東京の八丁堀駅から歩いて30秒の居酒屋の中にある秘密のゴルフスタジオで、メジャータイトルホルダーの合田洋と調理師免許ホルダーのレッスンプロの卯木栄一が繰り広げるゴルフ談義。今回は、バックスウィングでの「ヒールアップは必要か否か」について話し合った。

――ジャック・ニクラスの影響で60年代から90年代まではヒールアップをするゴルファーが多かったが、90年代以降のニック・ファルド全盛期には、安定したショットを打つにはベタ足がいいという考え方が支配的になった。2000年代に入ると、バックスウィングに連れて自然に左足かかとが上がるというあたりに落ち着いたようにも見えるのだが。果たして、このヒールアップは必要か否か。二人の意見は?

卯木:僕はヒールアップというと中嶋常幸さんのイメージが強いですね。

合田:あとジャック・ニクラスとかね。

卯木:それに比べて今は、ヒールアップをしているなって印象に残るプレーヤーが少なくなりましたね。

合田:でもね。じゃあヒールアップが必要ないかというとそういうわけではなくて、ズバリ言わせてもらうと、左足かかとのヒールアップは必要です。

画像: 左足のヒールアップは必要だと合田プロ

左足のヒールアップは必要だと合田プロ

卯木:ほう。そう思う理由は?

合田:一つは、ヒールアップする選手のほうが長持ちすると言われているからね。

卯木:それは、バックスウィングとかで体の負担が少なくなるということですか。

合田:1900年代の中盤に活躍した名ティーチングプロのハービー・ぺニックは、ヒールアップしているプロのほうが長持ちしている、理由は、『それが一番スウィングしやすい方法だと思うからです』と言っている。つまり、バランスよく球を打てるということだと思います。トップでの右足に乗った状態、フィニッシュで左足に乗った状態になるということだろうね。トップで左のかかとに体重が掛かると、必ず踏んだ後に右に戻る動作になっちゃうからね。

画像: トップで左足に体重が掛かると、ダウンスウィングで体重が右に残ってしまう。それを防ぐために、左足をヒールアップは有効というわけだ

トップで左足に体重が掛かると、ダウンスウィングで体重が右に残ってしまう。それを防ぐために、左足をヒールアップは有効というわけだ

卯木:逆になっちゃいますよね。いわゆるリバースピボットの動きになっちゃう。

合田:もう一つの理由は、ヒールアップをしないと左足で地面が踏めないというのがありますよね。

卯木:地面を踏むというのは、切り返しの動作ですかね。バックスウィングで左かかとを上げて右サイドにウェートが移ったら、ダウンスウィングでそのウェートを左に戻すわけですが、上げた左かかとを地面に踏み込むことで、ダウンスウィングのきっかけにするという。

合田:それはありますよね。基本的にゴルフスウィングは右から左に振る動きだからね。

――ヒールアップはスウィングに必要なものとした二人は、次に、左かかとはどのくらい上げればいいのかという程度の問題を話し合った。

卯木:ヒールアップは必要なものとして、どの程度大きいか小さいかということになりますが。

合田:そうね。バッバ・ワトソンのように後ろ足に体重を乗せて前足を大きくヒールアップさせる人もいれば、ほとんどしていないように見える人もいますよね。クラブの上げ方によって違いがあって、アップライトに上げられる人はヒールアップの度合いが大きくて、フラット軌道の人は少ないことが多いですね。

卯木:バッバ・ワトソンは193センチです。

合田:ただ、一見ヒールアップをしていないプロゴルファーにバックスウィングで、「左足のかかとの力抜けていますか」って訊いたら、必ず抜けていると答えると思いますよ。じゃないとダウンスウィングで踏めないもんね。外見上は浮いていないように見えても若干は浮いているものだし、あと、ゴルフシューズの中で足を踏むフットワークもありますからね。

卯木:足底で地面を踏んでいるわけですよね。

合田:多かれ少なかれ、みんなヒールアップのような動作をしているということです。

――これまでの二人の議論によって左足のヒールアップには、バックスウィングでの体の捻転の補助と、ダウンスウィングでの足の踏み込みが関係しているらしいことが分かった。そこで次に二人は、『地面を踏む』動作の意味について話し合っていく。

合田:地面を踏む力というのはスウィングするうえでとても大事で、最近はこれを『地面反力』とも言われるけど、ゴルフスウィングの中で足を踏むという動作は必ず入ってきます。

卯木:バックスウィングからトップでは右足が踏み込まれていきますね。

合田:そうね。バックスウィングで右足は捩じられていくイメージですよね、右の股関節、ひざ、足首が捩じられていく、それを足底で我慢している感じですよね。この右サイドに捩じられることで左かかとが少し上がります。そしてダウンスウィングで左サイドにシフトしていきます。この時のイメージは、『右サイドから体重がなくなっていく』とか『左足を踏む』とか人それぞれです。まあ自分は、『右にトルクしたものを左にシフトして回転する』とイメージするのがいいと思いますね。

――最後に、ヒールアップされた左足は、どこに、どうやって、下ろしたらいいのかを教えてもおらおう。

卯木:上げた左足のかかとは、その場に下ろしたほうがいいんですかね。

合田:これはね、内側にステップインして下ろすとか、外側にステップアウトして下ろすとか、人によって違ってきます。最近は、左足つま先を目標へ向ける動作によって腰の回転をサポートしているシェアリングという動きが流行っていて。PGAツアーでバッバ・ワトソンとかパトリック・リードとかはそういう動きですよね。

画像: 左足つま先を目標へ向けるように踏み込むことで、腰を回しやすくなるという

左足つま先を目標へ向けるように踏み込むことで、腰を回しやすくなるという

卯木:左足を動かして打つのは、ショットの正確性の面ではどうなんでしょう。

合田:これはね、今の男子プロのスウィングスピードで、つま先を真っすぐにした状態で我慢し続けて振ると膝に負担がかかりますからね。だからそういう面でもシェアリングのように左足を動かして打つというのは、悪い動きではないと思いますよね。

卯木:昔はつま先を開かないようにと言われたこともありますけどね。

合田:左足かかとをステップインしてドローボールを打つとかね。今は逆につま先を開きながら左足を突っ張らせて打つ動きが多いですよね。

協力/Gスタジオ八丁堀

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