今週は御殿場に取材に来た、週刊ゴルフダイジェストのツアー担当・ケンジロウ。様々なドラマを生んだ18番ホールで初日に定点観測してみると……

こんにちはケンジロウです。

静岡県の御殿場市よりお届けしております。もうその地名だけでおわかりでしょう、そう、男子ツアーの「三井住友VISA太平洋マスターズ」の取材に来ております。

朝から南風が吹き荒れる難コンディションとなった初日。やはり思ったほどスコアは伸びず、リーダーズボードの1アンダーやイーブンパーといったスコアに多くの選手が名を連ねました。

「11番がアゲンストで距離が長くなり、6番の右ドッグも右からの風で難しかった。今日はコンディションが難しかったです」という試合後の石川遼のコメントが全体のロースコアを象徴していたと思います。なかなか一筋縄ではいかないこの「太平洋クラブ御殿場コース」ですが、実は4年前に大改造をしています。設計家のリース・ジョーンズ氏によって、ティーイングエリアを造り直したり、フェアウェイのラインを変更したり、バンカリングに関しても再構築しました。

画像: 太平洋C御殿場C18番(525ヤード・パー5)でトッププレーヤーを定点観測してみた!

太平洋C御殿場C18番(525ヤード・パー5)でトッププレーヤーを定点観測してみた!

その改造の象徴でもあるのがフィニッシングホールの18番ホールです。以前からドライバーの着弾地点である260~290ヤード地点のファアウェイ左サイドにバンカーがあったのですが、そのバンカーが改造によってグリーン方向に拡張し、かつフェアウェイに近づき、さらに砂面も深くなりました。ティーショットでよりバンカーにつかまりやすくなったばかりか、バンカー先のフェアウェイから右ラフにかけて傾斜がついたことで、バンカーを越えたとしても右のラフまで転がりやすくなっています。右サイドにいくと前方の木がスタイミーになり、グリーンを狙いにくくなるんです。

画像: ティーショットが右サイドに行くと、前方の木がスタイミーになり、グリーンを狙いにくくなる

ティーショットが右サイドに行くと、前方の木がスタイミーになり、グリーンを狙いにくくなる

つまり、フェアウェイバンカーのより左サイドからキャリーで超えない限り、2オンは難しい計算になります。かなり狭いところに「キャリー300ヤード」のボールを打たないといけないわけです。もちろんレイアップして、2オンを狙うという手もありますが、長いときはピンまで250ヤード近く残ってさらに池越えになりますからね。たとえ乗ったとしても球を止めるのは至難の業になります。まさに「リスク&リワード(報酬)」、やはりその状況下でドライバーを手にして攻め切れる選手だけが、2打目を絶好の位置から打て、“イーグル”という特別な恩恵を受けられるのではないかと思います。その「イーグルルート」を体現したのが、初日トップに立った中西直人です。

この日、18番ホールで選手の攻め方を定点観測していたのですが、中西直人の組のときも、フェアウェイバンカーのすぐ先の木の裏に隠れてボールが来るのを待っていました。遥かかなた、300ヤード向こうのティーイングエリアから放たれた中西のボールが、ちょうど木から5ヤードぐらい先に着弾し、勢いよく前に転がっていきました。そして斜面を駆け下り、フェアウェイセンターのイエローマーク(エッジまで150ヤード地点)の先まで転がりました。中西の打ったボールは木のすれすれに飛んできて着弾したので、木の裏にいた私は肝を冷やしました。

中西の2打目はグリーンの手前にショートしましたが、そこから見事なアプローチをみせてチップインイーグル、4000人以上入ったギャラリーを大いに沸かせていましたね(そのあとハーフターンで飲んでいたコーヒーをこぼして、ウェアの胸のあたりを汚すというオマケつきでした⦅笑⦆)。

以下、上機嫌でホールアウトした、中西のコメントです。

「(バンカー越えは)全然、僕の飛距離だと無理なんですが、“ドライブイズマネー”というか、ドライバーを飛ばして見せるコースセッティングになっているので、自分の限界を超えられるような振りをしたいなと思って挑戦しました。左のバンカーの左端、今はフェードにトライしているので、どちらかといったら(バンカーの左の)左の林からチャレンジしていくつもりで打ちました。正直木に当たってもいいかなと思っていました」。

まさにリスクを顧みずに攻めた結果、350ヤードドライブ(斜面を転がったにせよ)という報酬を手に入れたわけですね。ちなみにこの日は南風で、18番ホールはやや右からのフォロー。中西は「(2日目以降も)フォローの限りはドライバーで攻めます」と力強い言葉を残して会見場を後にしました。

もう一人、そのバンカーを上手く攻略したのが、プロ入りしたばかりの蝉川泰果。蝉川の打球をティーイングエリアの後ろから見ていたのですが、フェアウェイバンカーの左サイドのラインに飛び出ていって、見事、キャリーでバンカーを越えていきました。まさにリース・ジョーンズの用意した「イーグルルート」を通り、これもまた残り150ヤード地点のフェアウェイへ。「(ティーショットは)左のバンカーの左淵を狙いました。あそこに真っすぐめのボールを打っていく。2打目はピンまで残り150ヤードでした」(蝉川)。9番アイアンで打った球はピンに絡まず、グリーンにこそ乗ったもののイーグルパットはカップにけられ、惜しくもバーディに。「本当だったらピッチングで打てばよかったですけど、手前の池を警戒しすぎて大きい番手を持ちすぎましたね」と蝉川。それでも攻撃的なゴルフをする“蝉川らしさ”が出たホールでした。

この日、18番で2オンに成功したのは20人。その中には比嘉一貴や堀川未来夢といった、いわゆる”飛ばし屋じゃない“選手もいます。彼らがどうやって攻略したかというと、2人ともハナからバンカー越えは考えずにティーショットはフェアウェイにレイアップ。そして2打目を長い番手で乗せて、2パットのバーディ。豪快に350ヤード飛ばすのもいいですが、250ヤード近くの距離からグリーンをとらえてくる、その戦い方も“味”があっていいですよね。

画像: 各選手の"持ち飛距離”によって、様々な攻略の考え方が見られるのが18番ホールだ!

各選手の"持ち飛距離”によって、様々な攻略の考え方が見られるのが18番ホールだ!

実際、このホールはティーショットのレイアップも簡単じゃないですからね。左のバンカーに入れたくないけど、それを避けて右にいきすぎると2打目で木が邪魔になってグリーンを狙えません。レイアップするにしても落としどころは狭いということ。ティーショットで,とても考えさせられるホールです。

いやぁ、この18番ホール、ここに椅子を持ってきて、一日じっくり眺めるのも楽しめますよね。今週の「VISA太平洋」は観戦無料なので、週末の予定がまだ決まってない方はぜひ太平洋クラブ御殿場コースに足を運んでみてください。

ちなみに、18番ホール以外の定点観測おすすめは、アウトだと6番のグリーン右横で、5番ティーショットと7番ティーショットを見るパターンがひとつ。また4番ティーイングエリアの左サイドで、4番と8番のティーショットを眺めるパターンもいいと思います(日陰なのでちょっと寒いですが…)。インだと、13番グリーン右サイドで、14番ティーや15番グリーン辺りをうろちょろするのと、やはり18番ホールの2打目地点ですかね。

コース内、つねに真西方向に富士山があって、太陽の光を受けた富士はとても綺麗に見えます。少し色づいてきた木々と富士山を借景にしながらの観戦もまたオツですよ(ちなみに今年の富士山はまだ雪がほとんど積もっていません)。

ではみなさん、週末、御殿場でお待ちしております。

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