LPGA(米女子ツアー)のルーキーシーズンを終え「悔いの残る一年」と振り返った渋野日向子。2019年から渋野日向子を追いかけたきたみんなのゴルフダイジェスト編集部員でプロゴルファーの中村修が22シーズンの渋野日向子を振り返る。その【後編】をお届け。

21年のQシリーズを20位タイでツアーカードを取得した渋野選手の初戦は3月の「HSBC女子選手権」で47位、次の「ホンダLPGA」では8位と上々の滑り出し。

現地取材に恵まれた2試合の「JTBCクラシック」では最終日に崩れ、72位タイで終えたものの、次戦のメジャー初戦「シェブロン選手権」では2日目に首位に立ち、試合をリードする存在感を見せてくれました。メジャー2勝目なるかと現地の記者たちも浮足立ちましたが、3日目に77と崩れ後退するも、最終日に66と盛り返し4位タイでフィニッシュし大舞台での強さをアピールしました。

この2試合でキャディを務めた佐藤賢和キャディに振り返ってもらうと、スウィング改造したての昨年から比べ、大きく改善したポイントを話してくれました。

画像: メジャー初戦シェブロン選手権で4位タイで終えた渋野日向子をサポートした佐藤賢和キャディ(写真は2022年のシェブロン選手権 写真/BlueSkyPhotos)

メジャー初戦シェブロン選手権で4位タイで終えた渋野日向子をサポートした佐藤賢和キャディ(写真は2022年のシェブロン選手権 写真/BlueSkyPhotos)

「前年にキャディをやって予選落ちに終わっていたのでリベンジのつもりで乗り込みました。3日目に崩れて上位で追われる流れではない中で4位タイは立派でした。昨年に比べるとドライバーも飛んでいましたし、アイアンの打ち出しも高くなってキャリーも出て戦える状態になっていました」(佐藤賢和キャディ)

そして次戦の「ロッテ選手権」では最終日の最終ホールまで優勝争いを繰り広げ、2打差の2位で終えシーズン序盤でシード権を確保できる成績をおさめました。しかし、その後9試合で棄権を挟んで6試合で予選落ちの不調が続きます。8月のAIGオープンではプレーオフに1打及ばず3位で終えるというジェットコースターのような波のある中盤を送りました。終盤は4試合の予選落ちのあと国内で3試合に出場し日本のファンに元気な姿を見せてくれました。

「ロッテ選手権」から12試合キャディを務めた藤野圭祐キャディは「ずっと明るかった」と話します。「コースではゴルフに集中して練習まで終えますが、宿舎に戻るとマネージャーの料理にチームで笑って食事をするという毎日でした」と米ツアー遠征を振り返ります。

画像: 2位で終えたロッテ選手権から12試合でキャディを務めた藤野圭祐キャディ(写真は2022年のロッテ選手権 写真/増田高寛)

2位で終えたロッテ選手権から12試合でキャディを務めた藤野圭祐キャディ(写真は2022年のロッテ選手権 写真/増田高寛)

二人のキャディに共通したコメントは運動能力や体の強さといったポテンシャルの高さ、もう一つは大舞台でもそうでない試合でも同じように試合に入ることで大舞台でも結果を出せるメンタル。調子の波があってもいつも明るく周囲には接しているということでした。

最終日に下位に沈んだ「JTBCクラシック」でも遅くまで残ってファンにサインや写真撮影に笑顔で応じている姿を目にしていましたし、国内でもギャラリーに対する対応は、応援を力に変えていける渋野選手らしさの表れでしょう。

終盤の国内3試合を見た中では、三菱電機レディスで本人が会見でも話すように、好調なドライバーに対してアイアンがイマイチという印象でした。

「全然先に進んでる感じはないんですけど、ただ自分のスイングの中で、ちょっとまだ振り切れていないというか、アイアンになるとどうしてもドライバーのように振り切れてない、振り切れないという感触がある。自分の本当にスイングの中の問題なので、引っかけのミスは減ってきてはいたけれど、それでも当たらない右に飛ぶショットとかはあったので、それがまた気持ち悪いとか。前に進んでるというよりは、どっちかというと戻ってきてるような感じがあります」

スウィングを斜めに立てかけたフラフープでイメージすると、フラフープが地面と触れる位置にあるボールと、ボールを左に寄せたティーアップされたボールとでは入射角が変わります。入射角が変わると軌道も変わってきますので、地面にあるボールにはダウンブローでインサイドからボールが向かいますが、ティーアップされたボールは最下点を過ぎてからボールに当たるためアウトサイドインの軌道になります。そのため同じスウィング軌道で打つと、アイアンはドローになりドライバーはフェードになるのが通常です。

画像: 左は2019年の「スウィンギングスカートLPGA選手権」と右は2022年の「JTBCクラシック」を比べると2019年は前腕とシャフトが重なるが、2022年は前腕より下に位置するため、よりフラットな軌道を描いている

左は2019年の「スウィンギングスカートLPGA選手権」と右は2022年の「JTBCクラシック」を比べると2019年は前腕とシャフトが重なるが、2022年は前腕より下に位置するため、よりフラットな軌道を描いている

アイアンとドライバーを同じドローで打う場合は、ドライバーでは最下点を過ぎてもインサイドアウトの軌道にする必要があるのでスウィング面を全体的に右に向けることが必要になります。逆にドライバーでもアイアンでもフェードの場合は、アイアンを打つときのスウィング面を少し左に向けてわずかにアウトサイドインにすることで同じ球筋を打つことができます。弾道計測器トラックマンでいうところの「スウィングダイレクション」というスウィング全体の面のアジャストがドライバーの調子とアイアンの調子をマッチアップさせることにつながります。

ドライバーが好調だった渋野選手は、スウィング面が右を向きフラットなトップから浅い入射角でインサイドアウト軌道で打っていました。しかし同じスウィング面の向きでアイアンを打つとインサイドアウト軌道が強くなりインパクトゾーンが短くなり打点がシビアになります。

地面に立てかけたフラフープの角度がアップライトな円弧とフラットな円弧をイメージするとスウィング軌道と入射角の関係も理解しやすくなります。地面にあるボールやラフからのショットでは、ある程度の入射角の確保が重要になるのでフラット過ぎるスウィングプレーンを少しアップライトに修正し、ドライバーとアイアンをマッチアップさせてくるのではないかと考えています。

いずれにしろ、23シーズンが開幕するころには進化した渋野日向子を見せてくれることでしょう。

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