いよいよ明日4月7日から始まる第86回「マスターズ」。水曜日に金谷拓実と中島啓太のラウンドを見たプロゴルファー・中村修が現地からのレポートをお届け。

いよいよ明日から「マスターズ」が開幕します。水曜日の今日は朝から時折雨もぱらつく曇り空でスタートしました。朝7時にお土産を買いにショップに到着するとメディア関係者の入場は7時半からと少し待つように促されます。
7時にゲートが開くとパトロンたちがショップへとなだれ込んで来て、7時半には大混雑の中で知り合いから頼まれたお土産を探しながら買い物をしました。昨年まではメディアも入場制限があったのでネットで注文して国際郵便で届いたのですが、今年はそのサービスはありません。帰りの飛行機に預ける荷物が一つ増えるくらいの買い物になってしまいました……。

買い物のあとコースに戻るとタイガーがインコースから9ホールプレーするという情報が入ります。昨日は11番まで行ったところで雷雨警報のためコースはクローズになりましたので、タイガーを追いかけて11番グリーンわきの12番ティーイングエリアへと向かいます。

画像: インコース9ホールの練習ラウンドをしたタイガーの周囲は人垣でプレーを見ることは難しかった

インコース9ホールの練習ラウンドをしたタイガーの周囲は人垣でプレーを見ることは難しかった

ところが2重、3重の人垣でまったくプレーが見れません。改めてタイガーの人気の高さを感じながらドライバーショットの音を聞き少し後ろの組の金谷拓実、中島啓太選手の練習ラウンドについて歩きます。同伴プレーヤーはブルックス・ケプカとマシュー・フィッツパトリックと豪華な顔ぶれです。

画像: 16番パー3で恒例の水切りショットを披露する中島啓太、B・ケプカ、金谷拓実(左から)

16番パー3で恒例の水切りショットを披露する中島啓太、B・ケプカ、金谷拓実(左から)

金谷拓実選手は昨年末に世界ランク50位内に入りマスターズ委員会から招待状が届き出場しています。松山英樹、中島啓太選手の3人の共通点はアジアパシフィックアマで勝ちマスターズに出場しているところ。月曜日には3人で練習ラウンドをする様子も報道されていましたね。

金谷選手はマスターズ出場に備え3月の「アーノルドパーマー招待」(予選落ち)のあと「デルテクノロジーズマッチプレー」ではグループリーグを突破しベスト16。翌週の「バレロテキサスオープン」(予選落ち)経てオーガスタ入りしています。「デルテクノロジーズマッチプレー」では持ち味を生かした安定しショットとショートゲームで崩れないゴルフで勝ち進みましたので、アマチュア時代の初出場58位タイの成績を越える結果を目指しているはずです。

練習ラウンドではケプカ、中島選手、金谷選手ともホールに対する攻め方は異なります。ドライバーショットを飛距離の出るフェードボールでアドバンテージを得るケプカは、短いクラブでスピンを効かせてピンを積極的に攻めてきます。

金谷選手はドローで丁寧に狙ったフェアウェイをとらえ、ピン位置に対してしっかりとマネジメントを考え戦略を立てています。昨夜の雷雨のせいもあってグリーンはボールが止まってくれるコンディションなので、積極策も見せてくれることでしょう。入念にグリーン周りとグリーン上のチェックを怠らない姿に自分のプレースタイルを貫く徹底ぶりが見えました。

画像: 2回目の出場を手にした金谷拓実(左)と先輩二人に続きアジアパシフィックアマを制して初のマスターズに出場する中島啓太

2回目の出場を手にした金谷拓実(左)と先輩二人に続きアジアパシフィックアマを制して初のマスターズに出場する中島啓太

金谷選手よりも飛距離では勝る中島選手も自分なりの戦略をもっています。「ZOZOチャンピオンシップ」のときに、「コリン・モリカワと練習ラウンドした際に左ドッグレッグでコリン選手は品のいいフェードで攻めていた。僕はできもしないドローで攻めてラフに入れていたので、フェードを磨く」というコメントを聞いていました。オーガスタではドローを要求されるホールも多いので聞いてみると、「ドローが必要なホールではドライバーは持ちません。3Wで打ちます」という答えでした。

ドローが必要なホールでドライバーをミスするとフェアウェイを突き抜けラフに入る確率が高くなります。そこで3Wでのティーショットを選択することでマネジメントしセカンドショットをフェアウェイから打つ優位性を生かす戦略です。

画像: 18番ホールのティーショットは狭い打ち出しと左のバンカーを避けフェアウェイをキープした中島啓太

18番ホールのティーショットは狭い打ち出しと左のバンカーを避けフェアウェイをキープした中島啓太

二人を指導するガレス・ジョーンズコーチに練習ラウンドで話を聞きました。

「二人とも自分のプレースタイルを持ち、それに合わせた独自の戦略を立てています。自分の得意なところを生かす戦略を立てられるところが彼らの強みになっています」(ガレス・ジョーンズコーチ)

画像: JGAの強化選手を率いるガレス・ジョーンズコーチ(左)と栖原弘和コーチ(右)

JGAの強化選手を率いるガレス・ジョーンズコーチ(左)と栖原弘和コーチ(右)

ナショナルチームで高校1年生や2年生のころからガレスコーチのゴルフに対する考え方に触れた二人は、プレースタイルは異なりますが松山英樹選手と同じようにアジアパシフィックアマを優勝しマスターズ出場を果たしています。

二人のフィジカル面サポートするJGAの栖原弘和コーチにトレーニングに関して質問してみると、ケガの予防とヘッドスピードを上げるトレーニングを積んでいると教えてくれました。

「飛距離を伸ばすために下半身の強化をしていますが、ロングゲームの練習や試合でのショットは体のどこかに負担もかかります。その弱い部分を補強したり、負担が一部に集中しないようにバイオメカニクスのコーチとスウィング作りにも取り組んでいます。そのために上半身や体幹部、腕もしっかりとトレーニングすることで、けがの予防をしながら下半身の力を逃がさないスウィングを目指しています」(栖原弘和コーチ)

ガレス・ジョーンズコーチのゴルフに対するアイデンティティに若くして触れると同時にフィジカル面でも世界と戦うための準備を積み重ねてきているからこそ、このステージに立てるのだと改めて感じました。

中島選手においては、アマチュア規定が変更されたこともあり前日にテーラーメイドとクラブ契約の調印式がありました。PGAツアーのトッププレーヤーと同じようにアマチュアの中島啓太選手と契約を結んだことはテーラーメイドが彼のポテンシャルを大いに評価しているということの現れでもあります。

こちらは昼過ぎから雷雨警報が出て一度選手は引き上げ、解除されたあとレンジで打ち込みとショートゲームの練習をする姿を確認しましたが、またサイレンが鳴るとゲリラ豪雨のような土砂降りになりました。明日は晴れの予報ですが、グリーンはそこまで硬くはならないはずです。持ち味を生かしたプレーを見せてくれることでしょう。

写真/中村修

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