158センチの賞金王がもうすぐ誕生する。沖縄出身の比嘉一貴27歳。ダンロップフェニックストーナメントで世界ランク15位のトム・キムや同ランクトップ50に入っているチリのミト・ペレイラを寄せつけず逃げ切って今季4勝目を挙げた。賞金ランク2位の星野陸也が残り2試合連続優勝しなければ追いつけないほどの大差でタイトル争いを独走中だ。

180センチ超えのペレイラと並ぶとまるで大人と子供。だがゴルフは身長の勝負ではない。荒削りなプレーのペレイラに対して比嘉は超効率スウィングで対抗し飛距離では負けても精度は上。言葉にしなくても「なんでこんな小さな選手に自分が負けなきゃならないんだ?」というペレイラの心の苛立ちが聞こえてくるようなラウンドだった。

最終ホールも左右の林に捕まりバーディを奪えなかったペレイラに対して比嘉はきっちり2打目を得意な距離(105ヤード)に刻み3打目でピンそば2メートルに寄せてバーディ。お手本のようなマネジメントで通算21アンダーのトーナメントレコード(16年のブルックス・ケプカに並ぶ)をマークしペレイラに3打差をつけ優勝を飾った。

画像: 一番勝ちたかった試合で優勝した比嘉。賞金王をほぼ確定させる勝利だった(写真は2022年ダンロップフェニックストーナメント 撮影/有原裕晶)

一番勝ちたかった試合で優勝した比嘉。賞金王をほぼ確定させる勝利だった(写真は2022年ダンロップフェニックストーナメント 撮影/有原裕晶)

小学生の頃からフェニックスで勝つのが夢だった。ゴルフ少年なら誰もが憧れるタイガー・ウッズが04年&05年と連覇を飾った姿が忘れられない。その舞台でトロフィーを掲げる瞬間が本当に訪れるとは。タイガーのほかにもトム・ワトソン、セベ・バレステロス、アーニー・エルスらゴルフ史を彩ったレジェンドが歴代優勝者に名を連ねる大会に「自分も名前を並べられて光栄です」と比嘉は感無量の表情を見せた。

沖縄の本部高校時代、宮里3兄妹の父・優さんの指導を受けるようになった。当時よく取材に行かせていただいていたが「有望な子がいる」と優さんが目を細めて語ったのを覚えている。今シーズンがスタートする前も師匠が拠点にしている名護の大北ゴルフ練習場でチェックを受けた。

「ボールの位置がズレていたので修正したらあっという間に良くなりました」と優さん。その言葉通り国内開幕2戦目の関西オープンで早くも優勝。6月には国内メジャー、BMW 日本ゴルフツアー選手権、9月にShihan Donghaeで勝利を積み重ねた。

平均ストローク、平均パット、パーキープ率などのパフォーマンスチャートはドライビングディスタンスのみがやや欠けるものの真円に近いオールマイティぶり。初優勝した3年前(19年RIZAP KBCオーガスタ)から解説の佐藤信人プロが「僕のイチオシ」と比嘉の名前を挙げていた。

大北ゴルフ練習場の川崎友子社長がこんな話をしてくれた。「一貴はコロナが始まったとき大量のマスクを練習場に送ってくれました。あの子はいつもそう。そういう気遣いができる子です」。

比嘉が賞金王なら優さんにとって次男・優作が17年にタイトルを獲得して以来2人目の快挙。「私はただのやんばる(沖縄の北部)のオヤジですよ」と笑う優さんはじつはすごい人なのだ。

画像: ペレイラは後方にいるというのにこの体格差。比嘉の強さを印象づける試合となった(写真は2022年ダンロップフェニックストーナメント 撮影/有原裕晶)

ペレイラは後方にいるというのにこの体格差。比嘉の強さを印象づける試合となった(写真は2022年ダンロップフェニックストーナメント 撮影/有原裕晶)

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