こんにちは、ギアオタク店長の小倉です。私は日々お客様のクラブ選びのお手伝いをさせていただいておりますが、そのやりとりのなかでよくこんな質問をします。「お客様の考える理想のクラブってどんな性能のクラブですか？」と。
冗談交じりに質問すれば多くの方は飛んで曲がらないクラブ！ とお答えになりますが、真剣に自分に合ったクラブを探しているなかでこの質問をぶつけると、意外と口ごもってしまう方が多いです。
当店にフィッティングやクラブの相談に来られる方は、ある程度の期間ゴルフを楽しみつつ苦しめられてきた方が多く、そういった方々は飛距離と方向性を両立することがいかに難しいかというのを肌で感じているからでしょう。そういった方には「良いスウィングをしたときに良い弾道が出るクラブが欲しいのか？ それともミスしたときにミスを軽減してくれるクラブが欲しいのか？」という質問をするようにしています。
最近は、打点のズレによって発生するエネルギーロスやサイドスピンを軽減するモデルが人気です。いわゆるミスに強いモデルです。とくにドライバーはその傾向が強いですね。そういった仕様のモデルは、多少打点がズレても芯で打ったときと飛距離や曲がり幅がほとんど変わらない、安定した結果を得られやすく設計されています。いまや世界のツアープロですら操作性よりも曲がりの少ないクラブを好むのですから、この流れは必然でしょう。
そういうクラブを私はミスを前提に作られたクラブだと表現しています。あらかじめ打点のズレによっておこる弾道の変化を研究し、その変化をできるだけ起こさないように設計しているのですから、そう表現してもさほど的外れではないと思っています。
テーラーメイド「SIM2」は操作性の高いSIM2（左）、ある程度やさしいSIMマックス（中）、寛容性に特化したSIM2マックスD（右）とモデルごとに性格付けがされているが、いずれも根底に“ミスへの強さ”があると小倉氏
そのようなモデルは総じて操作性は低くなります。曲がりの原因となるサイドスピンをできるだけ軽減するように設計しているのですから、故意に曲げようとしても曲がらなくなるのは当然です。振り味もヘッドの直進性が高まるためインパクト付近でゆったりとターンするヘッド挙動になります。
最近の大手メーカーのモデルは、ほとんどがこのミスを前提に作られたクラブです。テーラーメイドの「SIM2」シリーズやピン「G425」シリーズをはじめ兄弟モデルを複数ラインナップし、なかには操作性に振ったモデルもありますが、全体の傾向としてはやはりミスを前提に作られたモデルと言えるでしょう。
そういったモデルに対し、操作性を重視して設計されたモデルを、芯で打ちやすいクラブと表現しています。弾道を操作するには、ミスを前提に作られたモデルではミスのもととして扱われているサイドスピンを含むスピン全体をコントロールする必要があります。そのため、最低限必要なサイドスピンが掛かりやすい設計になっており、インパクトで意図する動きに対して素直に動いてくれるヘッド特性を重視した設計になっています。
この芯で打ちやすいクラブは、いわゆるカスタムクラブメーカーのモデルが多いですね。マスダゴルフの「FBL」、キャスコの「バティック タイプA」などが該当します。大手メーカーのなかで強いて言うならブリヂストンの「ツアーB X」でしょうか。ミスへの強さが根底にはありますが、比較的操作性もあると感じます。
操作性を重視したドライバーはキャスコ「バティック タイプA」（左）、マスダゴルフ「FBL」（中）といったカスタムクラブに多いと小倉氏。ブリヂストン「ツアーB X」（右）も該当するという
ミスを前提に作られたクラブは、初心者やエンジョイゴルファーが楽しくプレーするのに向いています。ゴルフはミスのスポーツですから、大なり小なりミスはするもの。そんななかでできるだけ良い結果を出してプレーを楽しみたいと考えるゴルファーにはまさに理想のクラブと言えるでしょう。
対する後者は、上達志向の強い方や弾道を細かくコントロールしたい方に向いています。自分が正しいスウィングをしたときに初めて良い弾道が打てるためスウィングの技術が身に付きやすく、技術のある方ほど思い通りの弾道が打ちやすくなります。
スコアだけを追求するなら腕前に関係なくミスを前提に作られたクラブでも良いでしょう。ただ一発一発の気持ち良さや自身の最大飛距離、イメージ通りの弾道などを追求していくのであれば、芯に当てやすいクラブのほうが断然おすすめです。ゴルフの楽しみ方は十人十色。みなさんの考える理想のゴルフに合わせたクラブを見つけ出せればもっとゴルフを楽しめるはずです！
