“ゴルフの帝王”の異名で知られる往年の名選手、ジャック・ニクラス。そのスウィングから現代のアマチュアの参考になるポイントを、プロゴルファー・吉田一尊に教えてもらおう。

ジャック・ニクラスはPGAツアーで通算73勝、うち海外メジャーを18度も制しています。1966年には男子ゴルフ史上4人目のキャリアグランドスラムを達成していますね。今回はニクラスが初めてグランドスラムを達成した時期のスウィングをベースにお話ししていきたいと思います。

アドレスを見てみると、まず左足軸で構えていることが見て取れます(画像A)。左わきもしっかり締められており、まるでアイアンのような構えですね。

画像: 画像A:左足軸で構え、体の手先を使わず体の回転で上げていく。手元は掌屈しておりフェースがシャットな状態になっている

画像A:左足軸で構え、体の手先を使わず体の回転で上げていく。手元は掌屈しておりフェースがシャットな状態になっている

テークバックでも左足軸をキープしたまま右にシフトはしていきません。手先で上げず体の回転でクラブを上がっていき、ヘッドが置き去りにされるような形のテークバックは現代の選手にも共通する点ですね。また、当時のヘッドは今と比べてかなり小ぶりですが、手首は掌屈させてシャットに上げています。手首の使い方はかなり今風ですね。

そしてアマチュアの方が参考にしていただきたいのが、切り返しの瞬間の体の使い方。ニクラスはヒールアップしながらクラブを上げていくのですが、トップの位置に手元が達する直前には左足が踏み込まれていることがわかります。

トップに手元が上がり切る前に切り返されることで、より強い上半身と下半身の引っ張り合いが生まれて飛距離アップにつながるわけです。この切り返しのタイミングはぜひアマチュアの方に参考にしていただきたい部分です。

画像: 手元がトップに到達する直前に左足の踏み込み、つまり切り返しが始まっていることがわかる

手元がトップに到達する直前に左足の踏み込み、つまり切り返しが始まっていることがわかる

切り返しのタイミングをつかむために、ニクラスのようにヒールアップしてみるのも良いかもしれません。左足を踏み込む=切り返し始めがより分かりやすくなりますよ。

また、地面に足が着いた状態だとどうしてもグッと力を籠めて踏み込んでしまいがちですが、これは実はあまり良くない動き。これが、ヒールアップしておけば正しい踏み込み方=過度に力が入り過ぎずストンと下へ向けて落ちるイメージが自然とできるので練習でやってみると良いでしょう。

そしてニクラスのスウィングのなかでも一際特徴的なのが、ダウンスウィングからインパクトまでの体の使い方です。ダウンスウィングでも重心は左に寄せていますが、ハーフウェイダウン辺りから上半身が右サイドへ傾いていき屈曲しながらインパクトするんです。かなり独特ですよね。

画像: 左足軸をキープしながらダウンスウィングしていき、ハーフウェイダウン辺りから上半身が右サイドに傾いていくのが特徴的。地面反力も取り入れているが、現代の選手のように左ひざが伸びきるまで蹴り上げてはいない

左足軸をキープしながらダウンスウィングしていき、ハーフウェイダウン辺りから上半身が右サイドに傾いていくのが特徴的。地面反力も取り入れているが、現代の選手のように左ひざが伸びきるまで蹴り上げてはいない

理由は推測になりますが、クラブのしなり戻りを抑えるために左サイドにいる時間を多くしてボールを上から潰すような動きで飛ばそうとしていたのだと思います。これは当時の軟らかいシャフトに合わせた打ち方なので、もちろんマネする必要はありません。

その動きに合わせて踏み込まれた左足も蹴り上げて地面反力を活かしているのですが、現代の選手ほど左ひざを伸ばしきる感じではなく、インパクト、そしてフォローでもやや左ひざは曲がっているんですよね。ココもマネはしないほうが良いポイント。地面を蹴り上げる際に、左ひざは伸ばし切ったほうが絶対良いでしょう。

マネしないほうが良い点もある特徴的なニクラスのスウィングですが、これらはすべて当時のクラブの性能に合わせて作り上げた動きがゆえ。マネして良い部分とダメな部分があるのには注意が必要ですが、とくに切り返しのタイミングについてはぜひとも習得しておきたいところですね。

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