コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックス AI」では、過去のスウィングもAIによる3D解析技術でデータ化することができるという。今回は渋野日向子のスウィングをゴルフコーチ・北野達郎が分析した。

みなさんこんにちは。スポーツボックスAI・3Dスタッフコーチの北野 達郎です。

今回は、渋野 日向子選手の現在と、2019年のスウィングを「スポーツボックスAI」のデータと共に比較していきます。渋野選手は2019年の全英女子オープンに優勝後に大胆なスウィング改造に取り組んでおり、「スポーツボックスAI」でも以前と現在ではかなりデータに変化があります。その中でもおもな違いは4点あり、それはSWAY(横移動)、SIDE BEND(側屈)、TURN(回転)、HAND LIFT(手元の高さ)の4項目です。

まずはSWAY(横移動)ですが、もともと渋野選手は「アドレスから始動にかけて、体が先に動いて手は後からついてくる」特徴があります。これは2019年~現在にかけて一貫しており、手が動き始める前に身体はやや右へ移動し、その後テークバックが始まります。スポーツボックスの項目ではCHEST(胸)とPELVIS(骨盤)のSWAYのデータで確認できます。アバターの手は動いていないのにCHEST、PELVIS共に「+2前後」から「0」へ(右方向へ)値が変わっていくのが確認できます。ただ以前と現在の違いはこの後にあり、以前は始動~P3(腕が地面と平行)あたりまでSWAY値が「CHEST-3.4」、「PELVIS-2.6」とじょじょに右方向へ増えていき、頭も右へ移動しているのに対し、現在は始動~P3までSWAY値は0からほとんど変化がなく、頭の位置もあまり変わりません。

つまり、以前は身体を右へ大きく揺さぶりながらバックスウィングをとっていたのに対し、現在は始動で右へ動いてあとはその場で回転していくバックスウィングです。

画像: 渋野日向子の2019年のスウィング(上)と2022年のスウィング(下)を比較。「SWAY」の値が少なくなり頭の位置と右への揺さぶりも少なくなったのがわかる

渋野日向子の2019年のスウィング(上)と2022年のスウィング(下)を比較。「SWAY」の値が少なくなり頭の位置と右への揺さぶりも少なくなったのがわかる

次にトップ~インパクトでの「TURN」と「HAND LIFT」の違いをご紹介します。渋野選手のスウィング改造においてもっとも話題になったのは、「トップがかなり低く、フラットになった」点でしょう。これはHAND LIFT(手の高さ)の値を見ると一目瞭然で、以前はアドレスに比べて「41.5インチ」の高さにありましたが、今は「34.7インチ」と約6.8インチ(約17.3cm)も低くなっています。ゴルフに馴染みのある物で例えると女性用グローブ1枚分くらいトップの高さが異なる訳です。これだけ手の高さが異なると他の項目にも当然影響はあり、それが胸のTURN(回転)の値になります。以前は-83度右、今は-74度右と、現在の方が以前より9°回転が浅くなり、その分だけ手の高さにも違いが表れたと言えます。ただこの2つの項目は、例えばトップにかけてもっと腕を振り上げたりしてしまうと関連しません。渋野選手が腕を使わずに身体と手を同調させて振っているからこそ関連していると言えます。これだけコンパクトにスウィングを変えようとすると、どうしても腕をもっと振りたくなるものですが、そうならないように徹底して練習で取り組んできたのでしょう。プロの豊富な練習量と根気強さがあるからこそできるスウィング改造と言えます。

画像: トップの位置を比較。グローブひとつぶんほど低くなり、胸と腰のターンも少なくなった。トップをコンパクトにすると腕を上げたくなるものだが、低い位置にキープできている

トップの位置を比較。グローブひとつぶんほど低くなり、胸と腰のターンも少なくなった。トップをコンパクトにすると腕を上げたくなるものだが、低い位置にキープできている

最後にHANDLIFTについてもう1点。それは「インパクトでの手元の高さ」です。以前のインパクトはHAND LIFTがアドレスより「8.6インチ上」なのに対し、現在は「3.2インチ上」と、約5.4インチ(13.7センチ)インパクトでの手元の高さが低くなりました。アバターのハンドパスを見ると黄色い線とオレンジの線があり、現在の方が黄色とオレンジの線がインパクトにかけて重なっているのが分かります。インパクトで手元が浮くほど、シャフトはトウダウンしてインパクトの安定性が下がりますが、トップが低くなった現在の方が手は低い位置に保てるようになったと言えるでしょう。

いかがでしたか?今年の海外メジャーではシェブロン選手権で4位、全英女子オープンで3位と持ち前の大舞台での強さを発揮してくれた渋野選手。今後の活躍にも大いに期待しましょう!

画像: インパクトでは手の位置が約5.4インチ(13.7センチ)低くなった。安定性もアップしている

インパクトでは手の位置が約5.4インチ(13.7センチ)低くなった。安定性もアップしている

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