時代とともに軽く長くなり、セッティングのなかでも“エキストラクラブ”的になってきている現代のドライバー。そんな現代のドライバーとの上手な付き合い方を、ドライバーギアライター高梨祥明が考える。

今の3Wは80年代のドライバーと変わらない。つまり、今のドライバーは80年代にはなかった「UT」だ

フィル・ミケルソンが48インチに迫る超尺ドライバーを駆使して全米プロに勝ち、国内ツアーでも長尺が試されるなど“上手い人”の間では長尺ドライバーに注目が集まっているようだ。

シャフトの長尺化はとくに最近始まったわけではなく、1996年あたりから浮いては沈み、沈んでは浮かぶようにして繰り返されてきた一種の“流行病”みたいなもの。試行錯誤の結果、現在主流の45〜45.5インチ程度にドライバーの長さは集約されてきたと考えれば、ここでまたシャフトの長尺化を新しいコトのように取り上げるのも気が引ける。一般ゴルファーが単に長さをミケルソンみたいにしたとしても、望むような結果にならないことは容易に想像がつくからだ。

画像: 48インチに迫る長尺のドライバーと短尺のミニドライバーを入れて「全米プロゴルフ選手権」を制したフィル・ミケルソン(Blue Sky Photos Blue Sky Photos)

48インチに迫る長尺のドライバーと短尺のミニドライバーを入れて「全米プロゴルフ選手権」を制したフィル・ミケルソン(Blue Sky Photos Blue Sky Photos)

まず、ミケルソンやブライソン・デシャンボーなど、PGAツアーで長尺を試している選手は、通常200グラム程度のヘッドを180グラム前後に落として使用している、ということを踏まえなければならない。

ヘッドの重さがそのままでは、いかにパワーヒッターといえども47インチ以上のドライバーをコントロールすることはできない。長いものを振るには、ヘッドだけでなくシャフトも含めたドライバー全体の軽量化が必須なのである。

ここで、気づかなければいけないクラブ選択のポイントがある。それが長いクラブはトッププレーヤーでも“振りにくい”ということである。長尺にすればヘッドスピードは上がるが、フェースコントロールしにくいし、遠心力に耐える体幹の強さも必要。だから、ミケルソンもデシャンボーも長尺にトライすると同時に肉体改造も行っているわけである。一般ゴルファーの場合は、かえってヘッドスピードが落ちてしまうケースも多いかもしれない。

加えて、長さが変わっていない他のクラブとのバランス関係(つながり)もある。長尺&高慣性モーメントドライバーに合う最新スウィングというのがあるらしいが、個人的には一本だけ異質になってしまった飛ばし専用道具にスウィングを合わせてしまったら、他のクラブを打つときに支障がでないのだろうか?と怖くなってしまう。

ドライバー以外のゴルフクラブは、飛び、飛びとは言いつつも、常に狙った距離を打つための道具であることに変わりはない。実際、ドライバーほど長さ的なものは変化していないし、ヘッドも大型化していない。ニュースウィングは必要ではないのだ。

ミケルソンはロフト11.5度のミニドライバーをキャディバッグに入れているそうだが、これが80年代から続く、他のクラブと同じ感覚で打てる、つながりを考慮した従来ドライバーの代用である。長さとしては43.5インチ程度。現代ではこの長さはほとんどのプレーヤーが入れている3Wと同じである。

80年代のプレーヤーは43.5インチのドライバーで280ヤードを打ってきた。今は43.5インチの3Wで280ヤードを打ってくる。現代プレーヤーは3Wという名の昔ながらの1Wをキャディバッグに入れている、長さを基準にすればそう解釈することができるのだ。

では、80年代にはなかった長さのクラブ。つまり、45インチ以上の現代ドライバーの姿とは何であろうか。個人的には、最大飛距離を追求するために生み出された「特別なクラブ」だと思っている。いわば、セットの流れとは少し異質なユーティリティクラブである。

今でこそ、ボールの浮かないロングアイアンの代わりに開発されたクラブを“ユーティリティクラブ”というが、1950年代中盤までは、バンカー専用やアプローチ専用に生み出された「特別なクラブ」をUTILITY(60年代以降はウェッジ)と呼んでいた。何かの性能に特化したクラブのことを“ユーティリティクラブ”と呼んでいたのだ。

だからこそ、現代の飛ばしに特化したドライバーは、ユーティリティだとした方がスッキリすると思うのだ。ミケルソンも他のプレーヤーも、3W(2W)という名の従来型ドライバーをキャディバッグに入れていて、その上でさらに飛ばし専用ユーティリティドライバーを、特別なクラブとして加え使っているわけである。「これは普通のドライバーではない」、そう思うだけで、道具との向き合い方は変わるだろう。特別なクラブは覚悟をもって使用しなければならないからだ。

長尺? 短尺? ではなく、「自分のちょうどいい長さ」を探そう

ミケルソンやデシャンボーが軽量ヘッドで長尺を試しているように、やるならば、我々一般ゴルファーも長尺に振り回されない“策“を講じなければならない。それはとくに47インチとかではなく、現在一般的な45.5インチ程度でたとえば右プッシュやチーピンを繰り返している場合でも、同じように「長さ」に対応する工夫が必要だということだ。この場合もヘッドを軽くするなどの工夫が必要だと思われる。

「ヘッドを軽くする」。実はこれがもっとも難しいカスタムだ。今なら取り外し可能なウェイトを軽量なものに変える、という手が使えそうだが、本来ウェートは慣性モーメントを大きくするために配置されている必要パーツ。これを軽くするということは、最新ヘッドの妙味を薄めてしまうことを意味する。もちろん、ウェート交換のできないヘッドでは、基本的に重さを削ることは不可能である。

では、どうすれば「長さ」に対応することができるのか? 現状、もっとも効果的なのはクラブを短く使うことだろう。手段としては、下記のことが考えられる。

・短く握って打つ
・短く切って使う
・カウンターバランスにして使う
・硬いシャフトに交換する

なんとなくうまく使えない、振りにくいと思うクラブがあったとき、本能的に短く握って打つことがあると思うが、飛ばし専用ドライバーがうまく打てない場合は、まずは短く握って打ってみていただきたい。短く持つとはカウンターバランスにしているのと同じようなこと。これでうまくいくようであれば、半インチ程度ずつシャフトを切って使うようにしてもいいかもしれない。

クラブの「長さ」というのは、飛び云々の前に、ちゃんとスウィングできるか、ちゃんと当たるかを左右する重要な問題だ。

6月25日に発売されるプロギア「LS」シリーズと「05アイアン」では、長さに関する工夫が見られてとても興味深い。ドライバーは45.75インチと長尺だが、FWは3W(16.5度)と5W(20度)は同じ42.5インチ。UTは#4(23度)も#5(27度)も40インチで統一だ。アイアンは#5、#6が37.5インチ、#8〜PWが36.5インチ、48度、52度、57度が35.5インチという3レングスの設定である。これが対象ゴルファーであるヘッドスピード40m/sのゴルファーが「実際のラウンド」で望む結果を出すために妥当だと考えられたロフトと長さの関係性なのだ。

画像: 写真はプロギア「LS」シリーズのドライバーから5UT。3W・5W、4UT・5UTのクラブ長がそれぞれ統一されており、ウッド類で3レングス設定。同時に発表された「プロギア05アイアン」も5番~57度の全8番手で3レングス設定となっている

写真はプロギア「LS」シリーズのドライバーから5UT。3W・5W、4UT・5UTのクラブ長がそれぞれ統一されており、ウッド類で3レングス設定。同時に発表された「プロギア05アイアン」も5番~57度の全8番手で3レングス設定となっている

従来のように3Wはロフト15度の43.5インチである必要はなく、番手毎に半インチずつ短くなっていく必要もない。これまで長すぎたものは短くするし、アイアンなどもう少し長くできそうなものは逆に長くする。使う人を明確にし、使いやすさとその打球結果によってクラブの長さは変わってもよいものなのだ。

ミケルソンやデシャンボーが何インチであるのかは、この際、関係ないだろう。長尺時代、短尺時代というものも存在しない。長さは時代ではなく、自分に合わせるべきものだからだ。長くするより、短く持って打つほうが試しやすい。まずは、そこから自分にあった「長さ」について興味を深めていってみてはいかがだろうか。短くなってもちゃんと当たったぶん、これまでより飛んでしまう。そんな発見もあるに違いない。

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