統合されて長かった20-21年シーズンが終わり、数々のドラマを見せてくれた国内女子ツアー。チーム辻村を率いて戦った辻村明志コーチに21年の印象に残ったこと、22年の展望を語ってもらった。

GMO&サマンサカップでママさんVの若林舞衣子

2021年の国内女子ツアーを上田桃子らを率いてチーム辻村として戦ったツアーコーチの辻村明志コーチに印象に残った試合を聞くと「GMO&サマンサカップ」でのママさんとして復活優勝を果たした若林舞衣子の活躍だと話してくれた。

画像: 4年ぶり通算4勝目を飾った若林舞衣子(左)と家族(写真は2021年のGMO&サマンサカップ 写真/姉崎正)

4年ぶり通算4勝目を飾った若林舞衣子(左)と家族(写真は2021年のGMO&サマンサカップ 写真/姉崎正)

「ここのところ女子プロゴルファーの結婚のニュースも続いていますが、若林舞衣子選手の優勝は嬉しかったですね。前週のニッポンハム(レディスクラシック)で堀琴音選手とのプレーオフで敗れて悔しかったと思いますが翌週にプレーオフで勝つってすごいこと。女子プロの人生設計にもうひとつの選択肢を見せてくれたと感じました」

過去にはママさんプロとしてツアーに復帰し優勝を遂げた塩谷育代、木村敏美、森口裕子、樋口久子らの選手も存在していたがママさんプロの優勝はじつに14年ぶりだった。アスリートとして現役をまっとうし引退した後に結婚するという選択をした宮里藍、いっぽうで現役を続行し出産を経て国内ツアーに復帰しQTでも上位に入り22年の出場権を手にした横峯さくら。結婚して現役のシード選手として参戦を続ける上田桃子、渡邉彩香、菊地絵理香、イ・ボミ、大山志保、宮里美香、永峰咲希、有村智恵らを見て時代の流れが変わってきたと辻村コーチは続ける。

「若林舞衣子選手にとってはツアーと家庭の両立は大変だとは思いますが、ゴルフだけをガツガツやっていた頃と違って余裕というか視野が広くなった気がします。今までは練習、練習とやっていたものが、上手い選手がいると後ろでそのスウィングを見ていたり、そんな姿を目にするようになったので、いろんな角度からゴルフを見られるようになったんだと思います」

10代、20代前半選手の台頭が著しい女子プロの世界で、結婚・出産を経て再び優勝を手にできるにはどんな要因があったのだろうか。

「長くシード選手を続けられるのは大山志保選手やイ・チヒ選手、ジョン・ミジョン選手、藤田幸希選手などのように体がしっかりしていて飛距離が出ることも大切ですが、若林舞衣子選手のように正確なショット、パットの技術でもつかみとることもできると教えてくれました」

辻村の言う通り、若林舞衣子は「ニッポンハムレディス」の第3ラウンドから「GMO&サマンサカップ」最終日の13番ホールまで85ホール連続ノーボギーの新記録を打ち立てて優勝も果たしていた。その陰には家族や周囲のサポートに加えて、トレーニングや新しいパターを投入して向上したパッティング、ロフトを9度にして飛距離を手にしたドライバーなど技術とセッティングも噛み合ったこともその要因だろう。

このふたり抜きには21年は語れない、稲見萌寧と古江彩佳

そして賞金女王争いを繰り広げた稲見萌寧と古江彩佳の戦いを”死闘”と表現しツアーを盛り上げ魅了したふたりの戦いにも話は及んだ。

「20-21年と長いシーズンとなり最後の最後まで賞金女王の行方はわからないほどの死闘になりましたね。終盤に4戦3勝で一気に追い上げてきた古江選手、その翌週の伊藤園レディスで優勝して突き放した稲見選手、ふたりともここ一番で力を発揮できる強さを見せつけられました」

古江彩佳の4戦3勝のきっかけとなった「富士通レディース」と稲見萌寧が勝った「伊藤園レディス」でそれぞれキャディとして同じ組で回りプレーを間近に見ていた辻村コーチ。

「ふたりとも流れが来るとバーディ、バーディと一気にスコアを伸ばしていきます。優勝するときはもてる力以上のものを発揮してくる、見えない力が働いて技術にプラスしてそういう強さを発揮してきます。そして二人ともアプローチとパットのレベルが非常に高い。だから調子のいいときに勝てるし年間を通しての平均点が高い。やっぱりショットも重要ですが年間を通して上位で争うにはアプローチとパットが重要になってきます」

画像: 最終戦まで賞金女王争いを繰り広げた稲見萌寧(左)と古江彩佳(右)(写真は2021年のJLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ 写真/岡沢裕行)

最終戦まで賞金女王争いを繰り広げた稲見萌寧(左)と古江彩佳(右)(写真は2021年のJLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ 写真/岡沢裕行)

「4日間の大会なら1日や2日ショットが悪い日もある」、そこで我慢するためにはとショートゲームの重要性を改めて感じていると辻村コーチ。チームの練習内容も年間を通して調子のブレを少なくするショットを重視しつつもアプローチとパットの練習量も増えてきているという。

コロナの状況にもよるだろうが、22年は古江は米女子ツアーに参戦し国内ツアーは限定的な参戦になる模様だ。渋野日向子、笹生優花そして畑岡奈紗の4名が米女子ツアーでどんな戦いを見せてくれるのかも非常に楽しみだと辻村コーチ。

「22年は古江選手が米女子ツアーに行くと稲見選手が中心になって来るとは思いますが、誰とはわかりませんが新たな選手が上がって来て年間を通して盛り上がるツアーになることは間違いないでしょう。ただ、コロナが落ち着いて有観客になり前夜祭やプロアマが解禁されてくると調整の仕方がこれまでとは変わってくると思います」

女子プロたちにとって大きな仕事のひとつであるスポンサーとの前夜祭とプロアマ大会への出場。そして有観客になり声援を力に換えられることも勝てるプロとして重要な要素になると辻村はいう。

コロナ禍以前では、通常は4日間大会なら火曜日、3日間大会なら水曜日に翌日のプロアマ大会の組み合わせをくじ引きで決める前夜祭が設定されていた。そのため選手は練習を早めに切り上げ、着替えて前夜祭でスポンサーと交流をする。そしてプロアマ大会は選手の練習ラウンドというよりはスポンサーとの交流の場として位置づけられているから、表彰式の前後のわずかな時間に練習はできるものの昨シーズンのような時間を使って調整することはできなくなるだろう。そういったコロナ禍以前の試合の週のルーティンに戻ることも特にシード入りした若手の選手には影響があるかもしれない。

いずれにしても、シード落ちしてQTから復帰を狙う選手、プロテストを合格しQTも突破してきたルーキーたち。そして長いシーズンを戦い抜きシード権を獲得したシード選手たちの熾烈な戦いが1か月半後には始まろうとしている。オフの成果を問われるシーズン開幕はもうそこまで近づいてきている。

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