比嘉一貴の最終ホールのバーディで優勝が決まり、劇的に幕を閉じた「BMWツアー選手権森ビル杯」。開催された宍戸ヒルズCCで「ヒルズゴルフトミーアカデミー」を主宰する中嶋常幸にインタビューした。

「ヒルズゴルフトミーアカデミー」といえばツアー48勝を誇り青木功、ジャンボ尾崎と共にAON時代を築いた中嶋常幸が2012年から主宰し、畑岡奈紗や蛭田みな美など数々のプレーヤーを輩出するジュニアアカデミーだ。

画像: 2012年から「ヒルズゴルフトミーアカデミー」を主宰する中嶋常幸(写真は2022年の「BMWツアー選手権森ビル杯」)

2012年から「ヒルズゴルフトミーアカデミー」を主宰する中嶋常幸(写真は2022年の「BMWツアー選手権森ビル杯」)

みんなのゴルフダイジェスト編集部(以下、編集部):アカデミー開講当時の想いをお聞かせください。

中嶋:静ヒルズCCをリメイクする設計・監修の仕事をもらって、改修の完成が間近になったコースを見ながら「こんなところから世界で勝てる選手を育てられたらいいですよね」と故・森稔、森ビル社長からかけられた言葉が原点で、すべてなんです。じゃあ自分にできることは何かと考えたら、ゴルフを教えること。これがなかったら始まらなかったですね。

編集部:アカデミーではどんな指導をしているのでしょうか?

中嶋:すべての生徒に共通して教えるのはまず「構え」。それが基本です。そして「構え」から「動きに入る動作」。アドレスが歪んでいたら郵便もゴルフも目的地に到着できなんだよね。正しく立てること、そこには奥深さがあって、前後や左右のバランスに加えて内面もある。内面の筋肉、感覚とそれを動かす連動性、そいうった動きに入るためにアドレス作りを基本の「キ」にしています。

「動きに入る動作」はスウィングが始まったときに、いかにアドレスのよさを生かしていけるか。それを生かしながらどれだけパワーを溜められるか。形だけ、力だけでもダメ。構えのよさをテークバックで溜め込んでいく。ここから先は感覚の世界で考えても間に合わない世界。だから、僕らが教えるのはアドレスからテークバック、トップまで。トップとは切り返しも入ってくるけど、そこまでで、そこから先は子供たちが持っている感性の世界なんです。

そのためにいちばん最初に教えるのはドローボール。ドローボールにはすごく栄養がいっぱいあって「ためる」と「間」のエッセンスが詰まっている。スポーツにはこの「間」が大事なのでそれを覚えるためにもドローを教えます。これが動きの中の基本の「キ」になります。良質のドローボール、目標の右に打ち出して目標に返ってくる。それを冬の薄い芝でもできるようになること。これができるようになると、最高のインサイドからの軌道が身についたことになります。

アドレスの基本も動きの基本も肉体という器が必要です。その中身をよくするためにトレーニングがあって、正しいアドレスがあって、正しく動くために、良質な筋肉や柔軟性と合わせることも大事です。

編集部:「積極的に質問しなさい」と自分で考える力を大事されていると聞きましたが

中嶋:質問の内容によってその子の上達の段階がわかります。いい質問してくるな、当然そこに行き当たるよな、と思えばかなり研究しているとわかるし。質問をするには気構えが必要になります。質問するには度胸が必要だし、躊躇していまうというのは損だよね。でもくだらない質問には答えないよ、と言っている。それはプレッシャーでもあるけど愛情でもあります。上辺の悩みからとことん突き詰めていけば質問の内容も変わってきます。

ーーアカデミーは2年で卒業だが卒業生には、いつでも会って質問することのできる体制も整えているという。

中嶋:トミーアカデミーを出ようがどこを出ようが一流になれる子はひと握り。多くは目標を達成しない、夢に届かない。それは仕方がないこと。でも僕はそこで挫折者になってほしくない、ゴルフに出会えてよかった。ゴルフと生涯の友達に慣れた。ゴルフが自分の辛い場面で助けてくれた。そういうゴルファーになって欲しいと思っています。一流選手、強い選手になることも大事ですが、トミーアカデミーに入って目標には届かなかったけどこんなにいいゴルフができるようになれた、ゴルフの面白さを知れた、それが大事だと思います。トミーアカデミーを始めた頃、世の中では中学生の自殺が多くてね、例えばそういう子がゴルフというものを持っていたら、ゴルフが好きだったらそうはならないのではないか。うちのアカデミーでゴルフを学んだ子は誰かの役に立てる、そういう可能性を持って欲しいと思っています。

編集部:トミーアカデミーだけでなくジャンボ尾崎ゴルフアカデミー出身の女子プロがツアーで活躍しています。女子の活躍が目立ちますが、男子はどうですか?

中嶋:男子は難しさがあって、女子は男子に比べて(体や心の成長が)10年早いんです。だから女子のほうが早く結果が出ますね。でも男子は30歳くらいで、いちばんよくなってくる。その頃には立派な社会人で大人なんです。僕らが育てているのは畑でいえば植えたばかりの子たちだから、そういう意味でも男子をどう育てるかというのは、もちろんジャンボのところも、うちでも同じように大変だと思う。プロになることがゴールであれば何人もプロになっているんだけど、そこは森さんとの約束で世界で勝てる選手、というのがゴールですからね。

編集部:松山英樹選手レベルの選手が育たないとダメだと……

中嶋:松山英樹が合宿に参加してくれたことがあってね。あれはやっぱり当時の子供たちにとってすごく刺激になりましたね。畑岡も見ていましたが本物に触れる、本物を見るというのはいちばんの勉強になりますから。

毎年1名をマスターズ視察研修に連れて行っているのですが(ここ数年はコロナで中止)、河本力をマスターズに連れていった際に、力どうだった?と聞いたら『ドライバーですごいと思ったのはダスティン・ジョンソンとマキロイだけです』って(笑)。どれだけ頭でっかちになっているのかと笑ったのですが、今では河本力と杉原大河はこの2人の飛距離はツアーでも別格になっていますね。そういう選手が出て来てくれたのも嬉しいことです。

編集部:セレクションではどんな選手が目を引きますか?

生徒を選ぶポイントは、スウィングする力がどれだけあるか、直しがたい癖がなければいい、運動能力、原石としてどれだけのポテンシャルを持っているのか。その辺を見ています。

これからのゴルフは飛距離とパワーとテクニックがもっと必要になってくると思っています。男子はパワーとテクニックのガチンコ勝負なところが面白さだと思いますが、飛距離に対して正確性であったり自分のプレースタイルを持つ個性のある選手たちが戦う姿、それこそがゴルフの醍醐味であり面白さなんだと思いますね。

ーーアカデミーの募集は2年に1度セレクションがおこなわれているが、コロナ渦で中止になっていたこともあり3年ぶりに開催されることが決まっている。開催日は7月16日の土曜日で現在エントリー受付中とのこと。

世界を知る中嶋常幸のもとから、世界へ羽ばたくゴルファーがこれからも輩出されることだろう。

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