コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックス AI」では、過去のスウィングもAIによる3D解析技術でデータ化することができるという。今回は松山英樹のスウィングをデータ化、ゴルフコーチ・北野達郎が分析した。

みなさんこんにちは。SPORTS BOX AI・3Dスタッフコーチの北野達郎です。今回はZOZOチャンピオンシップで日本に帰ってきた松山 英樹選手の過去と現在のスウィングを「スポーツボックスAI」の解析をもとに比較してみましょう。松山選手の過去と現在のスウィングの大きな違いは2点あります。それは①アドレス、②インパクトでのサイドベンド(側屈)です。それでは解説していきます。

まずはアドレスの違いです。以前の松山選手はドライバーショットで体の中心からやや右足寄りに軸を傾けて、ややアッパーブローでボールを捉えたいという構えを取っていました。頭の位置も右足寄りです。

画像: 2015年の松山英樹のアドレス。右ひざのほうが深く曲がっており軸が右足寄りになっている

2015年の松山英樹のアドレス。右ひざのほうが深く曲がっており軸が右足寄りになっている

それに対して現在は、両足の中心に頭もあり、下半身はむしろ左足寄りに寄っています。この傾向は「スポーツボックスAI」の項目では「Knee Flexion(ニーフレクション・ひざの屈曲)」で大きな違いとして出ています。この項目は、「Lead Knee」が左ひざ、「Trail Knee」が右ひざです。角度は数字が大きいほどひざが伸びており、数字が小さいとひざが曲がっている事を意味します。

以前の松山選手は、左ひざが154度、右ひざが147度と右ひざを深く曲げているので、頭の位置や身体の軸も右足寄りにありましたが、現在の松山選手は左ひざ151度、右ひざ155度で左ひざのほうが深く曲がっています。これに伴って頭の位置と身体の軸も、両足のセンター寄りになったと言えます。アドレスのポジションを変えることは、必ずスウィングにも変化を与えるので、記事をご覧頂いているみなさんで、今よりスウィングをよくしたいと考えている方は、松山選手のようにアドレスのポジションから見直していくといいでしょう。

画像: 2022年の松山英樹のアドレス。左ひざのほうが深く曲がっており頭の位置と軸がセンター寄りになった

2022年の松山英樹のアドレス。左ひざのほうが深く曲がっており頭の位置と軸がセンター寄りになった

次にこのアドレスの変化がスウィングにどんな影響を与えるか? ですが、それはインパクトでの「CHEST SIDE BEND(胸の側屈)」で違いが出ています。

以前の松山選手は、胸がインパクトで37度右に側屈が入っているのに対して、現在は31度右に側屈と以前より右に傾く度合いが少なくなり、約6度の差が出ています。これは先述のアドレスのポジション取りと関連していて、以前の松山選手は身体の軸を右足寄りに傾けたアドレスを取っていましたので、インパクトでも胸の右への側屈は入りやすく、こうすることでクラブの入射角はアッパーブローに打ちやすくなります。

それに対して現在の松山選手は、アドレスで身体の軸を昔よりセンターに近いポジションで構えるように変わったので、インパクトでの右への側屈は少なくなり、クラブの入射角も以前よりレベルブローに近い入り方に変わってきたと言えます。

それではアマチュアのみなさんにはどちらのアドレスを参考にすればいいのか? ですが、これはドライバーショットでの目的によって変わります。

例えば今より弾道を高くしてキャリーを稼いでより飛距離を求める人は、以前の松山選手のように軸を少し右に傾けてやや右足に圧力をかけるような構え方が良いでしょう。多くのレッスン記事でもドライバーショットでは、こちらのアドレスを推奨することが多い傾向にありますね。

それに対して球が高く上がりすぎてランが稼げない方や、ドライバーショットもアイアンのように正確性を高めたい方には、現在の松山選手のようにセンター軸で構えることをオススメします。

画像: 2015年のインパクト(左)と2022年のインパクト(右)を比較。右に傾く度合いが少なくなりレベルブローに近くなった

2015年のインパクト(左)と2022年のインパクト(右)を比較。右に傾く度合いが少なくなりレベルブローに近くなった

注意して頂きたいのは、アドレスのポジション取りで決めたスウィングの意図を変えないということです。

右足寄りに軸を傾けて構えた人がインパクトにかけて左に身体が突っ込むと、アウトサイドイン軌道になりやすく、引っかけやスライス、テンプラ等のミスが出やすくなりますし、逆にセンター軸で構えた人がインパクトにかけて身体が右に傾くと、クラブが寝てプレーンより下から入るので右プッシュやチーピン、ダフリのミスになりやすくなってしまいますので、アドレスからウィングまで1度決めたスウィング軸を変えないように心がけましょう。

最後にもう1点、松山選手のアドレスの変化と関連があることがあります。それは「クラブ選び」です。若手の頃の松山選手は、2007年モデルの「スリクソンZR30」ドライバーを長く愛用していました。このドライバーは体積も425ccとやや小ぶりで、重心深度も浅いタイプでした。

逆に現在はスリクソンの「ZX」シリーズを使用しており、体積は460ccと大きくなった分、以前よりドライバーの重心深度も深く変わってきました。

重心深度が浅いとヘッドが上を向かないため、インパクトロフトはあまり増えないので低めのスピンが少ない球になりやすく、逆に重心深度が深いとヘッドが上を向きやすく、インパクトロフトが増えるため、高めで適度にスピンが入る球になりやすくなります。そう、ドライバーのヘッド特性とスウィングでプラスマイナスするように、重心が浅いドライバーの時は打ち出し角を上げるためにアドレス軸は右足寄りに、重心が深いドライバーの時は球が上がり過ぎないようにアドレス軸はセンターに置いて、スウィングとクラブを上手にマッチングさせているのです。

松山選手のアドレスの変化が、スウィングの傾向やクラブ選びにも関連していることを考えると、改めてアドレスの重要性を感じさせられます。みなさんもアドレスのポジション取りを再確認して、ぜひ練習してみて下さい。

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