第150回大会の全英オープンの予選ラウンドが終了。日本人選手で予選を通過したのは、松山英樹と桂川有人の二人だけ。桂川は初のメジャーで堂々の予選通過。一方、ローアマが期待されていた世界アマランキング1位の中島啓太は予選通過ならなかった。明暗くっきりという形となったが、その要因はどこにあったのか、考えてみた。

桂川有人の強みとは若くして“ステディなゴルフ”

初日を1アンダーの71で終えていた桂川有人は、2日目に4アンダーの68を出し、トータル5アンダーの18位タイで予選突破を果たした。2日目は圧巻のプレーで、出だしこそボギーとしたものの、その後は5バーディを奪って、尻上がりにスコアを伸ばしていった。初のメジャーで堂々の予選通過、なんとも頼もしい限りだ。

画像: ティーショットを放つ桂川。そのショットの安定感は光っていて、PGAツアーでも通用することを証明した

ティーショットを放つ桂川。そのショットの安定感は光っていて、PGAツアーでも通用することを証明した

「出だしでそんなに難しくないパットを3パットしてしまって。その後どうなるかなというのがあったのですが、すぐに取り返せて、それが大きかったかなと思います。そこから本当に自分のプレーができたかな。ミスを無くしてプレーしたいというのがあって、今日のミスはその出だしの3パットと、17番の2打目を右のグリーン落としてしまったこと。でも、あのアプローチ(3打目)はうまくいって、それは自分でも褒めたいですね」と試合後の桂川。

彼は一昨年プロデビューしたばかりで、まだ顔にあどけなさの残る23歳。昨年まで下部ツアーのAbemaTVツアーを主戦場にしていたが、今季はレギュラーツアーに上がり、早々とツアー1勝をあげ、気づけば賞金ランキング2位につけている。そして初のメジャー大会で、いきなりの活躍。今シーズン始まる前に、桂川のこの躍進を誰が想像できただろうか。

思えば日本大学ゴルフ部在学中の大学4年のころから桂川を見てきたが、彼ほど、玄人受けしそうなゴルフをする若者はいないだろう。そのプレースタイルに派手さはなく、安定感のあるショットで堅実にスコアを伸ばしていき、気づけばいつも上位にいるいわゆる”ステディなゴルフ”をする。ステディという言葉自体古臭いが、その表現がぴったりなぐらいの老獪さすら感じる安定感なのだ。この若さにして、「どうやれば試合でスコアが出せるか」を考えられるプレーヤーで、実に本番に強い。今回は日本からプロキャディは連れて行かず、「コースをよく知っている人をつけたい」(桂川)という理由でセントアンドリュースをよく知る地元のキャディさんを雇っているところも、さすが。初のメジャーでしっかり予選を通ってしかも上位にいるという結果を見ると、現地キャディをつけた判断は、やはり素晴らしいと思う。

画像: 地元のローカルキャディをつける桂川。キャディの友達や家族も桂川の応援に来ているという

地元のローカルキャディをつける桂川。キャディの友達や家族も桂川の応援に来ているという

「ひとつでも上というのを目指してやっていました。予選通過を目標にしたらそれより下回っちゃうので、(予選通過は)あまり気にせず上を見てやっていました。今の位置で終れてよかったなと思います。これまで2日間やって自分の中ではいい位置にいるので、ここで気持ちを切らさずに、またここから予選カットがあるような気持ちでやったら結果がよくなる気がするので、その気持ちでいきたいです」と桂川。

この男、決勝ラウンドでも、何かやってくれそうな気がしてしまうのは、なぜだろうか。

中島啓太はメジャー3連続予選落ち…

一方、ローアマが期待された中島啓太は、初日はイーブンパーだったものの、二日目に75と崩れ、予選通過とはならなかった。メジャーの3連戦、マスターズと全米オープン、そして全英オープンと、今年は4大メジャーのうちの3つの大会で、すべて予選落ち。世界アマチュアランキング1位の中島啓太にとっては、今年は試練の年かもしれない。

画像: 「すごい曲がるグリーンなので、そういうグリーンで対応できていない部分があった」と中島

「すごい曲がるグリーンなので、そういうグリーンで対応できていない部分があった」と中島

2日目の中島は、前半は4番でボギーを打つも、5番と9番でバーディをとり、一時はアンダーパーまで戻した。11番のパー3もグリーン奥のヒースに入れてピンチを迎えたが、絶妙なアプローチショットをみせ、なんとかパーでしのいだ。ただし、そのあとの12番でティーショットを痛恨のミス、ロストボールとなりこのホールをダブルボギーとした。その後、13番、15番をボギーとし、結局最後まで持ちこたえることができなかった。

「12番のロストボールから流れが悪くなってしまいました。12番は今日も1オンチャレンジでドライバー持ったんですけど、キックが悪くてブッシュに入ってしまった。アンダーパーで来ている中で12番のような一発をなくしていけたら、もっといい選手になれるんじゃないかと思います」と試合後の中島は語った。

そういえば、中島はマスターズのときも、2日目の5番ホールで放った一発の逆球からスコアを崩していき、予選落ちを喫していた。このメジャー3連戦を見ていて思うのは、中島には「悪くても耐える強さ」が足りないように思える。一発のミスが出るのは仕方ない。

ただそのあと持ちこたえられるかどうかが大事で、そこが今後プロ入りしたあともトップ選手としてやっていけるかの分かれ目になるだろう。

中島は今年の初めからスウィング改造を行ってきた。スウィングで負担のかかっていた右腰をケアして、「より負担のかからないスウィング」を目指して、ナショナルチームのコーチ・ガレス氏と栖原トレーナーとともに、スウィングを変えてきた。そのスウィング改造もようやく実を結んできていると話していたし、また体作りも同時に行っていて、中島の体は見るたびに大きくなっている。パッティングに関しても、パット専門コーチの橋本真和氏に教えを乞い、そのウィークポイントであるパットのストロークの改善も行ってきた。自分にプラスになるであろうことは吸収して、努力を重ねてきただけに、試合でなかなか結果が出ないのがもどかしいところだろう。

今後の予定を聞くと、「プロ転向は近いですが、その前に世界アマというナショナルチームのイベントがあるので、そこはしっかり日本代表として戦おうと思っています。プロ転向はそのあとにあるので、そこまではアマチュアで頑張りたい」と答えた中島。

今季のメジャー大会でローアマこそとれなかったが、プロになってまた成長した姿をメジャーの舞台でみせてほしい。

Photo/姉﨑正

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