国内女子ツアー「アース・モンダミン・カップ」で選手とキャディーの意見が対立し、キャディーが職務を放棄してコースから立ち去るという珍事件が起きた。そもそもキャディーの仕事っていったいなに? プレーヤーにとってどんな存在? 調べてみた。
画像: プレーヤーにとっての位置づけは? キャディーがやっていいことをルールを確認してみた

プレーヤーにとっての位置づけは? キャディーがやっていいことをルールを確認してみた

選手を「助ける」のがキャディーの仕事のはずなのだが……

6月23日より4日間の日程でおこなわれている国内女子ゴルフツアーのアース・モンダミン・カップで事件が起きた。大西葵に帯同していた大江順一キャディーが、ラウンド中に大西と意見が対立し、怒声をあげてキャディーの職務を放棄。そのままコースから出て行ってしまったのだ。急きょコーチや関係者が代役を務めたようだが、体調不良以外の出来事でキャディーが途中で帰ってしまうのは前代未聞。

昨日、大西は初日にこのようなアクシデントがあったなかギリギリで予選を通過。ラウンド終了後の囲み取材では「この件についてはいまは話せない」と足早にコースをあとにした。

ところで、最近ではセルフプレーを選ぶことが多い一般ゴルファーには馴染みが薄いかもしれないが、そもそも「キャディー」とはプレーヤーにとってどういった位置づけの存在なのだろうか。改めてルールを確認してみよう。

R&A、USGAが発行するゴルフ規則の規則10「ストロークのための準備とストロークを行うこと;アドバイスと援助;キャディー」の10.3aには「キャディーはラウンド中にプレーヤーを援助できる」とある。キャディーとは、規則にしたがってプレーヤーを助ける人なのだ。その「助ける」の中には、
・クラブを持って行く、運ぶ、扱う
・プレーヤーにアドバイスを与える
ことを含む。つまり、プレーヤーはキャディーにどのような情報についてもアドバイスを求めることができ、キャディーはアドバイスをプレーヤーに与えることが認められているということ。

画像: キャディは規則に従ってまずはプレーヤーを「助ける」役割、クラブを運ぶのもそのひとつ(写真は2019年マスターズ撮影/姉崎正)

キャディは規則に従ってまずはプレーヤーを「助ける」役割、クラブを運ぶのもそのひとつ(写真は2019年マスターズ撮影/姉崎正)

また、規則によるとキャディーはプレーヤーの承認がなくても以下の行動がつねに認められている。
• プレーヤーの球を捜索すること(規則7.1)。
• ストロークを行う前に情報、アドバイス、その他の援助を与えること(規則10.2aと規則10.2b)。
• バンカーをならす、またはコースを保護するために他の行動をとること(規則8.2例外、規則8.3例外、規則12.2b(2)(3))。
• パッティンググリーンで砂やバラバラの土を取り除くことや、損傷を修理すること(規則13.1c)。
• 旗竿を取り除くこと、付き添うこと(規則13.2b)。
• パッティンググリーンのプレーヤーの球の箇所をマークして、その球を拾い上げて、リプレースすること(規則14.1b例外と規則14.2b)。
• プレーヤーの球をふくこと(規則14.1c)。
• ルースインペディメントや動かせる障害物を取り除くこと(規則15.1と規則15.2)

プロゴルファーの試合中継を見ていても、キャディーがこれらをスムーズにおこなうことで選手たちがプレーに集中できているのがよくわかる。とくにベテランと言われるキャディーはプレー中の選手の精神的なケアもおこない、選手たちがいい成績を残すためのサポートをしている。

画像: プレーヤーの承認がなくても、球を捜索したり、アドバイスしたりすることが認められている(写真は2021年ZOZO選手権 撮影/姉崎正)

プレーヤーの承認がなくても、球を捜索したり、アドバイスしたりすることが認められている(写真は2021年ZOZO選手権 撮影/姉崎正)

今回、大江氏が職務を放棄したことで大西はキャディーを替えることを余儀なくされたが、これはルールとしてはきちんと認められている。

「プレーヤーはラウンド中にキャディーを替えることができる。しかし、単に新しいキャディーからアドバイスを受ける目的のために一時的に替えることはできない」(規則10.3a)。
今回キャディーはまず石井忍コーチに交代し、石井忍コーチの腰痛によりテーラーメイドの関係者にさらにバトンタッチされたというので問題はない。

ただし、規則集には以下も明記されている。
規則10.3c「キャディーの行動と規則違反に対するプレーヤーの責任」では「キャディーの行動が規則に違反する、またはプレーヤーがその行動をとっていたとしたら規則に違反する行動をキャディーがとった場合、そのプレーヤーはその規則に基づいて罰を受ける」とある。

JLPGAは「キャディー本人からも事実確認をしたのち、選手及びキャディーの処分を審議することになる」としているため、今回の大江氏の行動が何かしらの規則に違反すると判断された場合は当然大西にもペナルティが科せられることが予想される。

コロナ禍でもできる対策を講じて有観客でおこなわれた今回の試合。観ていたゴルフファンもいい気持ちはしなかっただろう。もう2度とこのようなことがないことを願いたい。

*「キャディー」の表記についてはルールブックと統一しました

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