渋野日向子の専属トレーナーを務めている斎藤大介。そんな斎藤に現在のチーム渋野の体制や、トレーニングの内容について語ってもらった。

――2019年シーズンのオフ頃から渋野日向子選手の専属トレーナーとなった斎藤トレーナ―。今年から青木翔コーチがチームを離れたが、現在のトレーニングの体制は?

斎藤大介(以下斎藤):実は米女子ツアーではスウィングコーチがいない選手がめちゃくちゃ多くて、選手と直接話してトレーニングするっていうパターンがほとんどです。リディア・コーはコーチがいましたけど、僕が経験した中ではそれくらいで、あとはほぼ自分でやっているか親がコーチしているかです。昨年までのように青木(翔)コーチを交えた3人でトレーニング方針を決めるのはかなりレアケースだったので、裏を返せば選手とトレーナーで話し合う今の体制はやり慣れた形とも言えます。

――これまでリディア・コー、イ・ジョンウン6、畑岡奈紗ら米女子ツアートッププロたちのトレーナーを務めてきたが、そもそも海外ではどのようなトレーニング体制が多い?

斎藤:転戦には経費もかかるし、かといって日本のようにスポンサーに恵まれていない選手が多いので、トレーナーも基本的にシェア。一人で何人もの選手を見るのが基本で、マンツーマンで見ているトレーナーは一人もいないかもっていうくらいですね。大体1時間程度のトレーニングと試合前後に15分程度のケアの時間を作り、それを各選手順番に行っていく形です。

ただ一つ言えるのは、米女子ツアーの選手はみんなキャディとトレーナーには投資しているということ。米女子ツアーの過酷さが日本の比ではないから、体の大切さが必然的にわかるんだと思います。

――今は週どれくらいトレーニングを行っている?

斎藤:試合がない週は、オンライン(でのトレーニング)も含めて週4、試合がある週は週1ですね。渋野選手自身は僕にそんなにリクエストしてこないので、本人の感じていることを僕が受け取って、考えて行うといったところが今までの選手とは違いますね。

ただ、渋野選手のセンスがバツグンなので、基本的に何をやっても上手くいくんですよね。今も、スウィングを大きく変えてまだ2か月くらしか経っていないのに試合として成り立っているじゃないですか。正直に言えば、誰がトレーナーをやっても結果は出ると思います。そう言えるくらい、身近で接していてバツグンのセンスを持っています。

画像: 渋野日向子の専属トレーナーを務める斎藤大介氏(撮影/増田保雄)

渋野日向子の専属トレーナーを務める斎藤大介氏(撮影/増田保雄)

――渋野選手のトレーニングの内容は?

斎藤:そもそも今までは体の基礎作りからやってきて、「まずは体を強くする前に動きを鍛えよう」というところから始めたんですよね。股関節の基礎、コアの基礎、上半身の姿勢の基礎……といった感じで、結構地味なことをやってきたんですよ。もちろんトレーニング的な部分もやっていましたが、割合としては半々くらいで、いわゆるウェートトレーニングは、やっても20~30キロのダンベルくらいで、ほぼやっていなかったです。

――「動きを鍛える」とは具体的にどういうこと?

斎藤:効率を上げる、ということですね。自分の体が思うように動かないっていうのが一番再現性に影響するので。一つひとつの動きに対して“神経を増やしていく”じゃないですけど、もっと自分の体に意識を向けて動かそうと思ったように動かせるようにするトレーニングです。

――アスリートにとっては非常に重要そうですね。

斎藤:そうですね。契約した当初はそういった動きに関して結構どんくさいところがあって、僕としてはこのままいきなりウェートトレーニングをやるのはちょっと怖いなっていう部分があって。良くするよりも、まずは今よりダメにしないことが大切だと思ったので、本当に慎重にやってきました。

体の基礎作りに関しては今年のオフの間までで僕のやりたいことの8~9割くらいはできて、ほぼひと段落しつつあります。今後はその動きに対して、負荷をかけてもうちょっと体を強くしていく段階です。これは本人にも伝えてあります。

画像: 海外メジャー「ANAインスピレーション」以降、6月末までを目途に海外遠征を行うことを決めた渋野日向子(写真は2021年のダイキンオーキッドレディス 撮影/姉崎正)

海外メジャー「ANAインスピレーション」以降、6月末までを目途に海外遠征を行うことを決めた渋野日向子(写真は2021年のダイキンオーキッドレディス 撮影/姉崎正)

――トレーニングの方向性は、やはり渋野の要望に合わせて変える?

斎藤:そうですね。ただ、本人が6月末まで海外遠征に行って、帰ってきたときにどう思うのかっていうのが僕はまだわからないので。昨年に約2か月間の海外遠征に行ったときも、その後本人の意見が少し変わっていて。「飛距離は要らないのでもっと再現性を良くしたい」ということで、以降半年は徹底してそれをやってきました。

出国前に「アメリカに行って、またどう感じたかは教えてね」とも伝えてあって、それと併せて「こういう方向性だったら、こういう風にトレーニングを変えていこう」というのも事前に何パターンか伝えてあります。具体的にどういった方針でトレーニングを進めるかは帰ってきてから話す予定です。

画像: 渋野のパット練習を柵の奥から見守る斎藤トレーナー。現在国内女子ツアーに関しては、トレーナーは有観客試合の場合のみ会場入りができるという(写真は2021年のアクサレディス)

渋野のパット練習を柵の奥から見守る斎藤トレーナー。現在国内女子ツアーに関しては、トレーナーは有観客試合の場合のみ会場入りができるという(写真は2021年のアクサレディス)

――トレーニング以外の面ではどんなことをしている?

斎藤:食の面からの体調管理もそうですね。渋野選手の場合は、毎朝ミックスジュースを作って飲んでもらっています。本人が好きな牛乳をベースに、ミキサーにかけた果物と野菜2~3種類くらいを入れたものですね。体を整えるための一環で、お菓子とかは制限せずに、必要最低限の栄養を摂ってあとはご自由にどうぞと言った感じです。

――ストイックに食まで管理、というわけではない?

斎藤:栄養面で完璧な食事だけを食べて生活していたらただストレスが溜まるだけで、逆に成績が出ないんじゃないかなと思います。必要なものさえ採っていれば、体が小さくなってしまったり、コンディションが悪くなることはないので。

あと体のケアに関しては、僕の他にもう一人トレーナーを派遣していてその方にお任せしています。基本的にツアーを転戦するゴルフのトレーナーには選手のトレーニングから体調管理、体のケアまで一人で何でもできるオールラウンダーが求められますが、僕の時間的都合がつかない部分もどうしても出てくるので、お任せできるところは分担していますね。

――最後に、斎藤トレーナー自身の、トレーナーとしてのゴールはどこ?

斎藤:僕自身旅が好きなアドレスホッパーなので各地を転戦するゴルフとは性が合っていると思っていて、最終的には海外に色んな拠点を作って、色んなツアーに日本人トレーナーを派遣していけたら面白いんじゃないかなとも思っています。実際に今も2人米女子ツアーに派遣しています。

ただ今の目標はやっぱり、渋野選手と一緒にアメリカに行って本人の夢を叶えてあげたいですね。

画像: MAX420ヤード!和田正義プロの飛ばしの秘密は?秘伝のトレーニング方法を伝授【ユージ ドラコン挑戦#10】 youtu.be

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