欧州ツアー開幕戦で2位に食い込む活躍を見せた久常涼。ツアー事情に詳しい佐藤信人プロが、久常涼のゴルフの魅力を語る。

プロ転向して、すぐに素晴らしい成績を残す若手選手が増えています。そのなかで特に目を見張るスピード感で走り抜けているのが久常涼選手ではないでしょうか。

先の日本オープンで予選落ちした久常くん。金曜日の午後のクラブハウスで、荷物をまめている彼と出くわしました。すでに海外挑戦することを知っていたので「ヨーロッパはいつ行くの?」と声をかけると「これが日本で最後の試合になるかもしれないんです」という返事。2週間後の11月第1週には、アジアンツアーのモロッコの試合に出場、さらに翌週は6日間にわたる欧州ツアーの最終QTが控えていると。「上手くいけばすぐにオーストラリアの試合があるんで、VISA、フェニックス、カシオとスキップしちゃうかもしれません」。予選落ちしてパッキングしている選手の表情は暗いか、機嫌が悪いのが普通ですが彼の場合、表情だけでなく明るい未来を描いている。しかも、それがプロ2シーズン目の20歳、2年前までは高校生だった選手なのですから驚かされました

その言葉通り、欧州ツアー最終QTを7位タイで通過。それで出場権を得た欧州ツアー開幕戦のオーストラリアPGA選手権では、最終日に1イーグル、6バーディとまくって2位に食い込む活躍を見せてくれました。そのスピード感もさることながら、〝すべてが上手くいく”という発想と、有言実行で成し遂げてしまう痛快さがある。虚勢でも自分を鼓舞するものでもなく、ごく自然なのも好感がもてます。順風満帆、苦労知らずの若者に感じますが、失敗や挫折との向き合い方が、実は久常くんの強さであり魅力ではないかと感じます。日本のQTを失敗した昨年は、わずか数試合の推薦試合からチャンスをつかみました。そして昨年、ABEMAツアーで3勝を挙げ、同時にレギュラーツアーで初シードも獲得。そのシーズン後の表彰式では、「20歳までにツアー優勝するのが目標です」と宣言。10代最後の試合は今年のフジサンケイでしたが、ここで予選落ちすると、その後さっと切り替えてまた上位を連発しました。実は昨年、ABEMAツアーの賞金王がかかる場面で、彼はZOZOの出場権を得るためにレギュラーツアーへの参戦を決めました。今年のZOZOは最終パー5でボギーとし、トップ10入りを逃して涙したこともありましたが、そういう悔しい思いは必ず次の力に変えている。切り替えの早さと、足を止めることなくよい試合があれば世界のどこにでも出ていくというフットワークのよさも、若さだけでは説明できない久常くんの魅力です。

「若いうちの苦労は買ってでもしろ」という格言が、似合う選手です。ボクはSNSで久常くんのお父さんとつながっています。息子さんたちのゴルフの様子以外にも有名人の名言や格言をよく載せています。そのなかで最近「失敗が人を成長させる」という本田宗一郎氏の言葉が目に留まりました。

 欧州の新シーズンを終える1年後までに、彼がどんなスピードで成長するのか、今から楽しみです。

画像: 「コンパクトなトップから体を大きく使った躍動感あるダイナミックなスウィング。高いドローボールが持ち球ですが、低い球を打つのも上手です」by佐藤信人(撮影/姉﨑正)

「コンパクトなトップから体を大きく使った躍動感あるダイナミックなスウィング。高いドローボールが持ち球ですが、低い球を打つのも上手です」by佐藤信人(撮影/姉﨑正)

※週刊ゴルフダイジェスト2022年12月20日号「うの目 たかの目 さとうの目」より

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