も怠っていない。ジムで飛距離アップや安定したショットに必要なトレーニングを積み、ケガを予防するための筋肉作りにも取り組んでいる。飛距離は時に350ヤードを叩き出すこともあり、「自分は決して飛ばない方ではない」という自負もある。そして、デシャンボーのような現代ゴルフの寵児のようなプレーヤーと回っても、彼のパワーゴルフに引っ張られることなく、自分のプレーを貫ける強さが今のウエストウッドにあるのだ。

「とくに飛距離が落ちているということもないし、ゴルフに対する情熱も失せていない。コーチとスウィング作りにとりくんでいるが、ドライバーもアイアンもショットがよくなっている。スウィングがよくなってくるにつれて、左側のミスが減っているのは大きい。今、技術的には全てにおいていい感じだと思うし、必要な球を打ち分けることもできる。すべてのショットにおいて、とてもしっくりきているんだ」

世界で44勝を挙げる大ベテランのゴルフ史に、欠けているものがあるとすれば「メジャー優勝」だ。今年で20回目の出場となる「マスターズ」では過去、2位に2回入っているが、精神的にも技術的にも最高レベルの状態を維持しているウエストウッドなら、悲願のメジャー優勝をオーガスタで遂げることができるかもしれない。 

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