2021年に入って5勝を挙げている稲見萌寧と、初優勝からの2連勝という快挙を達成した木下稜介には共通点がある。それは、同じコーチに師事しているという点だ。今もっとも旬なコーチのひとり、奥嶋誠昭に話を聞いた。

稲見と木下で教え方はまったく異なる

稲見が5勝、木下が初優勝から2連勝。もちろん、二人とももともとの実力があったのは間違いがないが、今年に入っての活躍は刮目すべきものがある。そして、二人の躍進の背景にはまったく異なる指導がある。

画像: 中京テレビ・ブリヂストンレディスで2位に6打差をつけ優勝を果たした奥嶋誠昭コーチ(左)と稲見萌寧(右)(2021年の中京テレビ・ブリヂストンレディス 写真/岡沢裕行)

中京テレビ・ブリヂストンレディスで2位に6打差をつけ優勝を果たした奥嶋誠昭コーチ(左)と稲見萌寧(右)(2021年の中京テレビ・ブリヂストンレディス 写真/岡沢裕行)

「稲見に関しては元々ショット力が高く、とくに距離感に関しては“絶対距離感”と呼ぶべきものがあります。なので、(今季の活躍の要因の)一番はパッティングの向上です。パッティングの練習時間の割合を増やしたこと、パターを変えたこともハマりました。一方、木下に関しては大きくスウィングを改造しました。インパクトに向けて強くリリースするような打ち方をしていましたので、コーナーリリースといって“丸く”リリースするように変えていきました。そうしたことで体の力も使えるようになり飛距離も伸びましたし、コントロールも向上しました」

稲見は微調整。木下は大きくスウィング改造と、まったく異なるアプローチをとり、ともに成果を出したところが奥嶋の真骨頂。いわゆる選手を「型にハメる」ような指導を行わないその指導ポリシーを奥嶋は「金太郎飴にしない」と表現する。

画像: 初優勝から2試合連続で優勝を遂げた木下稜介(左)と奥嶋誠昭コーチ(写真は2021年のダンロップ・スリクソン福島オープン 写真/有原裕晶)

初優勝から2試合連続で優勝を遂げた木下稜介(左)と奥嶋誠昭コーチ(写真は2021年のダンロップ・スリクソン福島オープン 写真/有原裕晶)

「金太郎飴のように、どこを切っても同じというようにはせず、型にハメないようにしています。コーチをしていると、勉強して自分でたどりついた理論が最強だと思って、つい型にハメたくなるのですが、スウィングは人それぞれ違いますのでその人に合ったものを提供することが大事だと思っています」

とはいえ、それは言うほど簡単なことではない。それを可能にしているのは、奥嶋がその使用を得意技とする最新のスウィング解析機の存在にある。とくに「ギアーズ(3Dモーションキャプチャー)の存在は大きかった」と奥嶋は言う。スウィング中の体とクラブの動きを解析する機器で、これを用いることで感覚ではなく数値でスウィングを説明することが可能になる。

「ギアーズを扱うためにスウィングのことを深く勉強するようになりましたね。最初の2年半くらいは渡米したりもして、必死に勉強しました。スウィングの根本的なこと、クラブと体の動きの関係性を理解できれば、その人に合わせた改善点が見えるようになると思ったのでそこに焦点を当てていました」

もちろん最新機器だけを頼りにするのではなく、選手の感覚も奥嶋は尊重する。

「自分が指導する選手には現状の分析や、目指す方向性を確認するためにもギアーズをやってもらっています。その後は本当に困ったときだけ使いますが、選手は感覚が強いので頭でっかちにさせるのではなく、本人の『気持ち悪さ』を聞きながら選手が気持ちよく振れるようにしていくことが大事だと今でも学んでいます」

最新機器が示すデータとプロの感覚をすり合わせる……それが奥嶋のコーチング。間近に迫った東京オリンピックでは稲見萌寧のキャディとして金メダルを目指すという奥嶋。今季波に乗る師弟の大舞台での活躍を、大いに期待したい。

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