「ゴルフの科学者」ことブライソン・デシャンボーの「教科書」であり、50年以上も前に米国で発表された書物でありながら、現在でも多くのPGAプレイヤー、また指導者に絶大な影響を与え続ける「ザ・ゴルフィングマシーン」。その解釈に向かい続け、レッスンを行う大庭可南太から上達のために知っておくべき「原則に沿った考え方」や練習方法を教えてもらおう。

みなさんこんにちは。かれこれ5年以上「ザ・ゴルフィングマシーン」に向き合い、現在は都内でインストラクターをしております大庭可南太です。私がこの書物に出会ったのは、何も本場の海外の理論を学びたいとか高尚なことを考えていたわけではなく、日本のゴルフ言語ってちょっと私にはわかりづらいと思って適当な教科書を探していたときに、デシャンボーという奇妙な打ち方をする選手がこの本を「教科書」にしていると知ったのがきっかけです。

「ゴルフィングマシーン」とはコーチのバイブルのようなのレッスン書

いろいろ調べていくうちにデシャンボーだけではなく、タイガー・ウッズの元コーチであるショーン・フォーリーや、最近ではGGスイングで有名なジョージ・ガンカスなどもこの本を非常によく研究しており、アメリカの指導者のあいだでは定番の書籍であるということがわかってきました。

そんな書籍が日本ではあまり有名ではない理由はただひとつで、ゴルフの本としてはあまりにも内容が難解なのです。ゴルフというスポーツは「機械になったほうが有利」という概念のもと、その構成部品(人体の部位)に求められる機能や原則、また飛球の法則などを物理や幾何学を用いて説明しています。よってゴルフで起きるさまざまな現象の「理由」を解明しているとは言えます。まぁそれが異様にとっつきにくいんですが……。

さまざまなレッスンが氾濫する中で知っておくべき原則論は「インパクト」

本来、単純に上達を考えるプレーヤーからすれば、起きている現象についての因果関係の理解は必ずしも必要ではありません。つまり患者さんは病気が治れば満足なわけで、「なぜこの治療をすると治るのか」をつねに知る必要はないのです。お医者さんは知っておくべきでしょうが。

しかしゴルフのレッスンをする側としては、生徒さんの「何かを変える(治す)」ということは、これまでのやり方とは異なるわけで、多くの場合それって「やりづらい」ことになります。そうなると「なぜこれをやる必要があるのか」ということを指導者と生徒さん側である程度は共有し、改善のための動機付けを行うことが必要になります。

例えば「次回のレッスンまでにこの壺を買っておく」「アドレス前に3回まわってワン!」といった指導に対して、何の疑いも持たずに結果が出るならば結構なのですが、ジュニアならまだしも大人の生徒さんであれば「それが何の役に立つんじゃ」と思ってしまうのが普通ですよね。

ですがこの例を私たちは笑えないのです。つまり生徒さんの方では「そうかこの壺を買えば飛ぶんだな、はいポチっと」という事態や、指導者のレッスンの意味するところが「3回まわってワン!」程度にしか伝わっていないということも良くあるのです。

とくに現代社会ではもう途方もない量のメソッドやギアの情報が氾濫しておりまして、「どうしてそうなった?」という状態になってしまうことも多々あります。そうならないためには、「そもそも本来の目的は何か?」ということと、「その目的を達成するための手段としての妥当性」を考察できることが必要になります。

そこで指導者はもちろんのこと、上達を考えるプレーヤーもある程度知っておくべき原則論が存在すると考えるようになりました。このコラムではそうした事柄を紹介しながら、着実に上達していくためのヒントや練習法をお伝えしていきたいと思っています。

ゴルフというスポーツはひと言で言えば「狙ったところにボールを運ぶための打撃」を行うスポーツです。他には「移動」くらいしか必要ありません。

上の文章をひと言に要約すると「打撃」つまり「インパクト」になります。インパクトさえ良ければゴルフは終わりです。時間にすれば、クラブのフェースがボールにコンタクトして離れるまでの間は、わずか0.0005秒で、ヘッドスピードが40m/sの場合、距離にして2cmです。この瞬間だけ失敗しなければいいのです。ただ「それが激ムズだから困ってるんだ」と皆さん思われると思いますので、もう少し分解します。

「木こりの三機能」と「ブランコの三原則」

では良いインパクトとされるためには何が必要なのでしょうか。私はこれを「木こりの三機能」と呼んでいます。オノで効率的に木を切るのに必要なことは

1.オノの刃が正しい角度で入る
2.毎回同じところにオノの刃が入る
3.オノの刃をできる限り速いスピードで入れられる

画像: 「インパクトさえよければ、ゴルフは終わり!」、この言葉を頭に入れておきたい(写真/三木崇徳)

「インパクトさえよければ、ゴルフは終わり!」、この言葉を頭に入れておきたい(写真/三木崇徳)

この三つだけです。ただしこの三つはすべてが同時に達成できていなければなりません。もうおわかりのように、オノをゴルフクラブに置き換えればそのままゴルフに必須の機能ということになります。そしてこの「三機能」を同時に達成するのに適した条件として、以下の三つが必要になります。同じく私はこれを「ブランコの三原則」と呼んでいます。ブランコがうまく動くためには

1.ブランコの振り子運動の支点が安定している
2. ブランコの支柱の構造が発生する負荷に対抗できる
3. ブランコの加速を効率よく発生させるタイミングで力をかけられる

つまりゴルフの上達とは、「木こりの三機能」の達成の精度を上げることであり、そのための土台として「ブランコの三原則」の条件を保持していることに尽きます。

この六項目さえできていれば、シャローでもスティープでもボディーターンでもアームローテーションでもシャットでもオープンでも沈み込もうがジャンプしようがもう何だっていいのです。逆に言えばゴルフの難しさは、この六項目を達成する方法がほぼ無限に存在することであり、その中から個人に適した方法を探し出して習得する「選択」の行為にあります。あらゆるメソッドもギアも練習器具も、六項目をという目的を達成するための「手段」に過ぎないという認識がまず重要です。

後編では「木こりの三機能」、「ブランコの三原則」についてもう少し詳しく説明をしていきます。

画像: 「木こりの三機能」、「ブランコの三原則」とは? 後編でさらに詳しく解説。お楽しみに!(写真/三木崇徳)

「木こりの三機能」、「ブランコの三原則」とは? 後編でさらに詳しく解説。お楽しみに!(写真/三木崇徳)

画像: 【ゴルフ】マッスル4番VS飛び系6番どっちが飛ぶか?!武市悦宏が実践!!【ゼクシオクロス】【アイアン】 youtu.be

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