世界中で新型コロナウイルスが流行た2020年、ゴルフ用品市場にはどんな影響がでたのだろうか?ゴルフ産業の市場調査・研究を生業とする矢野経済研究所の三石茂樹が分析する。

弊社(矢野経済研究所)では、2年に一度全世界のゴルフ用品市場規模とその動向をサマリーした「世界ゴルフ市場レポート」を発刊しており、このたび3月末に「2021年世界ゴルフ市場レポート」を発刊した。

この資料、アメリカのゴルフ専門調査会社「Golfdatatech(ゴルフデータテック、以下GDT)社」と弊社との共同調査によるレポートで、GDTが「北南米」「欧州」「オセアニア」「アフリカ」の国々の調査を担当、弊社が日本を含めたアジア地区の国々の調査を担当し、それぞれの調査結果を合算して世界のゴルフ用品市場規模を推計算出する、という内容になっている。

画像: コロナ禍でゴルフ用品市場はどのような影響を受けたのか?(撮影/有原裕晶)

コロナ禍でゴルフ用品市場はどのような影響を受けたのか?(撮影/有原裕晶)

言うまでもなく新型コロナウイルス感染拡大は世界レベルで広がっており、日本だけでなく世界各国のゴルフ産業が様々な影響を受けている。日本ではコロナによって若年齢層を含めた新規ゴルファーや、過去にゴルフをしていたけれど様々な理由で止めていた所謂「休眠ゴルファー」の復活が増加しているが(こちらに関しては4月に調査レポートを発刊予定)、そうしたこともあり他の産業に比べると「ケガ(マイナスの影響)」は少なかったと言われている。

むしろコロナ禍の中において「三密にあたらない屋外型のアクティビティ」として脚光を浴びている面もある。果たして日本以外の国はどのような市場環境になっているのか。レポートの一部を抜粋して分析してみたいと思う。

-2020年の世界ゴルフ用品市場は対前年比106.4%のプラス成長-

上述の通り「2021年世界ゴルフ市場レポート」では2020年の世界ゴルフ用品市場は対前年比106.4%のプラス成長と推計した(但しドル換算ベース。円換算ベースでは104.5%)。恐らく一年前には世界のゴルフ産業従事者の誰一人として「プラス成長」にて着地することを予測していなかったのではないだろうか。勿論私もその一人である。ただ、各国間の成長率(及び減退率)にはバラツキが生じている。2020年のゴルフ用品市場規模世界トップ10の対前年比は以下の通りである(対前年比はドル換算ベースの数値)。

1位:米国 111・4%
2位:日本 96.9%
3位:韓国 113.8%
4位:カナダ 107.3%
5位:英国 100.3%
6位:スウェーデン 151.4%
7位:オーストラリア/ニュージーランド 113.6%
8位:中国(香港、マカオ含む) 115.2%
9位:ドイツ 114.7%
10位:フランス 97.2%

世界最大の市場規模を有する米国が対前年比111.4%と二桁レベルの成長を果たした。世界市場規模における米国のシェアは40%台中盤であり、同国の力強い成長が世界市場全体のプラス要因となった。トップ10の国の中でマイナスとなっているのは2位の日本と10位のフランスのみである。

日本市場の年間動向については前回の「対前年比95%の“大健闘”の要因は? 2020年、コロナ禍の国内ゴルフ用品市場を振り返る」にて詳細に分析をしたが、「大健闘」レベルの需要を形成したとはいえ、他の国はそれ以上の需要を形成した、ということになる。

それぞれの国の成長要因をここで述べてしまうとレポート本体が売れなくなってしまうので、詳細については是非レポートを参照頂きたいところであるが、簡潔に述べるとそれぞれの国における新型コロナの感染者数や死亡者数との直接的な関連性は薄く、それよりも各国政府の感染症対策の内容がゴルフ用品市場の成長性に影響を及ぼしているように思う。それ以外にも、海外渡航が禁止されたことによってそれまで自国以外に「流出」していた需要が国内に止まったという点も、無視することのできない「コロナ禍の市場構成要因」なのではないかと感じている。

米国市場の成長要因についてGDTに問い合わせたところ、「(多くのアメリカ国民がコロナによって)他にやることがなかったから」という何とも大らか且つシンプルな? 答えが返ってきた。私などはどうしても「屋外型アクティビティで三密に該当しない」とか、「在宅勤務による運動不足解消の手段として感染リスクの低いゴルフが云々」など、「いかにもそれらしい」理由を見つけたがる癖があるのだが、GDTの回答はシンプルではあるが本質を突いたものなのではないかと思った(本音を言えばもう少し『深い』分析が聞きたかったが)。

つまりそれは逆に言うとコロナ前の世界、即ち「ゴルフ以外にもやることが沢山ある」世界に仮に戻ったとしたならば、2020年にゴルフを始めた人たちはゴルフ場やゴルフ練習場から消えてしまう可能性が高い、ということになる。しかし残念ながらこの先暫くは「コロナ前」の世界に急に戻る可能性は低いのが実情であり、コロナによってゴルフを始めた人たちが「消える」可能性は今のところは低いのではないかと思う。

画像: コロナ禍でゴルファー人口は増えたが、今後はどうなるのだろうか(撮影/有原裕晶)

コロナ禍でゴルファー人口は増えたが、今後はどうなるのだろうか(撮影/有原裕晶)

しかし、新しくゴルフを始めてくれた人達や久し振りに復活した人たちがゴルフに対して「居心地の悪さ」を感じたり、ゴルフの本当の楽しさを実感するところまで辿り着くことなく「飽きて」しまったり「挫折」してしまったりしたら、コロナ如何に関わらずそれらのゴルファーは暫くすれば「消えて」しまう可能性が高く、数年後に「2020年の世界レベルでの6%のプラス成長は“バブル”だった」などという分析が行われてしまうだろう。

既に米国などでは、コロナによって増加した新規ゴルファーの継続率を如何にして向上させるか、即ち彼等に「如何にしてゴルフを楽しみ続けてもらうか」についての具体的戦略立案と戦術実行に向けた動きがあると聞いている。日本の市場でも同じように新規ゴルファーの継続率向上に向けた具体策が恐らく今年から具体化するのではないかと期待している。

今が業界にとって最大の「チャンス」であると言っても過言ではないが、個人的には促成栽培的に新規ゴルファーが増えればそれで良いとは思っていない。最低限のマナーやルールを知ってもらう機会を創出する努力を業界側が行うことなく、「お行儀の悪い」ゴルファーばかりが増えてしまうようなことは避けなければならないと考えている。

ただ単に「ゴルフをする人」「ゴルフクラブで球を打つ人」を増やすのではなく、「グッドゴルファー」を育成する「仕組みづくり」がこれからのゴルフ業界に必要なのではないかと思っている。どのようにすれば「グッドゴルファー」が増えてくれるのか、そもそも「グッドゴルファー」とはどんなゴルファーなのか。微力ではあるけれど、図らずもコロナによって改めて浮き彫りになったゴルフ産業全体にとっての新しいテーマについて、自分自身も積極的に関わってゆきたいと考えている。

 

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