松山英樹の優勝で幕を閉じた「ZOZOチャンピオンシップ」。プロゴルファー・中村修とPGAツアーに詳しいノリ―こと堀口宜篤プロが、試合を振り返って対談した。

劇的なイーグルを決めマスターズ以来となる松山英樹の優勝で幕を閉じた2021年の「ZOZOチャンピオンシップ」。火曜日から日曜まで現地取材をした「みんなのゴルフダイジェスト」編集部員でプロゴルファーの中村修と、新小岩にあるインドアスタジオ「PGST」でインストラクターを務め、高校時代からカリフォルニアでゴルフを覚えたノリ―こと堀口宜篤プロに振り返ってもらった。

堀口宜篤(以下ノリ―)
「松山選手の底力を改めて感じましたね。それとプレッシャーのある中で本当に大舞台に強い若手のウィル・ザラトリス、ホアキン・ニーマンが印象に残りましたね。とくにニーマンはパワフルなスウィングで前傾を最後まで保ち、体を右に傾けて側屈を入れ、体を開いてボールに力を伝えられるスウィングは現代的です」

「ウィル・ザラトリスは、細い体格でもしっかり反力を使ってバネで飛ばしてくる。パットに難があるようでしたが、パットが良ければ上位に来る実力はじゅうぶんにあります、PGAツアーのルーキー・オブ・ザ・イヤーも獲っていますしね」

画像: 前傾角を崩さずに振り抜くホアキン・ニーマン(左)とルーキーオブザイヤーを獲得したウィル・ザラトリス(右)(写真は2021年のZOZOチャンピオンシップ 写真/有原裕晶)

前傾角を崩さずに振り抜くホアキン・ニーマン(左)とルーキーオブザイヤーを獲得したウィル・ザラトリス(右)(写真は2021年のZOZOチャンピオンシップ 写真/有原裕晶)

「あとは、トミー・フリートウッドがすごく印象的に残りました。2日目は寒さと風でスコアを伸ばした選手が少なかったですが、やはり、こういうコンディションではヨーロッパの選手が強いなと思いました。トミー・フリートウッドは切れ味あるショットを随所に見せてくれて、風を切り裂きピンに向かうショットや、風に乗せたりケンカさせたりと状況判断と弾道、クラブ選択が秀逸でした。決して大きい体格ではないのに、あのコンディションの中2アンダーは欧州賞金王は伊達じゃなかったですね。カッコよかった~」

一方ザンダー・シャウフェレ、リッキー・ファウラーが印象に残ったというのは、プロゴルファー・中村修。

「ザンダー・シャウフェレの球の高さには驚きましたね。体格も大きくないのにアイアンで弾道の高さを出しながら、縦距離を合わせてくる。距離の合わせ方の上手さをすごく感じましたね。それとどの選手もインパクトの音というか圧力がすごい。軽いものを速く振るのではなく、重いものがドカーンと当たる衝撃波みたいなものを感じましたね。飛ばしをアドバンテージしている選手と、コリン・モリカワやザンダー・シャウフェレなど、そこまで飛ばし屋ではないが総合力で勝負する選手がいるなという印象。とはいってもコリン・モリカワも290ヤード以上飛ばしていたので飛距離そのもののレベルは高いですが」

「日本での試合に初出場してくれた、リッキー・ファウラー。やっぱりカッコよかったですね。ドライバーもしっかり飛距離出てましたし、黒いヘッドのマッスルバックのアイアンでスピンの効いた弾道を打ち、硬くて速いグリーンに止めていました」

画像: 前週の「CJカップ」を3位で終え復調の兆しを持って出場したリッキー・ファウラー(写真は2021年のZOZOチャンピオンシップ)

前週の「CJカップ」を3位で終え復調の兆しを持って出場したリッキー・ファウラー(写真は2021年のZOZOチャンピオンシップ)

ノリ―「練習を見てても一辺倒の弾道を打たない、シチュエーションを想定しながらショットシェイプを作っていたのはどの選手にも見られたこと。非常に勉強になるし、イメージからの逆算でスウィングを作っているのだなと思いました。どういう状況でどういう球を打つのか、そのためにはどんなクラブの動き、体の動きが必要なのかということをイメージしながら練習するというのが、よくわかりましたね」

中村 「そうだね、松山英樹選手も練習場での妥協のない姿勢は、風やホール、グリーンを想定してこの球じゃダメだ、この球なら攻められるというすごく高いレベルのショットを想定しながら練習しているように見えました。ホアキン・ニーマンもドライバーからアイアンまでドロー、フェードを繰り返すように練習してたのを見て、ホールによって求められる弾道を想定しながら練習しているなと思いました」

画像: 左手の甲が掌屈しながらインパクトを迎える松山英樹(左)とザンダー・シャウフェレ(右)(写真は2021年のZOZOチャンピオンシップ)

左手の甲が掌屈しながらインパクトを迎える松山英樹(左)とザンダー・シャウフェレ(右)(写真は2021年のZOZOチャンピオンシップ)

そして最後にノリーと中村が同じように感じたというポイントが……
中村「スウィングについてはどの選手も体の動きは千差万別ですが、インパクト前後の動きに共通するものがあります。それは左手を少し外側に回転させながら左手首が手のひら側に折れる掌屈と呼ばれる動きが入っています。そのことによってフェースをスクエアに戻し、ハンドファーストなインパクトを実現するこの動きが比較的強い選手が多かった。コリン・モリカワ、松山英樹、ザンダー・シャウフェレなどどの選手もこの動きで飛距離と方向性を両立させてていました」

ノリー「コースセッティングについて、PGAツアー仕様のコースセッティングでは距離の長いホール、短いホールのメリハリ、天候によってティー位置を前に出す臨機応変な対応、グリーンの硬さと速さ、攻めたことが報われるピン位置など、国内ツアーとの違いは感じられました。パー3が5つあってパー70という設定も日本では珍しい設定でした。日本勢も飛距離でそれほど劣っていたとは思いませんでしたが、国内ツアーのセッティングでは200ヤード以上距離の残るセカンドショットはあまり経験していないこともあり精度に欠けた部分はあったのではないでしょうか。最終日に63と好スコアをマークした中西直人選手によると、ピンを攻めた結果しっかりとバーディが取れたといい、消極的なプレーはボギーを招くとPGAツアーのセッティングが気に入ったようです」

PGAツアー側も選手も習志野CCをかなり気に入っていて、来年もここで開催したいという話も出ていたというが。

中村「国内でもPGAツアー仕様のセッティングができることが証明されたのではないでしょうか。リッキー・ファウラー、松山英樹(12位)、ホアキン・ニーマン(30位)、コリン・モリカワ(2位)、ザンダー・シャウフェレ(5位)、ウィル・ザラトリス(32位)、トミー・フリートウッド(38位)などコロナ禍の影響もあってランク上位選手は多くはありませんでしたが、日本勢の活躍がもう少し期待していただけに残念でした。それでも、最終日にスコアを伸ばして7位タイに入った金谷拓実選手、久常涼選手、中西直人選手らもスコアを伸ばして終わり大いに刺激と収穫があったようで、今後の試合でも注目してみます」

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