ウェッジのソールのふくらみ「バウンス」。これがあることでどんなメリットがあるのか。そもそも本当に必要なのか? ウェッジのバウンスとの付き合い方をギアライター・高梨祥明が改めて考えた。

なんのために“ウェッジ“は生まれたのか? その基本をおさらいしてみよう

バンカーショットでヘッドが砂に潜りすぎないように、ソールに丸みをつけて接地抵抗を大きくしたのが、いわゆるサンドウェッジの起源である。1933年にジーン・サラゼンがバンカー用のスペシャルクラブとしてこれを考案した頃は、“サンドアイアン“と名付けられていた。

画像: 1933年にジーン・サラゼンという名プレーヤーが「サンドアイアン」を発明。カーブの強いソールで地面の抵抗を増した特別なクラブだった

1933年にジーン・サラゼンという名プレーヤーが「サンドアイアン」を発明。カーブの強いソールで地面の抵抗を増した特別なクラブだった

当初はソールセンターのアール(丸み)が強い、“ラジアス”という幅広で丸いソール形状がサンドウェッジの代名詞だったが、70年代以降は明確にバウンス角という測定基準が加わっていく。ソールのフェース側(リーディングエッジ)とバックフェース側(トレーリングエッジ)が成す角度を測り、バックフェース側が高いほどいわゆるハイバウンスのウェッジとなる。バウンス角が大きいほど、接地抵抗が大きく地面に潜りにくいため、ウェッジらしい性格となるといっていい。

単にロフトの大きいアイアンでは地面や砂に潜って(刺さって)しまうから、ソールに抵抗(バウンス)をつけて潜らないようにした特別なクラブが「ウェッジ」というわけである。この成り立ちを踏まえておくことが、ウェッジ選びで失敗しない第一ポイントとなる。バウンスが小さければそれはアイアンの一部。10番アイアン、11番アイアンになってしまうとイメージしたい。

地中に潜る! から、前に進む! に。ヘッドの軌道を変えるガイド役がバウンス

バンカーやラフなど、アイアンでは厳しい条件の中でもなんとか脱出できるのは、もちろんソール(バウンス)が機能しているからである。ではなぜ、悪い条件の中でウェッジだとうまくボールを拾って行けるのか? ここが踏まえておきたい第二ポイントだ。

ソールに付けられた角度、「抵抗」という言葉を聞くと、地面で「跳ねそう!」とイメージを持ちがちだが、実際はバウンスが地面に当たってV字に跳ねてしまうようなことにはならない。それが起こるのはコンクリートのようなヘッドが潜りようもない地面に、しかも垂直に近い角度でソールの面を叩きつけた場合のみだ。柔らかい土、砂の上、ウェッジショットの入射角度では「跳ねる!」という心配はまずないのである。

では、バウンスによってヘッドは「跳ねる!」のではなく、どうなるのだろう? 違う言葉をいくつか示してみる。

・バウンスによって地面方向に潜ろうとしていたヘッドが、振り抜き方向に軌道を「変える」。
・バウンスが最初に地面に当たることでヘッドが「水平に進む」。
・バウンスが最初に地面に当たることでソールが芝の上を「滑ってくれる」。

要は、バウンス効果とは、ソールが地面に跳ねてV字軌道になることではなく、インパクトエリアでヘッドが水平に動きU字型軌道になること。ヘッドをインパクトエリアで水平に動かし、ボールを正面からとらえやすくするサポート機能ということである。シャフトが短く、アップライトなウェッジでは、バウンスによって地面に刺さる方向から振り抜く方向に軌道を“変換”することが成功の鍵。バウンスは、ヘッドの進む方向を決める「ガイド役」となるのだ。

ローバウンスを好む人こそ、バウンスを活かしてゴルフをしている

世の中には“ローバウンス”と呼ばれるウェッジもあるが、これはバウンスが要らない人のための選択肢ではない。ローバウンスを好む上級者は“フェースを開く”アプローチをするが、このフェースを開く目的は単にロフトを大きくして打ち出しを高くするだけではない。フェースを開くとは、“バウンスを増やす”ことと同義。踏まえておきたい第三のポイントがこれである。

画像: ボーケイ・デザインウェッジの登場で、プレースタイルによるバウンス効果の選択肢が一気に広がった。フェースを開くか、開かないかが大きなプレースタイルの違いになる。フェースを開かなければ、バウンスは多い方がよい

ボーケイ・デザインウェッジの登場で、プレースタイルによるバウンス効果の選択肢が一気に広がった。フェースを開くか、開かないかが大きなプレースタイルの違いになる。フェースを開かなければ、バウンスは多い方がよい

フェースを開いて構えると、トレーリングエッジが地面方向にせり出してくる。つまり、上手い人たちはバウンスが必要なときに、自分でバウンスを「増やして」難しいライに対応しているわけである。つまり、ローバウンスを好むゴルファーは、人一倍バウンス効果を理解している人であり、自分でその効き具合を調整することでアプローチを成功させているのである。世の中にバウンスを必要としていないゴルファーなど、一人もいないということだ。バウンスが跳ねる! と思うとどんどん地面に触れなくなる。刺さらないように打とうとしても結果は同じ。待っているのはチャックリやハーフトップである。

アプローチを成功させるためには、ヘッドが地面に潜ってもいいくらいの気持ちで、しっかりとソールをコンタクトさせることが大事だといわれる。ウェッジが短く、アップライトなクラブである以上、鋭角なダウンスウィング軌道になってしまうのは避けられないが、だからこそ、ウェッジには特別にバウンスが付けられているのだ。ヘッドを気持ちよく振り抜きたい方向に導いてくれる「ガイド役」がバウンス。頼らないでアプローチを成功させるのは至難の技だと心得たい。

撮影/高梨祥明

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