国内女子ツアー第8戦「フジサンケイレディスクラシック」最終日、初日から首位を走る高橋彩華が10度目の最終日最終組でついにツアー初優勝を飾った。黄金世代のツアー優勝者は前の試合の植竹希望に続いて11人目。長かった“あと一歩”の繰り返しに終止符を打った。

1打リードで迎えた最終日、高橋は1、2番を連続ボギーとする厳しいスタート。3、4番を連続バーディとすぐに挽回したものの、前半を終えた時点では同じ組の安田祐香に首位の座を明け渡した。これまでなら、ここからスコアを落としてもおかしくない展開だが、この日の後半は3バーディ、ノーボギー。安田やベテラン藤田さいきとの競り合いを制し、涙の初優勝となった。

画像: 国内女子ツアー「フジサンケイレディスクラシック」を制した高橋彩華(写真/Getty Images)

国内女子ツアー「フジサンケイレディスクラシック」を制した高橋彩華(写真/Getty Images)

今年に入り、あるベテラン男子プロとの会話の中でこんな言葉を耳にした。「いい子はなかなかやっていけないんですよ。ツアーで活躍してるのって変なヤツばっかりでしょう」。その場では「そんなもんですかね」と受け流したが、頭の中には“いい子”の顔が何人か浮かんでいた。昨季賞金ランク11位の高橋はここに当てはめるべきではないのかもしれないが、浮かんだ中の一人だった。

2017年、あるトーナメント会場で高橋は2か月後に控えた最終プロテストへの不安を隠そうとしなかった。「プロテストは最終からだし、なかなか出られる試合がないんです」。前年の「日本女子アマ」を制したことで、プロテストの1次、2次は免除。高校を卒業してジュニアの試合もない。不安は的中し、試合の感覚をつかめないまま臨んだ初めてのプロテストは合格ラインに8打及ばず不合格となった。

この時期から高橋はパッティングのイップスにも苦しんだ。女子アマ日本一になったことで高まる周囲の期待、それに応えられない自分…。そんな重圧が原因のひとつだったのは間違いないだろう。高橋が“変なヤツ”だったら、余計なプレッシャーを感じることなく、もっとスムーズにプロの世界に飛び込んでいたのかもしれない。

ツアー会場では1つ年下の稲見萌寧と一緒にいる姿をよく目にする。姉妹のように仲がいいどころか、どちらが年上か分からないような間柄。先輩風を吹かせる様子はない。また、優勝会見では賞金の使い道を聞かれ「両親に欲しいものを買ってあげたいです」と話した。ゴルフを一歩離れたところでもいい子という印象は変わらない。それでも高橋は初優勝にたどり着いた。

男子プロが口にした「いい子はやっていけない」という言葉が意味するところは「人のよさ」と「精神的な弱さ」は紙一重ということだろう。ただ、紙一重であってイコールではないはず。この1勝をきっかけにいい子の部分はそのまま、精神的に強い高橋彩華へと進化することを期待したい。

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