ゲンちゃんこと時松隆光プロが、今年4月にツアー初優勝を挙げた桂川有人プロのプロゴルファーへの道のりを深掘り。ゴルフを始めたきっかけやゴルフ留学についてなど、詳しく聞いた。
画像: プロレスラー内藤哲也のポーズを取る桂川プロ。大のプロレス好きの桂川はフィリピンにゴルフ留学したものの、プロゴルファーを目指すかどうか、迷いがあったという(撮影/姉崎正)

プロレスラー内藤哲也のポーズを取る桂川プロ。大のプロレス好きの桂川はフィリピンにゴルフ留学したものの、プロゴルファーを目指すかどうか、迷いがあったという(撮影/姉崎正)

時松 カッちゃんは、いつゴルフを始めたの?

桂川 物心ついたときからうちは母子家庭で、おじいちゃんとおばあちゃんが僕を預かってくれていることが多かったんです。そのおじいちゃんがゴルフ好きのクラチャンで、3歳から練習場についていっていたらしいんです。それは僕にゴルフを教えるというより、単なる子守で(笑)。

時松 面白いゴルフとの出合いだね。

桂川 そのおじいちゃんがレフティで、おじいちゃんと向かい合わせで球を打つようになって、鏡のようにおじいちゃんのスウィングを真似していました。

時松 おじいちゃんがいいお手本だったんだ。だけど中学卒業後にフィリピンのマニラ近郊へゴルフ留学したんだよね。

桂川 地元愛知県内の高校へ進学が決まっていたんです。練習しているときに声をかけてくださった方がいて、日本とフィリピンに工場を持たれていると。その方がフィリピンのメンバーコースへ一度ご招待くださった。そうしたらもう向こうの環境が素晴らしくて。そのとき現地に移住されていた日本人の方が、もし来るなら面倒みるとおっしゃってくださったので、留学を決めました。

時松 それでフィリピンへ。勇気ある選択だよね。

桂川 フィリピンでは、自由にゴルフができて、自分のやりたいように練習させてもらえる環境でした。コースで誘ってくださる人がいれば、その人とラウンドしたり、ずっとアプローチやパターの練習をしたり。それにフィリピンの国内プロ選手とも一緒にプレーしたり。朝から日暮れまで球を打てたので、腕は磨けましたね。

時松 朝から日暮れまで、毎日。それでも飽きないぐらいゴルフが好きだったんだね。

桂川 中学生までは、母に育てられて裕福な家庭ではなかったので、毎週土日にラウンドするとか、毎日練習場で球を打つとか、そんなことはさせてもらえなかったんです。おじいちゃんの練習についていく程度で。試合も、全国大会に出場するとなると、平日に母が仕事を休まなければならないから、ほとんど出たことがなかった。それが、フィリピンでは好きなだけゴルフができて、なんて幸せなんだろうって(笑)。

時松 カッちゃんのゴルフに対する純粋さが伝わってくるね。プロを目指していた、というわけではなかったんだ?

桂川 はい。プロを目指すと言えるような家庭の状況ではなかったですし。でも、テレビで石川遼さんを見ていると、カッコイイなあと憧れて、ちょっとだけですけど、夢というか、初めて将来のことを思い描いたんですよね。

時松 そこでフィリピン留学の話をもらって、飛びついたんだね。

桂川 いつかは遼さんに追いつきたいとか、やれるんじゃないかなと勝手に思っちゃって(笑)。正直言うと、将来が不安だったんです。勉強も好きじゃないし、サラリーマンができる自信もなくて。大学生のときに考えることかもしれないですけど、中学生で自分の限界を感じちゃった(笑)。好きなことといったら、体を動かすスポーツくらいだったので、なら、ゴルフを本気でやろうかって。

時松 将来が不安だからプロゴルファーを目指すって!(笑)

桂川 サラリーマンにはなれる自信ないけど、ゴルフを仕事にできたら最高だなって。フィリピンで夢が少しずつ目標に変わっていきました。

時松 だけど、中学卒業と同時にフィリピンへ出してくれた、お母さんや、おじいちゃん、寂しがったんじゃない?

桂川 お母さんは「行って来い!」って感じでしたけど、おじいちゃんは心配性で、不安だったみたいです。昔の人なので、高校へ行かずにフィリピンへ、という特殊な道がなかなか理解できなかったと思います。

画像: クラチャンでレフティの祖父のスウィングを鏡のように見て真似て、スウィングのお手本にしたという桂川(撮影/有原裕晶)

クラチャンでレフティの祖父のスウィングを鏡のように見て真似て、スウィングのお手本にしたという桂川(撮影/有原裕晶)

時松 プロ初勝利のインタビューで、いろんな人への感謝を口にしていたけど、こうして話を聞くと、理解できるね。

桂川 お世話になったたくさんの周りの人のためにもいい結果を出したいという感謝が、心のどこかにはいつもあるから、それが力になっているんだと思っています。

時松 小さな夢が目標になって、フィリピンで頑張って腕を磨いて、実際にプロになることだけでもすごいことかもしれないよね。さらにこれだけツアーで活躍できているその背景には、周囲への感謝があったんだね。

桂川 ただ、フツーの仕事は、やっぱり僕にはできなかったかも、と今でも思います(笑)。

※週刊ゴルフダイジェスト2022年12月20日号「時松プロ ご指名プロと技トーク わかったなんて言えません」より

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