PGAツアー「ザ・ホンダクラシック」を制し、7年ぶりの2勝目を掴んだマット・ジョーンズ。2位と5打の大差をつけて優勝を決めたジョーンズが、難コース「PGAツアーナショナル」で安定感のあるプレーができた理由とは? 海外取材経験20年のゴルフエディター・大泉英子がレポート。

ジャック・ニクラス設計コース「PGAナショナル」で毎年開催される「ザ・ホンダクラシック」は、オーストラリアのマット・ジョーンズが2位のブランドン・ハギーに5打差をつけ優勝。7年ぶり2度目の勝利を掴んだ。この優勝でフェデックスカップランクは11位、世界ランクは49位に浮上。海外メジャーやWGCイベントに出場できるエリート50人の中に入ってきた。

「2勝目までの7年間の間は、浮き沈みもあり、いろいろなことがあった。でも、このように難しいコンディションのコースで2勝目を挙げることができて本当にすばらしい。これをきっかけに、今後も何か掴めるといいが……。今週は4日間、すごくいいゴルフができたし、ミスというミスもなかったよ」

画像: PGAツアー「ザ・ホンダクラシック」を制したマット・ジョーンズ(写真/Getty Images)

PGAツアー「ザ・ホンダクラシック」を制したマット・ジョーンズ(写真/Getty Images)

今回の大きな勝因に「今まで経験したことがないくらい最高のボールストライキング」を上げたジョーンズ。彼はいつも、練習日はショットがいいが、試合になると悪くなるという「ブルペンピッチャー」のようなタイプで、今大会前の同スタッツは、ツアーで112位だったのが、大会期間中の順位は出場選手中、なんと1位。何か特別にスイングを変えたというわけではないようだが、彼は練習中、オーストラリアにいるコーチのゲーリー・バーター氏とフェイスタイムを使いながら、あれこれとスイングについて取り組み、体とクラブの動きを合わせた結果、ショットが良くなってきたのだという。

PGAナショナルは、風が強く吹き、大きな池が障害となる難易度の高いコースとして知られ、特に「ベアーズトラップ」と呼ばれる15〜17番ホールでは、池にハマってスコアを落とす選手も多いが、彼は4日間を通して3バーディ、1ボギーと、非常に安定感のあるプレーで、この難関ホールを切り抜けた。それもこの「ボールストライキング」のスタッツの良さが、彼のプレーぶりを証明している。初日はコースレコードタイの61をマーク。4日間を全てイーブンパーよりもいいスコアで回った。

「ボールストライキングは、通常なら僕の弱点。でも今日は長所に変わった」

また、オーストラリア出身の彼にとって、「風」が優勝への追い風となった。

世界のトッププロたちにとっても、風は「見えないハザード」であり、得意だと言い切る人はあまりいないだろう。しかしオーストラリア出身のプロは、強風の中でのプレーに慣れているとして、彼自身も自信を持ってプレーしていた。個人的には、普段、どうしても打ち急いでしまうクセがあるそうだが、風が吹いている時こそスイングテンポをゆっくりにして、保守的に攻めるという姿勢でショットに臨んでいたのだという。その結果、「風の中でも弾道や球筋をコントロールできた」と語っている。

「今週は、いつもよりもゆっくり歩き、リラックスしながらプレーしようという小さな目標を持ってプレーしていたんだ。通常はせっかちなタチで、ついうち急いでしまう。だから落ち着いて、リラックスしながらプレーすることにしたんだよ。こういうコースを回る時は、特に必要なことだってわかっているしね。今週立てた、この小さな目標のおかげでうまくいったよ」

心を落ち着け、リラックスして回った結果、スイングテンポもゆっくりに……。その結果、過去出場したどんな試合よりも、最も心を落ち着け、静かにプレーできたと語った。

「ゴルフというスポーツは、非常にタフなスポーツで、その戦いはとても熾烈なものだ。このツアーで勝つことはたやすいことではない。私の場合は2勝目までに7年もかかったんだから。でもこうしてまた、優勝者の仲間入りができた。思わず涙がこみ上げてきたよ」

2014年、「マスターズ」の前週の「ヒューストンオープン」で優勝し、急遽オーガスタ行きが決まったジョーンズ。2014年の「マスターズ」の練習日(月曜日)は雷雨のため、午前中でコースがクローズするなどの不運もあり、まともに練習することなく試合を迎え、予選落ちを喫した。今年はもともと今週から「マスターズ」の週までの3週間をオフにしようと考えていたため、じっくりオーガスタで練習し、本番を迎えることができる。

「(2014年は)月曜日の練習もなくなり、パー3コンテストにも出て、実はあまりコースのことを覚えられなかったんだ。あの週のこともあまり覚えていない。ひどい1週間だったよ。だから今年はコースで練習できるのが楽しみなんだ」

オーガスタへの切符もゲットし、2022年1月はハワイ・マウイ島で迎えることも確定。あとは、人生初の「オリンピックゴルフ」と「プレジデンツカップ」出場に向けて、さらなる躍進が必要となる。来月の「マスターズ」後には41歳となるジョーンズが、今大会をきっかけに一皮剥けるかに期待がかかる。

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