「ゴルフ科学者」ことブライソン・デシャンボーの「教科書」であり、50年以上も前に米国で発表された書物でありながら、現在でも多くのPGAプレーヤー、また指導者に絶大な影響を与え続ける「ザ・ゴルフィングマシーン」。その解釈に向かい続け、現在はレッスンも行う大庭可南太に、上達のために知っておくべき「原則に沿った考え方」や練習法を教えてもらおう。

みなさんこんにちは。ザ・ゴルフィングマシーン研究者およびインストラクターの大庭可南太です。さてサッカーワールドカップは決勝でついにアルゼンチンが優勝し、寝不足およびスマホの画面の見過ぎで眼精疲労(私です)からの、やっと平常運転を取り戻した年末という方も多いのではないかと思います。

今回は「寒くてラウンドが減る時期だから見直そう」企画の第二弾といたしまして、ポスチャー編です!

このポスチャー(構え)というのも、グリップ同様なかなか奥が深いのですが、とりあえず構えないことにはゴルフができませんので「まぁ、なんとなくこんな感じかな」で始めるしかないわけです。でもってよろけたり、伸び上がったり、いろいろ難しいと思いつつ、練習場ではなんとかなっても、いざラウンドとなると傾斜があったりして余計にいつものスウィングができなくなってしまうわけです。

前傾角度の維持…だと!?

そしてよく言われることの一つに「前傾角度の維持」とかいうものがあるのですが、そもそもプロや上級者はインパクトにかけて頭が沈み込む(前傾角度が増える)という現象が起きるのに対して、アマチュアは逆に伸び上がるという逆転現象が起こります。

それはもはや「維持しましょう」のレベルではなくて、運動の目的が根本から違っているのではないかと思うのですが、ともあれアマチュアだってプロと真逆の動作をしながらなんとかボールにクラブヘッドを当てているわけですよね。

さらには「フィニッシュをしっかり取りましょう」なんて言われて、スウィングの後半に意識を傾けるほど伸び上がりが強くなると思うのですが、その結果フェアウェイウッドでボールの頭を叩いてゴロトップなんてケースが頻発して「なんだかなぁ」と思ったりするわけです

現実にはフィニッシュでボールを打つわけではありませんので、この「終わりよければ全てよし」的なレッスンというのは、よほどスウィングの全体的なイメージが固まっている上級者を除いて機能しないのではと個人的には思っています。とはいえ、なんにせよ「構え」は大事ですし、これをしないことにはゴルフができないというのは冒頭で述べたとおりです。

「基本」はあるのか?

ザ・ゴルフィングマシーンでポスチャーについてどのように述べているのかは後述するとして、一般論としてこの「構え」についての「基本」はあるのかを調べてみると、たとえば前回もご登場いただいたレッドベターさんはこんな主張をされているわけです。

画像: 画像A 前傾時の、ひざのポジションを基準に垂線を引くと、それが右肩の位置と重なるのが「基本的」なアドレスポジションであるとしている(写真はDavid Leadbetter「The Golf Swing」より抜粋)

画像A 前傾時の、ひざのポジションを基準に垂線を引くと、それが右肩の位置と重なるのが「基本的」なアドレスポジションであるとしている(写真はDavid Leadbetter「The Golf Swing」より抜粋)

目標方向と両足を結んだ線が平行になるスタンスをとると、両ひざの位置もほぼスタンスラインに平行になると思いますが、そこの垂直線上に右肩が来るのが基本だとおっしゃっているわけです。

他にはベン・ホーガンさんなどは「シットダウン」のポジションと言って、「結構カカト寄りの重心でいいんだよ」という主張もあります。一般論として確かにアマチュアはつま先寄りの荷重配分の人が多いように思いますし、ややカカト寄りにしたほうが伸び上がりは少なくなると思います。バンカーショットとか、つま先下がりの傾斜地のイメージですね。

ではプロは?というと…

「じゃあプロの選手はどうなの」と思っていろいろな後方からの写真を見てみます(画像B)。

画像: 画像B もちろん「基本」はあるにせよ、ポスチャーの取り方は人それぞれであることがわかる(写真 左から稲見萌寧:写真/岡沢裕行 真ん中はコリン・モリカワ:写真/KJR 右はダスティン・ジョンソン:写真/Blue Sky Photos)

画像B もちろん「基本」はあるにせよ、ポスチャーの取り方は人それぞれであることがわかる(写真 左から稲見萌寧:写真/岡沢裕行 真ん中はコリン・モリカワ:写真/KJR 右はダスティン・ジョンソン:写真/Blue Sky Photos)

レッドベターさんの言う、ひざの位置と右肩の位置が重なる「基本的」なポスチャーに近いのは、強いて言えば稲見萌寧選手で、意外とコリン・モリカワ選手やダスティン・ジョンソン選手は前傾角度が深いことがわかります。

このあたり、持ち球(ドローかフェードか)も関係するのかと思って、いろいろな選手を見ていましたが、あまり関連性が見受けられませんでした。つまり「人それぞれ」というのが実態のようです。

ゴルフィングマシーンでは⁉

ではこのポスチャーについて、ザ・ゴルフィングマシーンではどのように述べているのでしょうか。たとえばひざの曲げる量、重心の配分、理想的な前傾角度といったことです。

実はそうした細かい記述はありません。やたらと細かく、難解な印象のあるザ・ゴルフィングマシーンですが、意外にもポスチャーに関しては「角度がどうこう」と言った細かい記述はないのです。

ポスチャーに関して見受けられる記述があるとすれば、メッセージとしては二つです。一つは「バランスを崩さないこと」、もう一つは「両手の通り道を確保できていること」です。逆に言えば、この二つの条件がクリアできているのであれば、あまり細かい話は問題ではないということになります。

自分にあったポスチャーを見つけよう

思えば個人の体格はそれぞれで、あるいは腰痛持ちとか、ヒザを痛めたとか、いろんな過去の経験にも対応をしなければなりませんので、プロといえども「それぞれ」になってしまうのは当然かもしれません。

その上でザ・ゴルフィングマシーンで言っている条件をクリアした、「自分に合った構え」を探すとすれば、要はこういうことをしてみればいいと思うのです。

画像: 画像C ある程度重いものを両手で振り子のように揺さぶってみると、両手と体幹が干渉せず、なおかつバランスを崩さない姿勢が体現できるはずだ

画像C ある程度重いものを両手で振り子のように揺さぶってみると、両手と体幹が干渉せず、なおかつバランスを崩さない姿勢が体現できるはずだ

画像Cで使用しているのは重さが約2kgある練習器具ですが、こういう重いものをゴルフのスウィングっぽくテークバック、フォローと振り回してみると、あたりまえですが自分の体幹に干渉しないように前傾せざるを得ませんし、それでよろけなければバランスも確保できているわけです。

ついでにこれだけ重量があると、あまりインに引きすぎると前後の振り子運動がかなり困難になることもわかります。つまり自然に無理のないトップの位置も把握できることになります。

これは専用の練習器具ですが、ご自宅でやる場合にはペットボトルなどでも良いでしょう。要はある程度重量のあるものをゴルフスウィングっぽく振り回したときに、一番やりやすい姿勢がどのような体勢なのかが体感できればよいのです。

ちなみにこれはトレーニングとしても有効で、2kg程度でもこの運動を繰り返すと太ももの内側に相当効くはずです。PGAの選手は5kgくらいのメディシンボールをこの要領で前方にぶん投げるトレーニングをよく見かけます。

冬の間はこうしたトレーニングを行って、下半身を鍛えるのと共にご自分に合ったポスチャーを探してみてはいかがでしょうか?

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