体育授業の選択科目にゴルフを取り入れている大学は全国で500以上あるのをご存知だろうか。ゴルフ授業の特別講師を務めたプロゴルファー・中村修のレポートをお届け。

武蔵野美術大学・身体運動文化の北徹朗教授が、全国の大学のゴルフ授業をまとめる「大学ゴルフ授業研究会」を起こしたのは今から5年ほど前。取材を通じて北先生と知り合い、会の世話人として先生と共著で初心者向けセンターシャフトのアイアンの論文を発表したり、授業のお手伝いをしてきました。

今回は、前期と後期に一回ずつ武蔵野美術大学のゴルフ授業の特別講師を務めてきましたので、そのレポートをお届けします。前期は1日2クラス計48名、後期は40名の生徒を受け持ちましたが、授業で初めてゴルフに触れる生徒も多かったのですが、ゴルフ界にとってはとても大切なゴルファー予備軍です。全国の大学で年間数万人の生徒が授業でゴルフを選択しているので、業界としてももう少し注目してほしいところです。

画像: 全国500以上の大学で体育の選択科目にゴルフ授業を取り入れている

全国500以上の大学で体育の選択科目にゴルフ授業を取り入れている

クラブは寄付で集められた中古のものや、大学ゴルフ授業に賛同し提供してくれるメーカーのものを使用しています。年に2回ほどコースでのラウンド体験「Gちゃれ」も開催していて、ドライバーからパターまでを使って、ルールやマナーなどゴルフの作法を学ぶ機会も作られています。

「Gちゃれ」は練習場と練習グリーンの後ランチを食べ、その後4ホールのラウンド体験ができるというもので参加費2000円程度とコース側の協力なしでは開催できません。賛同して協力してくれるコースを全国的にも募集していますので、将来のゴルファーを育成する意味でもご協力お願いします!

武蔵野美術大学では、人工芝のサッカー場で打球用の人工芝を置いてプラスチック製のボールを打ちます。大学によっては鳥かごの練習場や打ちっ放しの練習施設を使用できる大学もありますが、大抵は屋外のグラウンドを使用することが多いようです。

授業の内容は、初心者向けのレッスンと同じようにゴルフという競技の説明、例えばターゲットスポーツでありながらターゲットを見ないで打球すること、レフリーがいない競技であることなどを講義した後に、PWを持ってアプローチの振り幅のスウィングから始めます。

画像: 武蔵野美術大学での授業の様子。体育の選択科目でゴルフは人気の授業となっている

武蔵野美術大学での授業の様子。体育の選択科目でゴルフは人気の授業となっている

打球練習を終え、ターゲットを決め打ち始めると、生徒たちは距離感と方向性が大切なことに気づき、上手くいかなければその原因を仮説を立て検証し、次のショットで実践するようになっていきます。

打球練習を終えると80ヤードほど先のサッカー場を囲むポールをピンに見立て、打数を数えながら到達するまでやってみます。飛距離を出すのが得意であったり方向性や距離感が得意だという自分の個性を感じたり、ミスした後のリカバリーの大切さなど、ゴルフを通じて学べることを伝えられるよう進めました。

後期の講義では、飛ばすスウィングとアプローチスウィングの違い、自分に合ったスウィングの見つけ方、ターゲットを決めてチーム戦で打数を競ってみたりと前期に引き続きゴルフを通じて学べること、ゴルフの楽しさを伝えることを念頭に授業を行いました。

生徒たちに若い世代がどうすればゴルフに親しめるか、アンケートを書いてもらったのでいくつか紹介します。「敷居が高く気軽にできない」、「フィールドまで車が必要」、「たしなむ人の年齢層が高い」という意見が多かったものの、「授業でやってみたら楽しかった」という生徒も多かったようです。

「近所にゴルフの打ちっぱなし?のコートみたいな施設を見つけたが、その年齢層の高さや初心者がいきなり行っても馴染めなさそうな雰囲気から行くのをとまどっているので、初心者歓迎とうたっていただけるだけで入り口に立ちやすいだろうとは思う」

「私は一度大学を出て社会人を経験しましたが、大学時代はゴルフをやっている友達はほぼおらず(私もやっていませんでした)、ところが社会人になると会社でコンペがあったりして6割くらいの友達は始めた印象です。最初はコンペのための義務感から始めましたが、やってみると楽しくてみんなハマっています! なかなかゴルフが浸透しない要因としてはやはり値段の高さや立地にあるかなと思いました。打ちっ放しも比較的安価な近所の場所は続々と閉館してしまって、ぱっと思いあたる近場の所は碑文谷あたりですが、やはりお高めでなかなか手が出ません。あとはこだわり始めたらこれも楽しいのですが、服装や靴もいまいちわからなかったり、そろえる必要があって手を出しにくく思ってしまうかもしれません。またラウンドも下手なのに行きづらいな、と躊躇してしまうので、初心者だけでポイントを教わりながらラウンドできるプランがあれば嬉しいです」

「いざ始めようと思っても最初の敷居の高いことがゴルフのプレー人口が増えない原因の結構な割合を占めていると思います。何から買えばいいかわからないし、すべて高級なイメージ。どこにいけばできるのかもわからない。そのイメージを払拭できればもっと始めやすくなるんじゃないかと思います。 だから、大学の授業で取り入れるのは結構いい取り組みだと思います。これまでやったことのない人が、興味本位で履修してゴルフを0円で始められるいい機会に成り得ます。 始められさえすれば、友達同士でアプローチで競ったり、いい当たりで打てたときの爽快感など、楽しいスポーツだと思います。始められさえすれば、そのスタートラインにいかに簡単に立たせてあげるかが重要だと、素人なりに考えてみました」

「これは現実的ではないかもですが、ゴルフのアニメ最終回直前までテレビやサブスクで放送して、最終回だけそこに出てくる場所に行ってゴルフ体験をしないと見れないとかはどうでしょう。かなり強引なやり方ですが、同時にワクワクするし、良くも悪くもゴルフと自分の関係を知ることができます。多くの人にやってもらうにはまずはきっかけが必要です。取りあえずやってもらうためには少し強引でもいいのかなと思います」

ゴルフコースに勤めるプロ仲間の話では、初心者4名でゴルフバッグを2つだけ持って来場するケースや、ティーアップせずにドライバーを打つプレーヤーにティーアップして打つことを勧めると「ティーアップってなんですか?」と返され、驚いたといいます。SNSや動画サイトだけを見てゴルフを始めてしまうと、特有のルールや作法を教えてもらうことなくコースデビューしてしまいます。こうなるとゴルフを楽しむ前に離脱してしまうことになりかねません。

コースや練習場は、いわゆる箱ものビジネス。ブームになっている間は集客には困りませんが、先行きを考えて初心者やゴルファー予備軍を受け入れるプランやPRが必要なのではないでしょうか。

川口浮間市浮間ゴルフ場では定期的に初心者向けの「若者ゴルファーお助け隊」を開催するなど、初心者向けのプランを提供しているコースも存在しています。例えばカジュアルな服装でもプレーができるショートコースや予約なしでもプレーできる河川敷のコースなどは、SNSを使って若い世代にリーチできるPRをすれば楽しんでもらえるのではないでしょうか。

レンタルクラブやカジュアルな服装でプレーできるショートコースや河川敷コースなら学生たちや興味はあるけどきっかけが見つからないゴルファー予備軍が気軽にゴルフを楽しめるようになるのではないでしょうか。

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