今年から用具契約をキャロウェイに変更したジョン・ラームが、全米オープンを制すなど活躍を遂げている。プロにとって契約変更はリスクがつきものだとよく言われるが、最近は変更を機に良くなった選手も多くいるようだ。プロたちのクラブ契約変更事情を、ゴルフトレンドウォッチャー・コヤマカズヒロが解説。

全米オープンで優勝したジョン・ラームは、今年がキャロウェイとのギア契約初年度であったことが特筆される。ご存知のように、昨年、はじめて世界ランキング1位になったラームは、今年初頭にプロ入り直後から愛用していたテーラーメイドから、キャロウェイに契約変更した。

ツアープロのギア変更には、リスクがつきものだ。古くはペイン・スチュワートが、ボールとクラブを同時に変更したことが理由でスランプに陥った。ボールとクラブを両方変えてしまうと、思ったような結果にならないときに、ボールの問題なのか、クラブの問題なのかがわからないのだ。

ナイキがクラブ・ボール事業から撤退した後、タイガー・ウッズはまずボールから決定し、それからクラブ選びを開始したエピソードは有名だ。タイガーはまず信頼できるボールを決めることで、安心してクラブ選びに移行出来たわけだ。

画像: 契約変更後に全米オープンで勝利を掴むなど活躍しているジョン・ラーム(写真はザ・プレーヤーズチャンピオンシップ)

契約変更後に全米オープンで勝利を掴むなど活躍しているジョン・ラーム(写真はザ・プレーヤーズチャンピオンシップ)

その点では、ラームは極めて上手くスイッチした。ある種タブーとも言えるボールとクラブの同時変更をあっさりと成功させ、何の問題もなく今期も好調をキープ。初メジャーとなる全米オープンのタイトルも獲得した。これは今後、クラブ契約の変更自体がポジティブに捉えられるような大きな出来事になるだろう。

テーラーメイドからキャロウェイへの変更ということでは、セルヒオ・ガルシアが思い出される。長年愛用していたテーラーメイドとの契約を終了し、2018年にキャロウェイと契約した。そしてテーラーメイド時代もそうであったように、ボールに加えて、上から下まで14本のクラブをキャロウェイに変更した。

ガルシアは成績がそれほど悪くなったわけではないが、ボールのフィーリングがもうひとつ合わなかったとコメントしている。2020年からは契約フリーに。そして今年はテーラーメイドと再契約を交わした。ガルシア同様にテーラーメイドを離れ2019年に本間ゴルフと契約したジャスティン・ローズも、(おそらく何かクラブ以外の事情も加わって)2020年に契約を解消している。

もっとも、クラブ契約を変更して、良くなった選手が最近は多い。かつてのナイキ契約選手たち、ブルックス・ケプカやパトリック・リード、トミー・フリートウッドらはそれぞれに好みのクラブを選択し、選手として大きな飛躍を遂げた。ボールをブリヂストン、クラブをテーラーメイドと決めたタイガーは、2019年に復活のマスターズ優勝を果たした。国内だと、ピンと契約した比嘉真美子。ヤマハと契約した有村智恵が思い浮かぶ。ともに深刻な不振の後に復活優勝を遂げた選手だ。

ツアープロは、自分の技術やイメージに合うギアが選べないことで大きなリスクを抱えている。昨今では、クラブ契約をあえてフリーにする選手も増えてきた。しかし、弾道調整機能が発達し、様々なシャフトやヘッドを選ぶことが出来、計測器を用いたフィッティング方法が発達した現在、昔ほどクラブ変更のリスクは少ないのかもしれない。それを証明したラームのメジャー勝利だった。

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