選手間の投票で選ばれる2020-21シーズンの年間最優秀選手賞=プレーヤー・オブ・ザ・イヤーにパトリック・カントレーが輝いた。ポーカーフェースを貫く冷静なプレーでシーズン最多の4勝を挙げ年間王者のタイトルを獲得した“パティアイス”ことカントレーの知られざる物語。

シーズン終盤のプレーオフシリーズで2連勝を挙げたインパクトが強かったのか、ライバル候補のジョン・ラームやブライソン・デシャンボーを退けキャントレーがプレーヤー・オブ・ザ・イヤーの栄誉に輝いた。

決して派手な選手ではない。喜怒哀楽を表に出さないプレーぶりが逆に凄みを感じさせるタイプである。BMW選手権のデシャンボーとの6ホールに及ぶプレーオフを制したときも勝負どころで決めまくったクラッチパットが相手を追い詰め劣勢を跳ね返して優勝を飾った。

劣勢を跳ね返す。それはまさにカントレーの生き様そのものだ。

カリフォルニアに生まれた彼は3歳でクラブを握るとジュニア時代から頭角を表しアマチュア時代はアマ世界ランクで55週トップに就き、名門UCLA在学中に全米オープンとマスターズでローアマに輝くなど1歳下のジョーダン・スピースやジャスティン・トーマスらと並び将来を嘱望される存在だった。

画像: ツアーメンバーによる投票の結果プレーヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いたパトリック・カントレー(写真は2019年のシュライナーズホスピタル 撮影/姉崎正)

ツアーメンバーによる投票の結果プレーヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いたパトリック・カントレー(写真は2019年のシュライナーズホスピタル 撮影/姉崎正)

約束された未来への希望を胸にプロに転向したのが2012年。しかしスピースが華々しく活躍するなかカントレーはデビュー翌年に背骨の疲労骨折に見舞われほぼ3年試合に出られない日々を送った。

「大好きなゴルフができないストレスは計り知れなかった」という彼を支えたのが高校の同級生でプロ入り後はキャディを勤めてくれた親友クリス・ロスさん。だが2016年予想もできなかった悲劇が起きる。

年中暖かいカリフォルニアでも肌寒い2月の早朝。地元ニューポートビーチのレストランで朝食をとるため道を横断したそのときだった。少し前を歩いていたロスさんがカントレーの目の前で車に撥ねられたのだ。ひき逃げだった。

救急車が到着するまでカントレーは意識のない親友を抱き続けた。鮮血で両手が真っ赤に染まった。病院に搬送されたが意識が戻ることなくロスさんは24歳の短い生涯を閉じた。

もし自分があのとき前を歩いていたら? もし渡るのがほんの数秒遅かったら? カントレーは答えのない自問自答を繰り返した。

「100万分の1の確率で事故は起きた。あのタイミングであの場所にいた不運。彼の死を乗り越えようと努力して少しはそれができているけれど、きっと生涯この傷は癒えることはない」

目の前で見たシーンがフラッシュバックし無気力感に襲われた。乗り越えるには時間がかかった。それでも前を向き練習に打ち込んだ彼は本来の実力を取り戻し2018年のシュライナーズ・ホスピタルで初優勝。翌2019年のメモリアルトーナメントでビッグタイトルを獲得すると2020-21シーズンはツアー最多の4勝を挙げ、ライバルたちが認めるプレーヤーズ・オブ・ザ・イヤーに輝いた。

賞金ゼロ、名誉と威信のみを懸けて男たちが熱い戦いを繰り広げる欧米チーム対抗戦ライダーカップ(来週開催)に米国代表として挑むカントレー。そこでも不屈の闘志を見せてくれるに違いない。

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