史上最高のボールストライカーとの呼び声も高いベン・ホーガン。当時と今とではクラブの性能も大きく異なるが、そのスウィングはアマチュアの参考になるポイントだらけ!? プロゴルファー・吉田一尊に解説してもらおう。

手首の使い方以外はすべて参考にしても良い

ベン・ホーガンのスウィングは過去から現代まで含めてもナンバー1と言われるくらい、美しいスウィングの持ち主の一人としても知られていますよね。

そのスウィングは、初期の頃の身体能力をフルに使った野性味あふれるスウィングと、その初期のスウィングの問題点を修正しつつ、1949年に起きた事故で負ったケガの影響もあって変化した最終形のスウィングの大きく2種類がありますが、今回は初期のスウィングをピックアップしてお話したいと思います。

まず初めに結論を言っておくと、ホーガンの初期のスウィングは現代でもまったく遜色のない、振る速度を上げる要素を満載にしたスウィングです。

前述した初期のスウィングの問題点は、パワフルに振り過ぎて球をコントロールできず引っかけのミスが多かったことにあるのですが、これは当時のドライバーがパーシモンヘッドかつスチールシャフトだったから。クラブ長も短いですし、スチールといっても今のモノより柔らかかったんですよね。

この当時のパーシモンドライバーと今より性能が低いバラタボールで300ヤード以上飛ばしていた、なんて話も聞きますから、もしホーガンが最新のドライバーを使っていれば、初期のスウィングの飛距離のまま方向性も向上し、もっとスゴイ選手になっていた可能性も十分あります。

ではスウィングを見ていきましょう。まずアドレスを見ると、左足に軸を取って上半身は少し右に傾けています。体の回転や体重移動もしやすい形を作っています。

画像: 左足軸で構え、手ではなく体の回転でクラブを上げていく

左足軸で構え、手ではなく体の回転でクラブを上げていく

テークバックでのシャフトのしなり具合から、ヘッドを置き去りにするように体の回転で上げていることがわかります。胸の向く方向とヘッドの位置もそろっていて、両肩と手元で作られる三角形の形がキープできていますね。ここがズレてしまうと切り返しのタイミングも安定しないので重要なポイントです。

ハーフウェイバックを見ると、テークバックの反動でシャフトが逆側にしなっています。これは当時のクラブがしなりやすいというのもありますが、ホーガンのようにしなりを上手く活かして振ることは大切です。シャフトは固い棒ではなく、ひもに近いイメージを持つと良いですね。

画像: ヘッドを置き去りにするようにテークバックしたことで、ハーフウェイバックでシャフトのしなり戻りが起こっている

ヘッドを置き去りにするようにテークバックしたことで、ハーフウェイバックでシャフトのしなり戻りが起こっている

骨盤と胸の向きが一致する、ねじり上げるというよりは上半身と下半身が一体になって回すイメージでクラブを上げていき、トップはかなりオーバースウィング気味。また、トップに上がった時点で骨盤を左サイドへスライドするような動きが入り、切り返しがすでに始まっていますね。

ここまで深く上げられるのはホーガン自身の柔軟性のおかげもあるでしょうから誰もがマネできるわけではないですが、体が固くてバックスウィングを深く上げられない方に参考にしてほしいのが、左足の動きです。

画像: 左がトップ直前、右がトップ位置の写真。右足外側を浮かせて左ひざを内側へ動かし骨盤をより回せるようにすることでクラブを深く上げられる。トップにクラブが届く前に骨盤は左サイドにスライド。切り返す準備ができている

左がトップ直前、右がトップ位置の写真。右足外側を浮かせて左ひざを内側へ動かし骨盤をより回せるようにすることでクラブを深く上げられる。トップにクラブが届く前に骨盤は左サイドにスライド。切り返す準備ができている

注目して見ると、左足の外側が浮いていますよね。これはヒールアップしているわけではなくて、骨盤をより回しやすくするために左ひざを内側へ向かせるための動きなんです。

そしてダウンスウィングも完璧。肩のラインは右側を向いていますが、お腹と腰は真正面でそろっています。上半身と下半身のねん転差を作るときにお腹をねじってしまうと体幹がゆるんでスウィングが安定しなくなってしまいますが、ホーガンは胸から上だけをねじることでラグを作り、肩甲骨周り、広背筋や大胸筋など上半身の強い筋肉を引き延ばして、反動でグッと縮む動きで出力を上げています。

画像: 手首が背屈し大きなタメが作られているが、これは昔のクラブだからこそ。現代のアマチュアがマネしてはいけないポイントだという

手首が背屈し大きなタメが作られているが、これは昔のクラブだからこそ。現代のアマチュアがマネしてはいけないポイントだという

トップ・切り返しで内側に寄った左ひざは踏み込んだ瞬間外側に開くのですが、そのときに左ひざと左足つま先の向きがそろっているんです。この2つの向きがズレていると上手く出力できず、このあとの左ひざを伸ばす動き、今でいう地面反力も活かせなくなってしまうので大切なポイントです。

ダウンスウィングでのタメも強烈ですが、ここは逆にマネしてはいけないポイントですね。というのもここまでタメができているのはホーガンが左手首が手の甲側に曲がる、背屈という動きを取り入れているからです。

しかし、これは昔のクラブが短くてつかまりやすいからこその動き。今のクラブで同じことをしてしまうとフェースが開いて右に曲がる原因になってしまうので、ホーガンと真逆の手のひら側へ曲げる、掌屈の動きをしながらクラブを下ろすのが良いでしょう。

インパクトからフォローではダウンスウィングでグッと踏み込んだ左足がしっかり伸び、上半身は右に屈曲した状態。腕が伸びながら、インパクトでは掌屈しています。これも現代の名選手に共通するポイントですが、インパクトからフォローでは左足つま先が浮き、かかと軸での回転になっていますね。

画像: インパクトで左足が伸び上がっていることから地面反力を活かしたスウィングであることがうかがえる。左足に軸を取りつつも、上半身は若干右サイドへ残すことでアッパー軌道で振り抜ける

インパクトで左足が伸び上がっていることから地面反力を活かしたスウィングであることがうかがえる。左足に軸を取りつつも、上半身は若干右サイドへ残すことでアッパー軌道で振り抜ける

フィニッシュの形も左かかと軸で、左サイドがしっかり伸びて骨盤が左足に乗り、上半身は少し後ろに反っています。全力で体を左サイドへ乗せていくのではなく、少し右サイドに残したままアッパー軌道で振っていく、今風な振り方です。

正直、手首の使い方以外はすべて完コピしてオッケーというくらい、悪いところがない完璧なスウィングです。まったく同じ動きができるかどうか、というのは別にしても、ホーガンのスウィングを参考にすれば上達につながるのは間違いないでしょう。

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