「ゴルフ科学者」ことブライソン・デシャンボーの「教科書」であり、50年以上も前に米国で発表された書物でありながら、現在でも多くのPGAプレーヤー、また指導者に絶大な影響を与え続ける「ザ・ゴルフィングマシーン」。その解釈に向かい続け、現在はレッスンも行う大庭可南太に、上達のために知っておくべき「原則に沿った考え方」や練習法を教えてもらおう。

みなさんこんにちは。ザ・ゴルフィングマシーン研究者およびインストラクターの大庭可南太です。前回の記事ではイマドキ話題(?)の「二重振り子」についての基本的な説明をしました。

簡単に振り返りを行うと、ゴルフのスウィングは背骨を支点にした両肩と腕で作る三角形による「大きい振り子」と、手首を支点にしたクラブヘッドの「小さい振り子」の二つの振り子でできており、ダウンスウィングからインパクトにかけて、「小さい振り子」が「大きい振り子」を追い越していくことによってクラブヘッドの速度を最大化できるというものです。

要するにこのカタチ

この「二重振り子」が効率的に機能している状態を端的に表現するならば、要はこのカタチになっていることが重要だと言えます。

画像: 画像A プロや上級者のなかでも、飛距離に優れる選手のほとんどがこの「タメ」をしっかりとキープできた状態でダウンスウィングを行っている(写真は山下美夢有2022年のTOTOジャパンクラシック 写真/岡沢裕行)

画像A プロや上級者のなかでも、飛距離に優れる選手のほとんどがこの「タメ」をしっかりとキープできた状態でダウンスウィングを行っている(写真は山下美夢有2022年のTOTOジャパンクラシック 写真/岡沢裕行)

はい、みんなが憧れるいわゆる「タメ」のあるダウンスウィングです。前回の記事で紹介したように、このように「大きい振り子」が先行し、ダウンスウィングの半径が小さくなることで、初期のハンドスピードを獲得できると同時に、インパクトに向けて「小さい振り子」が追い越す準備になっています。

問題はどのようにしてこの状態を達成するかですが、そのための前段階、つまりバックスウィングからトップ、さらに切り返しにかけては、プロのスウィングによっても結構手法が異なっていると考えられます。

具体的には、「大きい振り子」のエネルギーを蓄積するための捻転と、「小さい振り子」のエネルギーを蓄積するための左手首のコック、右手首の背屈(ヒンジ)のタイミング、またトップに向けて右ひじを曲げる量などが、選手によってまちまちなので困ってしまうわけです。

そこで最近しばしば目にするワードとして、「コンパクト」なトップ、あるいは「ショートトップ」といったものがあります。ジョン・ラーム選手などは明らかにコック・ヒンジを遅らせて、両手の位置も低い「コンパクト」なトップに見えますし、渋野日向子選手の最近のスウィングや、アマチュアで話題の馬場咲希選手などもそんなスウィングに見えます。

さらにそうした選手が「飛んでいる」印象もあってか、レッスンの最中にも「もう少しコンパクトなトップのほうが良いんでしょうか?」といった質問を受けることがありますので、それについて思うところを紹介したいと思います。

「コンパクト」というけれど

まず一般論として、プロのスウィングと比較してアマチュアのスウィングは、

(1)上体の捻転量、つまり「大きい振り子」のエネルギー蓄積量が少ない。
(2)コックのタイミングが早く、またアンコックのタイミングも早い。
(3)トップに向けて右ひじが曲がる量が大きい

以上のことが挙げられます。これに対してプロの場合、どれだけ「コンパクト」に見えているとしても、しっかりと上体の捻転は行っていることがわかります。具体的にはトップに向けて背中がターゲットを向き、肩のラインは90度以上捻転されます。

画像: 画像B プロの場合「コンパクト」なトップの選手も、左肩が首の位置よりも右サイドに移行するほど捻転を行っている。逆にアマチュアの場合はコックと、右ひじを曲げてバックスウィングする傾向が強い(写真左は渋野日向子、2022年シェブロン選手権 Blue Sky Photos)

画像B プロの場合「コンパクト」なトップの選手も、左肩が首の位置よりも右サイドに移行するほど捻転を行っている。逆にアマチュアの場合はコックと、右ひじを曲げてバックスウィングする傾向が強い(写真左は渋野日向子、2022年シェブロン選手権 Blue Sky Photos)

アマチュアの方の多くは、オーバースウィング気味であるにも関わらず、左肩の入りは浅い状態になりやすいのですが、これはコックと右ひじを曲げることだけでバックスウィングしているからだと考えられます。さらにこうして蓄積されたエネルギーは、アンコックと右ひじを伸ばすことでダウンスウィングに向かうことになるので、必然的にアーリーリリースやキャスティングと言われる動作になりやすくなります。

なぜこうなりやすいかと言うと、早めにひじを曲げて「二重振り子」の半径を小さくした方が、少ないチカラでクラブを動かしやすい、つまり上げやすくなるからだと思われます。本来はダウンスウィングの速度を上げるために、トップからダウンに向けて半径を大きくする方が効率的なのですが、その逆の現象が起きていることになります。

こうした方が「ちょっとオーバースウィング気味で安定しないから、もっとコンパクトなトップにしてみようかな」などと考えると、絶望的に飛距離が落ちてしまうなどの問題が起きます。

「コンパクト」なスウィングの本質

いわゆる「コンパクト」に見える選手というのは、「バックスウィング中に右ひじが伸びている時間が長い」とそのように見えるというのが本質だと思います。この右ひじを伸ばしておくことで、左肩の入りを強くして捻転量を稼いでいるわけです。これはザ・ゴルフィングマシーンでは「エクステンサーアクション」と言われており、以前に本コラムで紹介した技術です。

またこうした選手はトップまでではなく、ダウンスウィング中にコック量が最大になる傾向があります。これによって「小さい振り子」の追い越しを瞬間的に発生させることでヘッドスピードを稼ぐ意図もあるでしょう。

画像: 画像C「トップが低い」というよりも、右ひじが伸びている状態を長くキープしているためにそのように見える。またコックがトップよりもダウンスウィング中に最大化される印象を受ける。(写真はジョン・ラーム 写真/KJR)

画像C「トップが低い」というよりも、右ひじが伸びている状態を長くキープしているためにそのように見える。またコックがトップよりもダウンスウィング中に最大化される印象を受ける。(写真はジョン・ラーム 写真/KJR)

「左肩が入る」練習

ではアマチュアが何を意識して練習すべきなのですが、前回の記事では「小さい振り子」を円滑に動かすための練習法を紹介しましたが、今回は「大きい振り子」の練習になりますが、これは単純です。

(1)左手首のコックや右手首の背屈(ヒンジ)をせず
(2)右ひじを一切曲げないで
(3)両腕と両肩でできる三角形を動かす

これでスウィングできる幅を大きくしていくことが良い練習になると思います。少しパッティングに近い感覚になるかと思います。やってみるときゅうくつで飛ばないわりにけっこうしんどいと感じるのではないでしょうか。まさに「捻転」を行う以外にクラブが動く要素がないため、体幹の様々な部位が悲鳴を上げると思います。しかし、しっかりと左肩が入ったバックスウィングを達成するためには非常に効果的な練習だと思います。是非お試しください。

画像: 【超貴重】MAX420ヤード!和田正義プロのドラコンスイングをじっくり観察!飛ばしのポイントは?【飛ばし】【ドライバー】#shorts www.youtube.com

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