コリン・モリカワとのプレーオフの末、PGAツアー「メモリアルトーナメント」を制したパトリック・カントレー。一歩も譲らない優勝争いを演じた2選手だが、実は本来そこに加わっていたはずの、3日目終了時点で6打差で首位に立っていたジョン・ラームが棄権になってしまったのだ。いったいラームに何があったのか。海外ツアー取材歴20年の大泉英子がレポート。

月曜日の早朝は、「全米女子オープン」で優勝争いを繰り広げていた笹生優花と畑岡奈紗の日本人2人がプレーオフに突入し、食い入るようにテレビ画面を見つめていた人が大半だと思うが、同時にジャック・ニクラス主催の「メモリアルトーナメント」がオハイオ州ミュアフィールドビレッジで行われており、こちらもまたパトリック・カントレー、コリン・モリカワがプレーオフで決着をつけていた。優勝したのは2019年大会で優勝したカントレー。米ツアー通算4勝目を飾り、フェデックスカップランキングで1位に浮上。世界ランキングでもトップ10入りを果たした。

「今週は毎日、とてもソリッドなゴルフをしていた。ショートパットやミドルパットが決まらないこともあったが、その代わりにロングパットが決まったこともあった。自分自身と向き合いながら、いい感じで自信を持ってプレーしていたよ。本当にベストを尽くしたプレーができたと思うし、いい仕事をしたと思う」

もともとカントレーとモリカワは、3日目のラウンドを終えて首位のジョン・ラームに6打差という大差をつけられ、2位タイでホールアウトしていた。ディフェンディングチャンピオンでもあり、3日目までショットもパットも絶好調だったジョン・ラームは、いったいどこにいってしまったのか? 

ご存知の方もいると思うが、なんと3日目のホールアウト後にPCR検査の結果、コロナ陽性が判明。最終日を戦うことなく、棄権を余儀なくされたのだ。6打差という「ディスタンス」をスコアで取りながらも、コロナにかかって出場禁止。最終日の日曜日から早速、10日間の隔離に入った。これを受けて、2人はいきなり首位タイに並び、最終日を迎えることになったというわけである。

画像: PCR検査の結果陽性だと判明し、メモリアルトーナメント最終日棄権を余儀なくされたジョン・ラーム(写真/Getty Images)

PCR検査の結果陽性だと判明し、メモリアルトーナメント最終日棄権を余儀なくされたジョン・ラーム(写真/Getty Images)

「こんなおかしな状況になってしまって、とても残念だよね。彼(ラーム)は3日間、とても素晴らしいプレーをしていたのに。ボクはただ気持ちをいったんリセットして、(首位タイで最終日のプレーを始めるという)考え方に切り替える以外、自分にできることはなかったけど、1日中コリンと一騎討ちのような感じで、いいプレーができたと思う」

もともとラームとの6打差という大差を埋め、優勝するには相当アグレッシブなプレーをしていかないといけないと思っていたカントレー。だが、最終日を迎えるにあたり、攻撃モードも切り替えていく必要ができた。もちろん、気を緩めてもいい、ということではない。猛追しなければいけないターゲットがいなくなっても、依然として「本当にすごくいいラウンドをしなければいけない」ということには変わりはなかった。

一方のモリカワも「この事態を理解するのに1時間かかった」という。例えていうなら、先頭を走っていたペースメーカーが突然いなくなり、急にどういうペースで戦えばいいのかわからなくなったランナーと同じような心境だろうか? 2人は最終組でマッチプレーのような戦いを演じ、両者4バーディ、3ボギーの71でホールアウト(スコアはともに13アンダー)。プレーオフに突入し、1ホール目でカントレーの優勝が決まった。

「本当は(ラームと)顔を合わせ、すごくいいスコアで回って彼を直接やっつけられたらよかったんだけど、でもボクにはなす術はなかったね」

もしラームがコロナに感染せず、そのまま最終日もプレーしていたら、仮に76(4オーバー)を叩いたとしても2人に1打差で優勝できていた可能性がある(ラームがプレーした場合は、2人のメンタル面も変わるので、一概には言えないが……)。そして優勝したら、タイガー・ウッズに次ぐ、2人目の2連覇達成者として讃えられたはずだ。ラームはコロナ陽性判明後に「メモリアルトーナメントを棄権することになり、本当に残念。(中略)明日はみなさんと一緒に対決を見るのを楽しみにしてるよ」とSNSで心情を吐露したが、以上に挙げたような「タラレバ」話は、ラーム自身の頭にもよぎったのではないかと思う。

来週にはトーリーパインズで、今シーズン6試合目のメジャー「全米オープン」が開催される。ラームは少なくとも10日間は隔離しなければならず、「全米オープン」の火曜日までが隔離期間となる。練習ラウンドはたった1日しかできないことになるが、トーリーパインズで毎年開催される「ファーマーズインシュランスオープン」での優勝経験が、少しは気休めになるだろうか。

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