「BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」の最終日、首位タイで3人が並んでいた最終ホールをバーディで優勝を決めた比嘉一貴。難コースを制したスウィングをプロゴルファー・中村修が解説。

3日目に6アンダーと爆発し首位に立った地元の星野陸也を追いかけたのは、比嘉一貴、大槻智春、24歳の岩崎亜久竜の3名でした。大槻は17番まで8アンダーペースで首位に立ちましたが17番のフェアフェイから打ったセカンドショットをグリーン手前の池に入れダブルボギーと後退。岩崎は出だしの3連続バーディで星野に追いつくも、スコアを伸ばしきれずに18番の2打目をバンカーに入れチップインならず。

ピン横3メートルにつけた比嘉は、全身に身震いを感じながら打ったという勝負を決めるバーディトライがカップに吸い込まれ、力を込めたガッツポーズで国内メジャー初勝利(通算4勝目)、今季2勝目を飾りました。男子ゴルフの醍醐味を見せてくれた選手、そしてラフを例年よりも短くしたことでアグレッシブなプレーを引き出したセッティングが見事にマッチした試合ではなかったでしょうか。

画像: 「BMWツアー選手権森ビル杯」で今季2勝目(通算4勝目)を初の国内メジャーで飾った比嘉一貴(写真/岡沢裕行)

「BMWツアー選手権森ビル杯」で今季2勝目(通算4勝目)を初の国内メジャーで飾った比嘉一貴(写真/岡沢裕行)

じつは大会初日に比嘉、香妻陣一朗、杉原大河の組に注目し18ホールをついて歩いていました。比嘉選手は2番のパー5で2オンからイーグル、3番パー3でバーディと幸先よくスタートしましたが、6番のパー5で左のラフからグリーンを狙ったショットを引っかけてOB。そのホールをボギーで切り抜けましたが流れをつかみきれずに2アンダーで終えていました。その時に見た比嘉選手のゴルフは、風も強く狭いフェアフェイに対して、地上10メートルくらいの高さで矢のようなライナーで飛ばすドライバーショットを打ち、フェースコントロールの効いたアイアンショットでピンを攻めていました。

初日のプレーを見て感じたのは、飛距離よりも方向性を重視した技術の高さと、最終日の最終ホールでも見せてくれた飛ばし屋の岩崎選手よりも前に行ったパワフルなドライバーショットでした。
そのスウィングをじっくり見てみましょう。

左の甲が正面から見えるストロンググリップで右手の向きもそれに合わせて下から握る、トップではフェースが空を向くシャットフェース、この二つが比嘉選手の特徴です。フェースを開いて閉じる打ち方ではなく、フェースをボールに向けたままテークバックするような使い方をしています(画像A)

画像: 画像A 左手の甲が正面から見えるストロンググリップでフェースをボールに向けたままテークバックしトップでフェースが空を向くシャットフェースが特徴

画像A 左手の甲が正面から見えるストロンググリップでフェースをボールに向けたままテークバックしトップでフェースが空を向くシャットフェースが特徴

そして、画像Bのインパクト直後の手元を注目してみるとアドレスで作ったストロンググリップの形のまま押し込んだような形になっていることがわかります。開閉を使わずに方向性を重視したフェースの使い方は宮里兄弟を育てた父・優さんの教えもあることでしょう。フェースの開閉で力を生み出せないぶん飛距離出すには体のパワーが必要になりますが、しっかりと体作りもしていることで必要な時にはちゃんと飛ばせる力も持ち合わせています。プレーを見てコースに合わせたマネジメントと技術を着実に身に着けてきていると感じました。

画像: 画像B アドレスで作ったストロンググリップの形のままインパクトを迎えることでフェースの開閉の少ないスウィングで方向性を確保している

画像B アドレスで作ったストロンググリップの形のままインパクトを迎えることでフェースの開閉の少ないスウィングで方向性を確保している

もう一つの特徴は、後方からの画像Cを見てみると右肩よりも少し上からシャフトが下りて来ていおり、フラットではなく比較的アップライトな軌道で振っている点です。158センチと小柄ではありますがしっかりとボールを上から打てる「イントゥイン」軌道をストロンググリップのメリットとうまく融合させたスウィングを身に着けていることがわかります。

画像: 画像C 右肩よりも上から降りるアップライトな軌道でボールを上から打てる入射角をもつ

画像C 右肩よりも上から降りるアップライトな軌道でボールを上から打てる入射角をもつ

今大会の優勝者には5年シードとZOZOチャンピオンシップの出場権、そして今大会までの賞金ランク1位に躍り出たことで全英オープンの出場権も手にしました。自分のスウィングやプレースタイルを磨き、小柄な比嘉選手が活躍することで多くの人に勇気を与える存在に成長していますね。

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