東京オリンピックでは女子ゴルフでの稲見萌寧の銀メダルをはじめ、計58個のメダルを獲得した日本代表。オリンピックに限らず「極限のプレッシャーがかかる状態でパフォーマンスを十全に発揮するためには、不安を吐き出すことが大事です」というのは、プロも教えるメンタルコーチ・池努。詳しく話を聞いてみよう。

東京オリンピックのメダルラッシュでテレビやインターネット中継が大いに盛り上がりましたね。ちなみに私も今回のオリンピックに出場した選手数名を個人契約サポートしていましたので熱狂し応援しました。今回は少しゴルフから話題が外れますが「オリンピックに学ぶメンタル」というテーマでお話したいと思います。

日本チームも各競技で沢山のメダルを獲得しましたが、その陰で本来のパフォーマンスを出せずに今回のオリンピックが終了していく選手も当然います。オリンピックのような特別な大会でパフォーマンスを発揮する選手とそうでない選手のメンタリティの部分での違いはなんだと思いますか?

画像: 東京オリンピック女子ゴルフで銀メダルを獲得した稲見萌寧のように、極限のプレッシャー下でもパフォーマンスを発揮するにはどうすれば良い?

東京オリンピック女子ゴルフで銀メダルを獲得した稲見萌寧のように、極限のプレッシャー下でもパフォーマンスを発揮するにはどうすれば良い?

もちろん、心技体のほか、様々な条件が重なり当日のパフォーマンス発揮につながるため一概に「これだ」と言えるものはありません。ただし、メンタルコーチとして気になるのは各々選手が「力を発揮できる心の状態にアプローチしていたかどうか」です。

当然、技術面やフィジカル面は最高の状態に仕上げるべく調整していきます。しかし、メンタル面のアプローチは本当に未着手な部分だと今回の大会の選手のコメントを分析して痛感しています。

たとえば、金メダル候補として大きな期待を寄せられていたある選手は「負けたくない、勝ちたいという気持ちが強すぎて空回りしてしまった」というコメントを残しています。つまり、勝ちたいという結果目標への意識が強くなると同時に負けたくないという回避思考が他の世界大会の時より大きくなりプレッシャーを増幅してしまったということです。

プレッシャーがかかればそれが生理的な反応として筋肉の硬直や冷静な判断力の欠如に影響してしまいます。パフォーマンス低下に影響するほどのプレッシャーを感じており、それを試合前に排除できていなかったことはコメントからも想像できるものです。

たとえばこの場合どんな対処をしておくべきだったのか? とてもシンプルですが「不安やプレッシャーを吐き出しておくこと」がとても重要です。

シカゴ大学心理学者シアン・バイロック教授が行った実験で大事な試験前に不安を紙に書き出すという行為が緊張が和らげる効果があったことを証明しています。紙に心配事や不安などを書き出すことで自分の思考にあった不安な考えが外へアウトプットされることで心配事への無意識の思考が減ることが確認されているのです。

実はこれは紙に書き出すだけでなく、誰かに心配事を話し、打ち明けること、いわゆるカタルシス効果でも同等の効果が見込めます。みなさんも仕事関係で不安やストレスが多くなったときは誰かに「実は今△△で悩んでいてさ~。」「今仕事が〇〇できついんだよね~。」と打ち明けることで気が楽になった経験があるはずです。このように私は今大会に出場していたとあるサポート選手と大会中もzoomやメールを使い、選手の不安やプレッシャーを軽減させることを中心にサポートし、結果その選手はメダリストになりました。

もちろん、メンタルサポートは上記以外にも多くの関わりがありますが、実は上記のように不安やプレッシャーを吐き出しておくだけでもパフォーマンスを発揮するにふさわしいメンタリティに近づくのです。

そして、不安や心配事への思考を減らした後に重要なことが目の前の試合での「行動目標」を設定しておくことです。つまり、「次の試合でどんなプレーをしたいのか? どんなチャレンジをしたいのか? 何にこだわり、やりきりたいのか?」。このような質問を選手に問いかけることで選手は自分がパフォーマンスを発揮するイメージを描き、試合前・試合中も無意識的に行動目標に集中しやすい状態にアプローチするのです。

不安を排除し集中したいことへ注意を向ける。一見当たり前のような言葉ですが競技ゴルファーやスコアにこだわりだしたゴルファーなど結果を求めれば求めるほど不安やプレッシャーも大きくなる傾向にあります。自分にも少し該当するという方は今回の内容を活かして頂ければ幸いです。

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