「日本ゴルフツアー選手権森ビルカップ」でツアー初優勝を挙げた木下稜介。松山英樹、石川遼と同年代のスウィングをプロゴルファー・中村修が解説。

会場となった宍戸ヒルズCC西コースは、7381ヤードパー71の設定でした。ラフは例年ほど深くはありませんでしたが、硬く13フィートはあろうかという高速のグリーンはショートアイアンで打てる飛距離を持つかフェアフェイから打つしかないほどに仕上げられていました。

優勝した木下選手はただ一人4日間を60台でプレーし2位に5打差をつける圧勝劇を見せてくれました。本来は耐えるゴルフとなるセッティングの中で、パーオン率80.56%で2位、平均パット1.7069で4位とショットとパットがともに冴え、ランク1位となる19個のバーディを奪います。

画像: 日本ゴルフツアー選手権で初優勝を挙げた木下稜介(写真/岡沢裕行)

日本ゴルフツアー選手権で初優勝を挙げた木下稜介(写真/岡沢裕行)

好調の理由を「コーチとの出会いが大きかった」と優勝会見で語っていましたが、コーチを務めるのは稲見萌寧選手らのコーチも務める奥嶋誠昭ツアーコーチ。さっそく、話を聞いてみました。

「2日目終わって4打差の首位に立ったあとに、あと2日どうすれば勝てますか? と連絡もらって(笑)。競ってくると焦りが出て自分で自分にプレッシャーをかけてしまうところがあり、スウィングテンポが速くなって失敗しているので、そこを気をつけるようにと話しました」(奥嶋コーチ)

打ち急いで当てに行ってしまうことでミスになり、昨年の「三井住友VISAマスターズ」では、金谷拓実選手に惜敗し2位で終えています。

手先の器用さがあるからこそ、優勝争いの中でなるべく手先を使わないスウィングに改善すること。2021年の開幕に間に合うかどうかというスケジュールでのスタートになりましたが、オフに懸命に取り組んだことで開幕に間に合うレベルにまで仕上がっていたといいます。

具体的に取り組んだのは「体が起き上がって手元が浮くというのが悪いクセ。そこは徹底的にやりました」と奥嶋コーチ。

体が起きるとアドレス時よりもボールから離れることで、手先を使いたくなくても使わざるを得なくなってしまいます。それを防ぐため、ボールに覆いかぶさるように意識付けを徹底したとのこと。

お手本にしたのは、ズバリ同じ年の松山英樹選手のスウィング。「英樹はどうしてそうやって(プレッシャーがかかっても)打てるのか?」という話し合いをしながら、選手とコーチ二人三脚でスウィングの改造に取り組んできたそうです。

そして2021年の開幕戦で4位タイ、「アジアパシフィックダイヤモンドカップ」で13位タイなど手ごたえを積み重ねてきた結果、今大会では奥嶋コーチの言葉通りリズムの一定した落ち着いたプレーを重ね、優勝を手にしました。

最後に、スウィングを細かくチェックしておきましょう。まず、画像Aを見るとオーソドックスなスクェアグリップから、左肩が少し下がり前傾角をキープしたままトップを迎えています。今大会の4日間のドライビングディスタンスは292ヤードほどでしたが、それだけの飛距離を生み出すエネルギーをしっかりと溜めこめています。

画像: 画像A:バックスウィングでは左肩が少し下がり、前傾角をキープしたままトップ位置へクラブが上がる(写真は2021年の関西オープン 写真/岡沢裕行)

画像A:バックスウィングでは左肩が少し下がり、前傾角をキープしたままトップ位置へクラブが上がる(写真は2021年の関西オープン 写真/岡沢裕行)

注目は画像Bの右です。頭の位置が低くなるくらいしっかりと前傾角がキープされていることで手元が浮かず、手先を使わずにターゲットに向けてボールを押し込むようにインパクトを迎えています。まさに、コーチとの取り組みの成果ですね。難コースの宍戸ヒルズCCを攻略した飛距離と方向性が見て取れるスウィングです。

画像: 画像B:ダウンスウィングでは頭の位置が低くなるくらいしっかりと前傾角をキープ。そのことで手元が浮かず、手先を使わずにターゲットに向けてボールを押し込むようなインパクトができている(写真は2021年の関西オープン 写真/岡沢裕行)

画像B:ダウンスウィングでは頭の位置が低くなるくらいしっかりと前傾角をキープ。そのことで手元が浮かず、手先を使わずにターゲットに向けてボールを押し込むようなインパクトができている(写真は2021年の関西オープン 写真/岡沢裕行)

国内メジャー大会である「ツアー選手権」を制し5年シードを獲得することを狙っていたという木下選手は、欧州ツアーや米ツアーへの挑戦にも意欲を見せています。2位に入った古川雄大選手、3位タイの大岩龍一選手、同じく3位タイのアマチュア杉原大河選手など期待の若手がどんどん頭角を現してきていますので、男子ツアーからも目が離せませんね。

※2021年6月8日10時55分 トップ画像を差し替え致しました。

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