40歳のマット・ジョーンズが圧勝を飾ったホンダクラシックで注目を集めた選手がいる。カミロ・ビジェガス。かつてスパイダーマンと呼ばれ一斉を風靡したコロンビア出身の39歳が話題になったわけとは?

注目された1つ目の理由は肩の故障によって適用されたツアーの公傷制度による出場期限が今週だったから。ホンダクラシックで3位以内に入ればポイントランク125位以内の条件を満たしシード復帰となったのだが惜しくも8位タイ。最終日にあと2つスコアを伸ばしていれば圏内に入ったのだが今後はコーンフェリーツアー(下部ツアー)が主戦場になる。

11年前のこの大会でビジェガスは自宅から自転車を漕いでコース(PGAナショナル)に通い見事優勝している。その2年前の2008年には最終戦のツアー選手権を制し、まるでウェルター級のボクサーのような細マッチョ体型とグリーン上でラインを読むときに見せるスパイダーマンポーズが話題になり
一躍若手のトップスターに躍り出た。

しかし2014年のウィンダム選手権で4勝目を挙げてからはケガに苦しみシードから陥落。ここ数年苦しいシーズンが続いたそんな彼に昨年追い打ちをかけるようなできごとが起こった。

画像: 今大会8位タイでフィニッシュしたカミロ・ビジェガス(写真はGetty Images)

今大会8位タイでフィニッシュしたカミロ・ビジェガス(写真はGetty Images)

12歳のときから付き合い「ビジェガスが初恋の相手」という妻マリアさんとの間に誕生した愛娘ミアちゃんが22カ月の短いを生涯を閉じたのは昨年の7月26日。

おしゃべりをはじめ可愛い盛りだったミアちゃんが夜中にむずがるため医者を訪ねると「歯が生えるときにむずがることがある」といわれ様子を見たが異変が続き検査すると脳腫瘍が判明。懸命の闘病にも関わらず病魔は幼い命を蝕みミアちゃんは還らぬ人となった。

「ミアが私たちを両親に選んでくれたことをとても誇りに思います。どうしてこんなことが? とよくいわれるけれど人生は不公平なもの。ミアはこの世に特別な使命を持って生まれてきたのです。学ぶためではなく我々に何かを教えるために」

愛娘を失ったマリアさんは当時そう語っていた。そして彼女の死を無駄にしたくないと、病床にいる子供たちを助けるための基金を立ち上げ、今回ホンダクラシックが長年支援を続けているニクラス小児病院に血液内科や腫瘍病棟で働く看護師やスタッフのために休憩スペース(部屋)を寄付したのだ。それがビジェガスが注目された2つ目の理由。

ニクラス小児病院はジャック・ニクラスの妻バーバラさんが60年以上ライフワークとして支援し
続けており、ミアちゃんが息を引き取ったのもそこだった。

「ニクラスとバーバラさん、そして病院のスタッフには感謝してもしきれません。想像を絶する激務のなかミアや他の子供たちの気持ちを和らげるために尽くしてくれた方々に少しでもリフレッシュできる場を提供したかった。これに関しては妻が本当に頑張ってくれました」(ビジェガス)。

悲しみを乗り越えた夫婦の未来に幸あれと祈らずにはいられない。

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