「Qシリーズ」の“9日目”みたいな初日だった
スペインの「ラ・マンガクラブ」で開催中の欧州女子ツアー最終予選会「Qスクール」。パー71のノースコース、パー73のサウスコースを2日間ずつプレーしたのちに予選カットが入り、最終日に順位が確定、といった全5日間の競技日程となっており、現在は3日目が終了したところだ。
欧州女子ツアー最終予選会「Qスクール」は5日間日程で2つコースをプレーする
そんなQスクールに日本から参戦中の識西諭里が、3日目を終えて2アンダー20位タイにつけている。米女子ツアーの最終予選会「Qシリーズ」で8日間戦ってから連続での参戦となった今大会だが、初日は「好調、とは言えなかった」と井上コーチは言う。
「初日の入りがうまくいかなかったんですよね。端的に言えば『Qシリーズの“9日目”をプレーしてしまっていた』みたいな感じです。直近のQシリーズではパターが不調で、当然パター練習にも相当時間をかけました。しかし今大会のコースはグリーンコンディションがかなり悪くて、グリーンスピードもノースコースとサウスコースで1フィートぐらい違ったり、真っすぐなライでも蛇行して転がるみたいなことがあり得るグリーンで、非常に難しいんです」（井上コーチ、以下同）
欧州女子ツアー最終予選会「Qスクール」に参戦中の識西諭里
もちろんコースによってコンディションが違うのは当然で「とくにヨーロピアンツアーは色んな国で開催される都合上どうしてもグリーンコンディションが毎週大きく変化するもの」と井上コーチ。ただ「Qシリーズからのパターの不調によるフラストレーション、そしてボーダーに届かなきゃいけないという気持ちから、アグレッシブにプレーしてしまったんです」と井上コーチは続ける。
井上もコーチ兼帯同キャディとして現地で戦っている
「前半は我慢していたのですが、後半にバーディを獲りたい状況でオーバーに狙って3パットが出てしまい、フラストレーションでショットも曲がり、また3パットという悪い流れが続いてしまいました。イラつきがスコアに反映されてしまったというような悪い展開で。Qシリーズの『パットを入れられなかった』という気持ちをぶつけたようなプレー内容だったんです」
「ビッグスコアを狙わない」意識で結果が出てきた
そんな初日のプレーを終えた夜、井上コーチは識西に対して「目標設定のスコアを下げさせた」のだという。
「要は今回のグリーンで要求されていることの再確認ですね。30センチぐらいのバットはまあなんとか入るけれども90センチぐらいまでいくと誰でも外れるリスクがある。それくらい誰でもこのグリーンは難しいのだから、ある意味仕方ないと思って淡々とプレーすることが大事だと伝えました。もうビッグスコアを狙うためにリスクを強く抱えるのではなく1アンダーくらいでいい、それで順位は必ず上がると」
Qシリーズからの悪い流れをリセットし、オーバーに狙いたいシチュエーションでも勝負せずジャストで打ち続ける意識を持ってプレーした2日目は1アンダー、サウスコースに戦場を写した3日目では2アンダーとスコアを伸ばし、自身が目標としていた20位まで浮上することに成功した。
「識西は基本的にはリスクを取って攻めたいと思うタイプで、リスクの取り方も他の選手よりも大きいんです。それもあって今まで後半に崩れて行く展開が多かったです。もちろん大会でトップを狙うならリスクを取ることも大事ですが、今大会は優勝を狙うのではなく20位以内を目指す大会です。今の彼女の実力なら普通にプレーすれば20位以内の枠に入れるという僕の彼女に対する実力の評価があって、リスクを冒す必要性がなかったわけです」
まだ大会は2日間を残しているが、今の順位であれば予選通過は問題なし。「このままの調子で20位以内をキープしたいですね」と井上コーチは言う。
「最終的に20位以内に入ると、全米女子オープンやスコティッシュオープンといったメジャーは出られませんが、昨シーズンの実績では27試合に出場できることになります。彼女にとっては1つでも多くの試合で経験を得るために、Qスクールで20位以内に入るということが非常に重要なんです。頑張ってきますので、ぜひ応援よろしくお願いします！」
写真提供／井上透
