強い風が吹いた「マスターズ」の2日目、金谷拓実は5オーバー53位タイ、アマチュアの中島啓太は7オーバー64位タイで終えた。プロゴルファー・中村修が現地からのレポートをお届け。

昨日よりも気温は下がり朝から風も出ていました。ひんやりとした空気の中、3オーバーの金谷拓実は8時55分にゲーリー・ウッドランド、ジャスティン・ローズとスタートしていきました。

画像: 2度目のマスターズを5オーバー53位タイで終えた金谷拓実

2度目のマスターズを5オーバー53位タイで終えた金谷拓実

アゲンストの風が吹く1番はドライバーで打った1打目を右のバンカーに入れ、2打目はグリーン右のギャラリーへと打ち込みます。3打目をうまく寄せますがパーパットを外しボギーでのスタートとなりました。2番左ドッグレッグのパー5をパーにすると、短いパー4の3番で2打目をわずかにショートするとボールはフェアフェイまで戻りアプローチを寄せきれず、ピン奥から3パットのダブルボギー。打ち下ろしの4番パー3でも右にあるピンに対して、左のエッジに外しボギーと4ホールで4つスコアを落とす出だしとなりました。

しかし、5番からは金谷選手らしいプレーを見せてくれました。6番パー3では3メートル弱につけバーディ、7、8番でパーを並べると9番でを左のフェアフェイからフックでピンに寄せバーディとしスコアを2つ戻して前半を終えます。

画像: パトロンたちに見守られながら最後まであきらめずにピンを攻めるゴルフで金谷らしさを見せた

パトロンたちに見守られながら最後まであきらめずにピンを攻めるゴルフで金谷らしさを見せた

伸ばしていきたい後半で距離のある520ヤードの11番パー4で3パットのボギーとしますが、12番はピンに向かったボールは奥にこぼれるもパターで打ってバーディとし、難しいパー3でスコアを戻します。

13番からも積極的にピンを攻め続けます。14番は奥に外しても柔らかいアプローチでパーを拾い、15番、16番をパー、17番は手前に外すも寄せてパー、18番では残り180ヤードくらいからピン横2.5メートルにつけます。3オーバーでスタートした金谷選手は前半に4つ落としたスコアを2つ戻し、攻め続けてきました。是が非でも決めておきたいこのパットでしたがわずかにフックして入らず、トータル5オーバーでフィニッシュ。

ラウンド後の会見では、「スタートがあまり良くなくてそのあとは開き直って粘り強く最後まであきらめずにプレーできたと思います。思い切りの良さをこれからも出していきたい」と悔しさをにじませました。

金谷選手のプレースタイルは安定したドライバーショットとショートゲームにありますが、低い弾道でランの出るドライバーショットはフェアウェイをとらえ、ピンを攻めるゴルフが昨日の前半と今日の5番以降ではできていました。

2日間のフェアフェイキープ率は89%とフィールドの72%を大きく超えています。しかし、風によって難易度が上がったことでいつも通りのゴルフをさせてくれないのがマスターズという舞台なのだと思います。帯同する大坂武史トレーナーによると「金谷選手は運動を学習する能力が高くゴルフの感覚も強いものがります。その感覚を失わないように飛距離を伸ばすことを目標にトレーニングを積んでいます」といいます。持ち味を生かしたプレースタイルにプラスして飛距離を伸す、PGAツアーで戦う準備をしっかりとしているので上位で活躍できる日も近いのではないでしょうか。

画像: 初出場のマスターズは7オーバー64位タイで終えた中島啓太

初出場のマスターズは7オーバー64位タイで終えた中島啓太

金谷選手の2組後に中島啓太選手、左へ引っかけるドライバーショットからスタートします。ボールは左の林を抜け隣の9番ホールのラフへ。そこから松の木の上を越え、グリーン右手前まで運びます。アプローチで寄せますが惜しくもボギーのスタート。2番パー5は3Wでティーショットを打ち、またしても左のラフに曲げますが、花道に戻してバーディパット打てるところまでもって来ますがパーと流れをつかめません。3番の短いパー4ではドライバーを握り、ナイスショットでピンまで56ヤードまで運びます。ピン位置はエッジから8ヤードで奥行きも同じくらいのシビアなエリアを避け、少し右に狙いピン奥からパーとします。

中島選手のゴルフは、同組のバッバ・ワトソンをオーバードライブすることも多かった飛距離だけでなく、シンプルなマネジメントも特徴です。フェードヒッターの中島選手はドローを求められるホールは3Wを使用するといいますし、曲げた際に、どこに出すのか、ターゲットをどこにするのかという選択が明確です。これは「インポジション」と呼ばれる次にピンを狙いやすくグリーンを広く使える位置に戻す、というマネジメントの原理原則になる戦略に従っているものです。だからこそ無理にピンを狙ってミスを重ねることもなくシンプルな思考でプレーに集中できているといえます。

2番のバーディパットを惜しくも外し、その後7番までパーを並べますが、8番パー5のセカンドショットを左に引っかけ、植え込みに打ち込んでアンプレヤブル、ボギーとしてしまいます。9番をパーとし前半は2ボギーのトータル2オーバーで折り返します。

画像: 風の吹いたオーガスタの難しさに悔し涙をこらえてマスターズを後にした

風の吹いたオーガスタの難しさに悔し涙をこらえてマスターズを後にした

後半10番では難しいバンカーショットをピタリと寄せパー、11番は右の木に当てたあと、低く打ち出し転がすと、手前に切られたピンに対しての難しいアプローチを見事に寄せパーセーブ。しかし、難易度の高い12番ホールで奥の斜面に打ち込みダブルボギーとすると、14番ではほんのわずかにショートしたボールはピンから遠ざかってグリーンの外に出てボギーになりました。15番でも3パットのボギー。力を振り絞って17番はバーディチャンスにつけますが惜しくも入らず。18番は左のバンカーから寄せきれずにボギーとしトータル7オーバーでフィニッシュしました。

オーガスタを戦ううえで必要な部分を改めて聞かれると「心技体ともに全部がレベルアップしないとダメかなと思います」と悔し涙をこらえながら答えてくれました。チームでしっかりと準備をしてこの舞台に臨んでいましたが、3打足りずの予選落ちとなりました。

二人は、ナショナルチームを率いるガレス・ジョーンズコーチの哲学を学んだことでプレーヤーとしても自立していて、ゴルフに対する向き合い方、自分に対する向き合い方がそれぞれのスタイルでできています。23歳の金谷選手と21歳の中島選手のこれからに引き続き注目していきたいと思います。

無風でも難しいオーガスタに強い風が吹き、予選通過のカットラインは45位タイまでの4オーバーとなりました。そんな中、ディフェンディングチャンピオンの松山英樹選手は、3アンダー69でプレーしトータル3アンダーの2位タイに浮上しています。久しぶりの実戦とは思えないゲーム運びは、前年優勝者のオーラと落ち着きを感じさせます。飛距離とショットの精度だけでなく、どこからでも寄せてくるアプローチの巧みさが底支えしているのは見ての通りです。連覇も見えてくる週末に日本でもかなり盛り上がっていると思います。明日もオーガスタからお届けします。

写真/Blue Sky Photos

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