ジョン・ラームのメジャー初優勝で幕を閉じた全米オープン。その激闘を「マネジメントの教科書のような試合でした」と語るのは、マネジメントに詳しいアマチュアゴルファーの関東在住匿名5下シングル氏。勝負を決めたマネジメントの機微を緊急寄稿!

全米オープンの18番ホール。優勝したジョン・ラームはグリーンサイドのバンカーからの3打目で、ピン方向を狙いませんでした。

その時点でラームはトップタイ。ルイ・ウーストハイゼンとスコア上は並んでおり、パー5の18番ではバーディが喉から手が出るほど欲しかったはずです。しかし、ピン方向は池に向かって下っている状況から池に入れるリスクをとらず、ピンの右を向いてセーフティに打っていきました。

画像: バンカーからの3打目でピン方向を狙わずに「5」でOKというマネジメントをした結果、勝利を掴んだジョン・ラーム(USGA/Jeff Haynes)

バンカーからの3打目でピン方向を狙わずに「5」でOKというマネジメントをした結果、勝利を掴んだジョン・ラーム(USGA/Jeff Haynes)

「5」でいいというマネジメントで、実際3打目はピンに寄せることができませんでしたが、4打目の距離のあるバーディパットをねじこんで6アンダーでホールアウト。結局、そのまま全米オープンのタイトルをつかみました。

バーディが欲しい場面でピン方向を向かないのは勇気が必要だったはずですが、「5でOK、あわよくば6アンダー」というマネジメントがピタリとハマり、ウイニングショットとなったバーディパットをお膳立てすることに成功しました。

あの場面、多くのアマチュアゴルファーがピンを狙ってしまうんじゃないかと中継を見ながら私は思いました。ピンを狙って、万が一チップインイーグルとなったら優勝は一気に近づきます。他方、ピンを外して狙えばバーディの確率は大幅に下がります。「狙っちゃえ!」と心のなかの悪魔がささやきかけてくる場面ですよね。私を含むアマチュアは、この悪魔のささやきに非常に弱いです(笑)。

でも、我々よりはるかに上手いラームは、この悪魔のささやきを退け、セーフティなプレーを選択し、最高の結果を手に入れました。急がば回れ。損して得とれ。こんな日本のことわざを思い出させてくれるような、見事なマネジメントでした。

対照的だったのは、ロリー・マキロイです。ボールがバンカーのヘリにくっついた状況から強引にピン方向を狙ったショットがミスとなり、そのホールをダブルボギーとし、優勝争いから脱落しました。

また、惜しくも敗れたルイ・ウーストハイゼンのプレーも印象的でした。最終ホールを「勝つにはイーグルが必要」という状況で迎えた彼は、ティショットがラフにつかまると、2打目でレイアップを選択しました。これも冷静なマネジメントだと思いました。勝てはしませんでしたが、それが彼のやり方なのだと思います。彼の最終ホールのスコアは「バーディ」です。

先日の全米女子オープンでは、3日目までティショットを多用していたレキシー・トンプソンが、最終日に突如ドライバーを持って、スコアを崩していました。

決して無理をしない。スコアの状況に左右されず、自分の攻め方、マネジメントを貫ける選手が強い。そんなことを改めて教えてくれた、今回の全米オープンでした。

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