ジョン・ラームのメジャー初優勝で幕を閉じた「全米オープン」。そのラームに惜しくも1打及ばなかったのが南アフリカのルイ・ウーストハイゼンだ。実は海外メジャーでの2位フィニッシュはこれで6度目という“シルバーコレクター”。そんなウーストハイゼンという人物について、海外ツアー取材歴20年の大泉英子がレポート。

ルイ・ウーストハイゼンが、メジャーでまた2位に終わった。先月の「全米プロ」ではフィル・ミケルソンに2打差の2位タイ、そして今回「全米オープン」ではジョン・ラームに1打差の単独2位である。

こんなことを言われても、本人はまったく嬉しくないだろうが、全メジャーで2位の成績を収めている「メジャー2位・グランドスラム達成者」の一人であり、今回のメジャー2位は自身6度目だ。ちなみにこの「2位グランドスラム」を達成している選手は過去8人おり、ジャック・ニクラス、アーノルド・パーマー、トム・ワトソン、グレッグ・ノーマン、フィル・ミケルソン、ダスティン・ジョンソンら錚々たる顔ぶれが並ぶ。

「勝てなかった。また2位だ。フラストレーションが溜まるし、ガッカリしている。いいゴルフをしているのに、メジャーで優勝できない。今日はいいゴルフをしていたが、優勝するにはそれでは足りなかったということだ」

画像: 海外メジャー「全米オープン」を4アンダー2位で終えたルイ・ウーストハイゼン(写真/Getty Images)

海外メジャー「全米オープン」を4アンダー2位で終えたルイ・ウーストハイゼン(写真/Getty Images)

最終日の10番でバーディを取り、2位と2打差の単独首位に立ったが、次の11番ホールでボギー。そして終盤の17番ではティショットを左の崖に打ち込み、バーディが欲しい場面でボギーを叩いた。この時点でホールアウトしていたジョン・ラームとは2打差の2位(4アンダー)だった。

18番のティショットを打つ時点で、ウーストハイゼンがラームとのプレーオフに持ち込むには、イーグルを取らなければならない状況だったが、ピンまで73ヤードの3打目はチップインすることなく終わり、バーディ締めで5アンダーフィニッシュ。ラームとは1打差の2位に終わり、ホールアウト後は悔し涙を見せまいとしてか、キャップで顔を覆った。

「17〜18番はバック9でスコアを伸ばせるホールだと考えていた。特に17番はキーとなるホールで、ティショットをフェアウェイキープし、そこからサンドウェッジでピンを狙って10フィート以内につけ、バーディを狙いたいホールだった。18番もレイアップして、そこからバーディを狙えるホール。だが、17番のティショットは5ヤードひっかけてしまい、右に戻ってこなかったんだ。17番はバーディが狙える大事なホールだとわかっていたのに……」

「ショットの調子がいいと思えば、狙いにいく。そうしないとメジャーでは勝てない。それがうまくいくときもあれば、そうでないときもあるけどね」

ウーストハイゼンは、メジャーになると常に上位にいるイメージの強い選手だが、彼のゴルフの真骨頂はショートゲーム、とくにパッティングのうまさにある。PGAツアーでの平均飛距離は296.9ヤード(104位)、パーオン率は66.15%(58位)だが、ストロークゲインド・パッティングでは1位、平均スコアは4位である。決して飛ばし屋ではないし、アイアンショットの精度が高いわけではないが、「スコアをまとめる力」は他の選手よりも抜きん出ており、とくにメジャーのような難度の高いセッティングになると、実力を発揮するタイプのようだ。彼自身、このことについて次のように語っている。

「恐らく(メジャーのように)タフなセッティングのコースのほうが普段よりも集中できるから、それでプレーもよくなるんじゃないかな?」

普段の試合、つまりPGAツアーやヨーロピアンツアーよりもメジャーのほうがいい成績が出る、と言うのは、技術面よりもメンタル面での要素が大きいようだ。そういう意味ではブルックス・ケプカとスタイルが似ているのかもしれない。

しかしそれにしても、2010年にセント・アンドリュースで開催された「全英オープン」で華々しく優勝して以来、世界の舞台で活躍し、「プレジデンツカップ」の常連でもある彼にしては、米国でのPGAツアー優勝は皆無。ヨーロピアンツアーでも、さほど大きな試合で勝っていない(ほとんどが母国アフリカでの試合)というのは、世界のゴルフの七不思議の一つと言ってもいいくらいだ。

世界のトッププロたちからも「スウィングがきれい」、「リズムがいつも一定で素晴らしい」と、彼のスウィングに対して高評価を得ているウーストハイゼン。過去、南アフリカ勢で「全米オープン」に優勝したのは、ゲーリー・プレーヤー、アーニー・エルス、レティーフ・グーセンの3人がいるが、4人目の「全米オープン」チャンピオンの座はお預けとなった。

前述した通り、メジャーで2位は6回目だが、上には上がおり、ジャック・ニクラスは12回、フィル・ミケルソンは11回をマークしている。その他、アーノルド・パーマー9回、サム・スニード8回、タイガー・ウッズ、トム・ワトソン、グレッグ・ノーマンらは7回だ。

ウーストハイゼンと同じく6回をマークしている選手には、南アの大先輩ゲーリー・プレーヤー、アーニー・エルスのほか、ベン・ホーガン、バイロン・ネルソン、ハリー・バードンとレジェンドばかり。ウーストハイゼンのツアー優勝回数を考えると、不思議なくらいメジャーでの好成績が光る。

以前、二クラスが「メジャー優勝は18回だが、2〜3位はその倍だ。それくらい2位以下を積み重ねないと勝てないんだよ」と語っていたのを思い出すが、その言葉を心のよりどころとしたい選手は、ウーストハイゼンかもしれない。

今季のメジャーは残すところあと1試合。ロイヤル・セントジョージズで開催される「全英オープン」で、“メジャー万年2位”の称号を取り払うことができるか。

This article is a sponsored article by
''.